杏奈を捕まえるのは簡単だった。彩香に命令して杏奈に睡眠薬入りのお茶を飲ませるだけで片付いた。
寝ている間に後ろ手に手錠を掛けガムテープで足と口を塞ぐ。
寝ぼけていた目にもすぐに異常事態だということは飲み込めたようで、敵意の篭った目で私達を睨む。
「あら、なんか怖い目ねぇ」
「なんでこんなことになってるのか説明して欲しいんじゃない」
「そっか、じゃあこんなことをした人に出てきてもらわないとね」
そう言って彩香を連れてくると、杏奈の目にまた新たな敵意がこもる。姉が裸で首輪を付けられ鎖を引かれながら四つん這いで出てくれば当然か。
ガムテープの奥からくぐもった声が漏れるけれど、まだ解くわけにはいかない。
「ほら、説明して上げなさいよ」
まり子が彩香の脇腹を蹴飛ばして言う。まり子は杏奈の存在を知ってから今日をずっと楽しみにしていたらしくテンションが高い。
「ご、ごめんなさい……」
四つん這いのままの姿勢で彩香が詫びる。
「あなたに睡眠薬を飲ませてこんなことになったのは私のせいなの……」
妹の困惑が浮かんだ目をじっと見つめながら彩香が言いつけた通りの言葉を口にしていく。晶の提案で、うまくできたら杏奈には手を出さないと約束してあるだけに真剣だ。
最初の話は、去年の夏休み前、クラスに馴染めなくて孤立していた彩香に好きな人ができたときのことだ。
ラグビーさん。読んでいただいてありがとうございます。続きになりますが、本格的に始まるのは次回からになります、すいません。
佐藤さん。調べてみましたところ、エスカレーターないしエレベーターは無試験進学の俗語でどっちが正確という性質のものではないようですが、どうやらエスカレーター式という言い回しのほうが多用されているようです。ご指摘ありがとうございました。
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