一哉がトランクから降りた場所は駐車場だった。
駐車場には、和子の車を含めて三台の車が停まっていた。
近くには大きな家が一軒ある。そう、ここは遼子の別宅。和子は、一哉を遼子の元に連れてきたのだ。
しかし、一哉は初めて来た場所に戸惑いを隠せない。
和子は、そんな一哉をお構い無しに鎖を引っ張ってスタスタと歩き始める。
一哉は、自分の格好を誰かに見られはしないかと心臓が激しく鳴りながら、四つん這いで和子の後を引きずられるように付いていった。
玄関に着くと、和子はインターホンを鳴らす。
「はい。和子様、お待ちしておりました。」
インターホンから落ち着いた声が聞こえる。
しばらくすると、ドアが開き女性が出てくる。
和子は、
「恵美さん、こんにちは。」
と微笑む。
恵美は、和子に深々とお辞儀をする。恵美は、黒光りするレザーのキャットスーツに身を包み、赤いピンヒールを履いている。化粧は濃く、赤いルージュが濡れ手で光っている。
一哉は、自分の痴態を見られまいと四つん這いの格好を縮み込ませる。
二人は、そんな一哉を無視するように
「恵美さん、遼子は?」
「リビングでお待ちです。」
「ありがとう。じゃぁ、お邪魔しますね。」
和子が首輪の鎖を持ったまま玄関に入ろうとすると
「和子様。ペットはお預かりします。」
和子は、微笑みながら
「あら、そう。ありがとう(笑)」
和子は、鎖を恵美に渡す。そのまま、和子は家に入っていく。
一哉は、不安でたまらない。
〔あぁ…ご・ご主人様ぁ!〕
自然と涙が溢れる。
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