後輩は性奴隷……10‐3
夕刻を回り、空が闇夜に染まり始めている。
俺はただ、やりきれない思いを持て余しながら、煙草の吸い殻を着実に増やしていた。
暮れなずむ外の様子は、きっぱりと決めたはずの気持ちの揺らぎを表しているようだ。
そんな自分に苛立ちを感じているとき、不意にドアチャイムが鳴った。
「はぁ~……」
ドアに向かいつつ、どうやって結衣を追い返そうかと考える。
居留守は、合鍵を持っている結衣に対して良策とは言えないのだ。
「すまん。実は……」
ドアを開けながらそこまで言って、準備していた台詞を呑み込んだ。
「実は……何ですか?」
と尋ねてきたのは、なんと真里だったのだ。
思えば、合鍵を持っている結衣ならインターホンを押さず、この間のようにごく普通に入ってくるはずだと遅ればせながら気付く。
「どうしたんですか?がっかりして……」
「がっかり?」
俺は、安心したんじゃなくて落ち込んだのか……。
無理にはにかんだ真里は、少し視線を流す。
「上がっても……?」
「え?あ、あぁ……どうぞ?」
黒に所々白いレースが飾られた薄い上着、下は赤地に緑の茶色のスカートという組み合わせの小さな少女は、表情を堅くして中へ入っていく。
彼女が自分からここへ来るのは初めての事で、俺は少し動揺した。
「メールしようと思ったんですけど、いろいろ考えてたら着いちゃってて……」
そう言いながら、玄関から中へ戻る俺を目で追う真里。
「ええって。暇やったし」
と返しつついつものスペースに座り、彼女にも促した。
真里は難しい顔を崩さずに、ぺたりと座り込む。
彼女はしばらく、目線を机の上の何もない部分に這わせていた。
「で?どうしたん?」
何処か追い込まれたように見える真里は、一瞬こちらに向けた瞳をまた机上に戻す。
そして、重い口を開いた。
「私、悠さんの言ってたことがわかった気がするんです」
ほんのちょっとですけど、と付け加える彼女を見て、煙草に伸ばした手を戻した。
この話を聞くには、煙草を吸いながらでは失礼だと思われたからだ。
「その……」
真里が何かを言おうとした時、閉めたはずの鍵が開く音がそれを遮ったのだった。
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