「ゴメンなさいね。ちょっとチェンジで。ご馳走様でした。」と、咲ちゃんが席を立つ。
今度は「ただいま~ 」と、加奈が戻って来た。
「ヒロさんごめんなさい。先生が修ちゃんをチョッと貸してだって。」
「えっ、俺はイイけど。」
「えぇ~、俺がイヤだ!(笑)」と、向こうのBOXから「修二君、ゴメン。少しだけだから頼むよ。」と、声が掛かる。
「もぉ~」って立ち上がると、兄ちゃんが「修二。真由美ちゃんにお前の昔話を聞かせてイイか?」と、聞く。
「ん?何の話?」
「ま、色々と面白い話。」
「笑いのネタにするなら、どうぞご自由に。(笑)」 と、藤田さんの所へ向かった。
「ママ、真由美ちゃんに修二の昔話をしてやってくれよ。(笑)」
「えぇ~っ、何がイイかしら?」
「ママさんが見てきたの全部聞いてみたいです。」
「そんなに修ちゃんに興味ある?(笑)」
「だって、不思議で面白くって、あんな発想ってどうして出来るんだろう?って… 」
「そうね。じゃぁ、一番最初はね、幼稚園で大騒ぎになった話ね。」
「はい。」
「かくれんぼをしてた時の話なんだけど、皆隠れるじゃない。」
「はい。」
「で、修ちゃんだけがどうしても見つからないのよ。」
「帰ったとか?」
「いいえ、決め事で園から出てはイケないってルールだったの。」
「で、居たのですか?」
「居たんだけどね。もう、先生も困り果てて、誘拐でもされたんじゃないか?って… 警察に連絡でもしようかとしてたら園児の一人が「あっ!修ちゃん居た。」って、指さすのよ… 何処だと思う?」
「天井裏とか?」
「惜しい!修ちゃん、屋根の上に居たのよ。」
「でも梯子とかで解りますよね。」
「それが、あの人ったら樋をよじ登って上がったらしくって、しかも上に上がったら、ぽかぽかしていて気持ちよくなって寝てたんだって。だから先生も修ちゃんが座ってたらすぐ気付いたんだろうけど、気付かなかったのよ。」
「で、おもいっきり叱られたんだよな。(笑)」
「そう、もうそんな危ない所へ登ってはイケません!って。」
「なんか、悪戯っ子って感じですね。(笑)」
「でね。翌週にまたかくれんぼがあって、また修ちゃんが居ないのよ。」
「またですか?」
「今度は何処だったと思う?」
「えっと、男の子だから、女子トイレ。」
「ブ~ッ、今度はね、先生の車の下に居たのよ。(笑)」
「上の次は下ですか?(笑)」
「そう。出てきたら背中が土でまっ茶っちゃ。また先生に怒られて、幼稚園の問題児扱い。(笑)」
「幼稚園でそんな感じだったんですか?」
「そうね。でも私もまだその時はヤンちゃな悪ガキがいるんだなぁ、ってくらいにしか思ってなかったの。(笑)」
「で、ママが修二を意識しだしたのは?(笑)」
「もう、ヒロさん。そんな言い方したら好きになったみたいじゃない。」
「えっ、好きになったんじゃないの?」
「違うんですか?」
「人としてはね。男としてじゃ無いわよ… (笑)」
「 えぇ~っとね。小学校3年生の時の話しなんだけどね… 修ちゃんがね、授業中に何か悪戯してて先生に怒られたの。」
「悪戯ですか… 」
「もう、どんな悪戯だったかは覚えてないんだけど。先生が怒っちゃって「廊下の雑巾がけ50往復!」って罰を与えたの。」
「ご、50往復ですか。」
「そう。まぁ、授業の間ずっと雑巾がけしとけって事よね。」
「ですよね。」
「でね。15分程したら「終わりました~ 」って、教室に戻って来るのよ。(笑)」
「えっ、15分ですか?」
「先生が「そんなに早く出来る訳がない。お前ホントにやったのか?」って、また怒ってね。でも、修ちゃんは「ホントにやりました。」って言うのよ。それで、「どうやってそんなに早く出来るんだ、やって見せろ!」って廊下まで見に行ったのよ。」
「それは見てみたいですもんね。」
「笑っちゃうわよ。どうしたと思う?」
「雑巾がけだから、足に雑巾付けて走ったとか?」
「似たようなものね。あのね、空いてた教室から箒を2本持って来てね。柄の方で押さえてモップのようにして走ってたの。(笑)」
「何か想像したら笑えますね。(笑)」
「1本だとズレちゃうからワザワザ2本ってところが笑えちゃうのよ。(笑)」
「でも、それなら15分ってのも納得ですよね。(笑)」
「で、その先生は益々怒っちゃって、「バカ者!雑巾がけってのは手でするモノだ。ちゃんと手で雑巾がけし直せ~っ!」って、また50往復命令したの。」
「そこからが修二なんだよなぁ。(笑)」
「そう。それがね、今度はさっきよりも早く5分程で教室に入って来るのよ。(笑)」
「えっ、だって手でかけ直せって言われたんですよね?」
「そうよ。で、先生がまた「お前50往復だぞ。本当にやったのか?」って、怒って見に行ったらね。どうしてたと思う?」
「えぇ~っと… いやぁ、解らないなぁ。どうしてたんです?」
「笑うわよ。修ちゃん廊下を縦じゃなく、横に往復してるの。(笑)」
「はぁ~、なる程ですね。(笑)それなら確かに早いですよね。」
「な。何か修二らしいだろ。(笑)」
「ですよね。♡(笑)」
「それからよ。私がこの人は面白い考え方するなぁって、興味を持ってくっついて回るようになったの。」
「で、続きがあるんだよな。(笑)」
「そう、その先生が「お前、ちゃんと50往復しろ。」って言ったら、修ちゃんが「もう100往復もしたんだぞ、この鬼~!」ってキレちゃったの。そしたら先生が、もう雑巾がけはイイからってバケツに水入れて来て、「これ持って廊下で立っとけ。」って言ったのよ。」
「何か昔の漫画みたいですね。(笑)」
「そしたら修ちゃんったらね、廊下の外側の窓を開けて、バケツを置いて、知れ~っとした顔で、取っ手を持ってるのよ。(笑)」
「何かその現場を見てみたかったなぁ。♡(笑)」
「ふぅ~っ、何で、あぁなんだろうねぇ… 」と、戻って来る。
「何だったんだ?」
「今度、山の麓にゴミの焼却施設が来るだろ。」
「あぁ。いくらクリーンだって言ってもアチコチで反対されて、結局はあそこの山に決まったってやつか。」
「ゴミとか火葬場って、よく反対運動されてますよね。」
「そうなんだよ。で、山に決まったんだけど、一緒に温水プールを作るんだって。」
「ほぉ、温熱利用ってやつか。」
「健康ブームってのもあるわよね。」
「それで?」
「それで、「ホイ?」っと来たもんだ。」
「何ですか、「ホイ?」って?」
「俺的に何か考えられるか?って事だよ。」
「えぇ~っ、今ですか?」
「今、ココでだよ。」
「で、何かもう考えたのか?」
「考えるの面倒だから、思いつきで喋って来た。(笑)」
「はぁ?(笑)」
「もうですか?」
「まぁ、あくまでも一つの案としてだからね。」
「で、藤田さんは?」
「そう考えるか、って笑ってたよ。(笑)」
「で、どんな案なんですか?」
「ん?どんなのって、ホント思いつきなだけだよ。」
「はい。」
「平日の昼間に誰も来ないプール作るんなら、一緒に風呂屋を作れって。」
「まぁ、同じお湯を使えばイイだけだわね。」
「でも、何でですか?」
「前に別府へ行ったことがあるんだけどさ… 」
「別府?」
「また、とんでもない所が出て来たぞ。(笑)」
「別府には市民温泉ってのがアチコチにあって、100円、200円で温泉が利用出来るんだよ。」
「へぇ~。」
「だからさ、そういう値段で入れる風呂屋を作れば暇してるジジババが時間潰しに来そうじゃん。」
「まぁ、プールよりは来るかもな。」
「さて、真由美ちゃんに問題です。」
「はい。」
「お風呂って何をする所ですか?」
「えっ、汗を流す所。」
「そう。だから、汗をかくまでいくか知らないけど、そこに年寄りの運動と言えばゲートボールだ。まぁ、近頃はグランドゴルフってのも出てきたけど、そういう所を隣接すれば… 」
「運動して、汗を流しに一っ風呂。」
「それに、山があるんだから、ハイキングコースとか整備してみな。」
「ウオーキングってやつね。」
「健康ブームに温熱利用… 」
「そう、それに運動して風呂にでも入れば… 」
「腹が減る。(笑)」
「もう、ついでだから御飯を食べられる場所も作って、健康ブームだかヘルシー料理だか何だか言って、その辺の畑で採れた野菜を利用して食わせれば、最近言われてる「地産地消」にもなるかもな。って感じで言っといた。(笑)」
「温熱利用に健康ブーム、それに地産地消か。」
「忘れてたけど、プールもあるわよ。(笑)」
「修二さん、さっき向こうへ行ってた時間でそれだけ考えたんですか?」
「それだけって、ホント思いつきで言っただけだよ。(笑)」
「ホント、お前の頭の中は何が入ってるんだ?」
「だから、音が鳴るって言ってるじゃん。カラカラ・・・から・・・空 ってね。(笑)」
暫くすると、女の子が「ママ、先生がお帰りですって。」とやって来た。
「あら、もうお帰り?」
「あぁ、ゴメンよ、(上を指さして)呼ばれた。… 」 と、藤田さん達が別の店に行くようだ。
「修二君。ありがとうな。別府の市民温泉ってのがイイねぇ。それに地産地消か… また勉強しとくよ。お先にな。(笑)」って、出て行った。
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