「で、俺を笑い者にして何処まで話したの?」
「廊下往復50回よ。(笑)」
「ホント、バカだよなぁ。(笑)」
「何でそんな事を思いつくんですか?」
「だって、間違ってないじゃん。」
「小学校で思い出したけど… 」
「まだ何かあるんですか?」
「そんなのはイッパイあるんだけどね。ウチの母親が修ちゃんを見てね、大笑いした事があったのよ。」
「何なんですか?」
「5年生の時。母親とスーパーへ買い物に行ったの。そしたら修ちゃんもお母さんと来ていてね、お母さんたちもPTAで顔を会わせてるから挨拶して一緒にお買い物してたのよ。それでね、12月で年末のおまけイベントみたいなので、レシート何千円分だったか忘れたけど、ミカン掴み放題ってやってたの。」
「何かそんなのやってたな。(笑)」
「でね。修ちゃんが「俺もやってみたい。」って、お母さんにおねだりしてね、やらせて貰ったのよ。」
「まぁ、子供ってそんなの好きですし、やってみたいですもんね。(笑)」
「そしたら、ジーっと見ていて、なかなかイベントやってるオジさんの所へ行かないの。何でだと思う?」
「何か観察してたんですか?」
「そなうのよ。箱のミカンが残り少なくなったら、オジさんが次の箱を開けて移し替えるの。」
「まぁ、普通はそうするよな。」
「修ちゃんはそのタイミングを待ってたのよ。」
「その方が取りやすいですもんね。」
「と、思うでしょ。」
「違うんですか?」
「違うのよ。この人ったらオジさんの所へ行って「オジさん、これ両手で掴めるだけ?」って聞くの。」
「えっ、掴み放題なんですよね?」
「そう、だからオジさんも「そうだよ。さぁ、坊や幾つ掴めるかな?」って言ってね… 」
「あれは、ちゃんと確認したんだけどなぁ。(笑)」
「この人ったら、ミカンじゃなくて箱を掴んで持って行こうとするの。(笑)」
「箱ごと?(笑)」
「だって、ちゃんと指さしてコレって確認したんだぜ。」
「オジさんが「コラコラ、坊主。何をするんだ!」ってね。で、「何て悪ガキだ!」って言われたら、お母さんがバツ悪そうに「スミマセン… 」って… ね。」
「後で母ちゃんに怒られたなぁ。(笑)」
「で、ウチの母親も周りのお客さんも大笑い。」
「でも、修二さんって子供の頃からそういう閃きって言うか発想って言うか、面白いこと考えつく人だったんですね。♡」
「ところで、係長はどんなお子さんだったんですか?」
「ん?俺はいたって普通の子供だったよ。(笑)」
「いいえ。だってさっきお好み焼き屋さんで… 」
「真由美ちゃん、兄ちゃんの話を聞いたら引くかもよ。(笑)」
「そんなにですか?」
「まぁ、俺は兄ちゃんとは大人になってからの付き合いだけど、加奈は色々知ってるもんな。(笑)」
「私よりも咲ちゃんよ。ねぇ、咲ちゃん。こっち来て。」 と、咲ちゃんを呼ぶ。
「お邪魔します。」
「真由美ちゃんが、ヒロさんの事を聞いてみたいんですって。」
「えぇ~、何がイイかしら?」
「咲さんって、係長をよくご存じなんですか?」
「私の兄がヒロさんの同級生で…(笑) 」
「お前ら、いらないこと言うなよ。(怒)」
「おぉ、怖ぇ。(笑)」
「例えば、例えば?♡」
「小学校の時の事はあまり聞いた事ないんだけど、中学校で花札とカブ札の賭場を開帳しちゃって… 」
「中学生が博打… 」
「で、負けが込んだ生徒が親の財布から抜き取ってバレたの。」
「まぁ、親の財布からってのは聞きますよね。」
「で、学校にバレて調べてみたら元締めが… 」
「係長。」
「そう。ヒロさんで、集めてた金額が80万くらいだったんですよね。(笑)」
「中学生が80万。」
「中学生が博打で80万… 」
「使った分入れたら100は越えてたんだろうなぁ。(笑)」
「まだあるわよ。新任教師が生徒に嘗められないようにって、見せしめのつもりで着任早々にヒロさんの服装が悪いだか態度が悪いだか知らないけど、いきなりビンタしたんですって。そしたらヒロさん、速攻グーで殴り返して鼻を折っちゃったの。」
「あれはだな、やられたらヤリ返せって言う親の教えだ。(笑)」
「教室の壁をブチ抜いたり… 」
「あれは、ぶつかっただけで、壁が薄っぺらかったの。(笑)」
「何か暴れん坊って感じですね。♡」
「兄ちゃんは学校以外だよな。(笑)」
「えっ、シンナー吸ってる人の袋に火を着けて髪の毛チリヂリとか。(笑)」
「そうそう。(笑)」
「ひゃ~(怖)」
「私が見た事あるので凄かったのは… 」
「咲… 」
「じゃ、こっちならイイでしょ。(笑)ヒロさんが高校生の時の事よ。」
「ビーバップみたいな感じだったんですか?(笑)」
「そうね、その頃はスクールウォーズね。」
「へぇ~ッ。」
「でね、特攻服を着た人が乗ってる街宣車ってあるでしょ。」
「はい。」
「あれがね、駅通りに留まって大音量でやってたのよ。」
「チョッと怖いですよね。」
「でもヒロさんったら、五月蠅いって文句を言いに行ったの。」
「凄っ!」
「私達は遠目で大丈夫かな?って見てたんだけど、中から3人だったかな特攻服の怖い顔した人が出て来て、ひと悶着。」
「大丈夫だったんですか?」
「それが、ヒロさんブチ切れちゃって。その人達をぶっ飛ばしたかと思ったら、街宣車によじ登ってスピーカーの線を引きちぎっちゃったのよ。(笑)」
「うわぁ、無茶苦茶。」
「そしたら、他の車の特攻服の人が集まって来るわ 野次馬は集まるわ、警察はやって来るわ、…」
「それは騒ぎになりますね。」
「で、ヒロさんが「お前ら、今度来やがってみろ。線で済むと思うなよ。スピーカーごと引っぺがすぞ!」って怒鳴ってね。下に降りたらそのままパトカーで… ね。♡」
「あんときゃ、停学2週間。(笑)」
「でも、本当にその辺りには街宣車って来なくなったのよ。」
「私は会社での係長しか知らないですけど、そんな顔があったなんて聞くとイメージ変わっちゃいます。(笑)」
「良い風に?悪い風に?」
「勿論、良い方です。♡」
「真由美ちゃんって面白い子ね。」と、咲ちゃんが言う。
「えっ、そうですか?」
「だって、普通24歳の女の子なら、30を過ぎた既婚者2人に付いてなんか来ないですもん(笑)」
「ですかね?」
「いや、俺だって真由美ちゃんが修二と飲みに来たって聞いたから誘ったんだけど、こんなので楽しい?」
「はい。とっても。♡」
「それならイイんだけど… 」
「だって、係長が言ってたみたいに修二さんって、先を見て物事を考えておられるじゃないですか。しかも、さっきのゴミ焼却施設の話なんかでも、あの短い時間であれだけ思いつくなんて凄いですし、もし実現すれば雇用も生まれる訳じゃないですか。」
加奈が「真由美ちゃん、修ちゃんはそれだけじゃ無いのよ。(笑)」と、言う。
「えっ、どういう事ですか?」
「うん。(笑)修二はな、ゲートボール場にハイキングコースって言ったろ。」
「はい。」
「お金が取れない部分に建物は… 」
「無い… あっ!」
「そう。いかにお金をかけずに人を集めて、お金を落とさせるかってとこまで見てるんだよ。」
「はぁ~、そこまで… でも、それを読み取れるお二人も凄いです。」
「そんな事は無いわよ。(笑)」
「でも、ママさんは修二さんの裏稼業ってのを実際にやっておられるでしょ。係長はこれから新事業に着手するし。裏の裏、先の先まで理解出来ないと… 」
咲ちゃんが「いいえ、大丈夫ですよ。さっき義援金の話をされてた時に、ボーナスで引かれるなら義援金だから仕方ないかって、ちゃんと人の心情まで見てたじゃありませんか。ね、ヒロさん。」
「そうだな。(笑)」
「えっ、まだ何かあるんですか?」
「そうだなぁ。さっき修二は公務員を例えにしてたって言ったろ。」
「はい。」
「でもな、ウチの会社の規模で1億円って言ってたけど、自動車メーカーや電機メーカー、その他にもある超大手の会社で同じ事が行われれば、どれだけになる?」
「数十倍、いや、それ以上… 」
「そう。時間かけずに直ぐにそれだけの義援金を用意出来るだろ。修二は言わないけど、そうなれば良いなぁって理想論もあるから、そこを拾い集めると何処まで考えてるんだろうって、コイツの面白さが益々解ってくるんだよ。(笑)」
「俺はそこまでは… (笑)」
「いいや、お前は見てる。(笑)」
真由美ちゃんが突然。「師匠!」っと、頭を下げてくる。
俺は「はぁ?」っとしか言いようがない。
「お願いします。師匠って呼ばせて下さい。」
「何を言ってんの?俺は落語家じゃ無いっての。(笑)」
「わっはっは~、修二に弟子が出来たか。」
「可愛いお弟子さんね。修ちゃん。(笑)」
「何を言ってんの?俺は弟子なんて取らないし、認めません。」
「いいじゃないですか、お勉強熱心ですし。(笑)」
「い・や・だ。」
真由美ちゃんが俺の腕を掴んで甘える。
「お願いしますよ、師匠~。ココでだけでも… ねっ。♡」って皆で笑ってた。
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