後輩は性奴隷……4‐3
昼下がり、俺は学校近くの公園に出向いていた。
すっかり葉桜になった木々を眺め、微かな緊張を緩和させる。
朱音にメールし、しばらくやり取りした後、ここで落ち合うことになったのだ。
携帯を開くと、デジタルの時計が2時を示すところだった。
「悠……?」
その声に空気が張り詰めるのを感じた。
振り返ったそこには、外見は変わったものの、柔らかく温かい雰囲気を漂わせる彼女がいた。
「あ、あかね……」
彼女はぎこちない笑顔を浮かべながら歩み寄り、隣に座る。
ライトブラウンの、内側に巻いた長い髪がふわりと揺れて、シャンプーのいい香りが鼻孔をくすぐった。
「ひ……久し振りやね」
「あぁ……」
聞きたいことは一杯あったのに、いざ本人を前にすると頭が真っ白になってしまう。
「どうしてた?」
「いや、普通に……」
普通って?と自問しながら、苦笑を噛み殺す。
そよ風が吹き、木々がざわめいた。
「……子供はどうした?」
暖かい陽気に包まれているはずなのに、とてつもない寒気に襲われる。
しかし、俺は聞いておかなければならない。
「おろした」
意外と早い返答だったものの、先程よりもトーンが低い。
「そうか……辛い思いをさせたな」
俺の言葉に、朱音は何も返さなかった。
期待していたわけではないが、無言だとやはり辛い。
「俺にも供養させてもらえへんか?」
「……うん。今度、行こ?」
「あぁ。約束な」
幾分かは明るくなったものの、空気は重いままだ。
話題が話題なだけに仕方のないことだが。
俺は俺にできる形で、亡くなった我が子を見届けないといけない。
朱音のことを想い続けているとか、そんなことはもっと後に切り出すべきことだ。
「そう言えば、何処に通ってんの?」
無理に振る舞う朱音の心境を汲んで、
「ほら、一緒に行こうって言ってたとこ」
と答える。
「え?一緒やん」
「ウソ!?マジで!?」
「ホンマホンマっ。学部は?」
「経済学部……朱音は?」
「あぁ……私は社会福祉やわ」
成る程。
大学は一般道を挟んだ造りになっており、大きく2分されている。
学部で教室が割り振られるシステム上、もう一方の敷地に入らずに卒業することも珍しくない。
俺と朱音の学部では通う敷地が違ったため、今まで出会うことがなかったのだろう。
そんな運命に悪戯に、俺は面白いように翻弄されていたのだった。
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