後輩は性奴隷……10‐6
「先輩は何もわかってないんですっ!」
空気がピンと張り詰めていたいたせいか、結衣の怒声は一際響いたように思われた。
「先輩は!先輩はっ……」
膝元に置かれた彼女の手が細かく震えている。
「私はっ……気付いてしまったんですよ?」
助けを求めているような結衣の声色が、俺の胸に突き刺さってくる。
でも、好きな人には幸せになって欲しい。
大きな罪を犯した俺には、それができない。
結衣、どうしてわかってくれないんだ……。
「……あのっ」
と言ってから俺たちの顔色を窺い、真里が口を挟んだ。
「その……思うんですけど、ゆい?ちゃんは、本気じゃないかな……」
まさかの擁護に回った真里は、人の気も知らずに根拠を述べ始めた。
「女の子って、好きな人ができると頑張るんですよね。振り向いてもらうために。服装とか化粧とか仕草とか、性格まで変えようとするんです」
「……で?結衣がそうやって?」
「その……服買ったって言ってたので。だって私が見ても、何て言うか……刺激的?でも、その努力を見て欲しいのは、たった一人なんですよね」
昼間会ったときの結衣の服装は、今とは違う。
彼女はわざわざ着替えてここに来たということは、ドアが開いたその瞬間からわかっていたことだ。
その手間は、俺に……俺にだけ見て欲しかったということなのか?
「二人の話を聞いてて、やっぱり私は悠さんとのエッチに魅力を感じてたんだなぁって気付かされました」
私は特に何もしてないし、と続けた真里の表情は、一人スッキリとしている。
反対に、そんな話を聞かされた俺はますます芯が揺れてしまいそうになっていた。
結衣は少し落ち着いたのか、先程よりは肩の力が抜けてるように窺える。
少しの沈黙の後、俺は結衣に疑問をぶつけた。
「俺は『わかってない』って、何がわかってないん?」
俺から視線を遠ざける結衣。
でも、俺は後には退けない。
「お前は何を知ってるんや?」
「今は……まだ、言えません」
「なんで?」
「もし知ったとして、先輩は私を『私』として見てくれますか?」
どうしてそんな、抱き締めたくなるような顔をするんだ。
「私を白川結衣として……向き合ってくれますか?」
内容がわからないだけにコメントしづらい。
しかし結衣は、俺の返答を待たずに
「だから私は、勝たないといけないんです」
と力強く呟いた。
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