「師匠、ニュースになるとかヘリまで飛んで来るなんて凄いですね。」
「そりゃ、経済効果が40億とも50億とも言われてるからな。」
「50億ですか。」
「そう。たった一夜。1人のアーティストの名前だけで50億からの経済効果となると、ニュースにもなるよな。」
「そんなになりますか… 」
「だって、此処に客が7万数千でチケットだけで7億。グッズだ記念の本だってだけでも凄い数だし、そこへ旅費だ飲食だ土産だ。せっかく来たから夜遊びだとか、打ち上げだってなると相当なお金だな。」
「そうですね。」
「まぁ、経費もそれなりに掛かってるだろうけど。」
「ですよね。」
「スタッフに警備員に何だかんだで相当な人を使ってるだろうし、会場を準備するのに自費で2億出したらしいからな。」
「えっ!自費で?」
「まぁ、後で釣りが出るだけ入って来るんだろうけどな。(笑)」
「それでも、自費ですか。凄いな。」
「まぁ、東京とかの都会や交通の便が良い所で10万人なんてのはあるだろうけど、この九州の端っこに、たった一晩の為。1人の名前でこれだけの人数を集められるなんてのが出来るんだから凄いんだよな。」
「ホント凄いです。」
「センターステージもそうだったし、東京ドームもそうだったけど、最初にやるってのはリスクもあるし、色々と模索しなきゃならないから大変な事だと思うけど、それをやってしまうってのが格好いいんだよな。(笑) 」
「武道館は矢○永吉さんでしたよね。」
「あぁ、日本人ではな。残念ながら最初はビー○ルズで、前座にドリ○ターズが少し出たらしいから、ステージに立ったのならドリ○の方が早いんだよな。(笑)」
「ドリ○ですか。(笑)」
「そう。ドリ○も最初はそんなステージに立てる程の実力があるバンドだったんだぜ。」
「そうなんだ。」
「いや、実は知らないけど。(笑)」
「もう。(怒) でも、これで去年の横浜(台風の影響で大雨。)みたいになってたら、どうなってたんでしょうね?」
「それを考えると怖いよな。(笑)」
「去年みたいに順延なんて出来ないでしょうし… 」
「もうやけくそで「強行突破!とか言って強引にやってたかもな。(笑)」
「朝から降ってて心配してたけど、やんで良かった。」って話してたら、黒ちゃん達が通った。
「おぉ!黒ちゃん。」
「あっ!修ちゃん。此処何ブロック?」
「此処はHだよ。」
「悪ぃね。もうチョッと前だわ。(笑)」
「何さ、Aとかって言うなよ。」
「いや、D」
「おぉ、前の方じゃん。」
「じゃ、もうチョッと先だから行ってくるね。」
「いってらっしゃーい!」と見送った。
このLIVEは割高だけどチケット付きのツアーとかがあるので、ブロック分けもその辺りの考慮とかあるみたいだ。(座席指定では無いけど、色々と考えなきゃイケないんだな。)
いよいよ入場が始まったようで、少しずつ前に進んで行く。
岩が積んである所を通ると広い斜面に人・人・人… 下の方に大きなステージ。その向こうには海が広がっている。
ステージでは前座なのか地元の人達が何かやってるようだが、それよりも場所の確保だ。
ブロック分けで策があるので真由美がステージやスクリーンを見やすいように真ん中の通路脇を確保した。
「此処だと見えるだろ。」
「えぇ、通路で人が居ないし、トイレなんか行くのに出やすいし。」って、シートを敷いて開演まで時間を過す。
「師匠。この前、前夜祭ってあったじゃないですか。」
「あぁ、衛星で繋いでやったやつな。」
「思ったんですけど、今日のも同じように全国に衛星で繋げてやれば、此処だけじゃ無く、もっと入るんじゃないですかね?」
「そりゃ、この前やったから出来るんだろうけど、そんなのやったら此処にこれだけ集まらないだろ。」
「あっ、そうか。」
「それに、お金もなんだけど、休みを調整したり何だかんだと此処へわざわざ苦労してやって来たって事に値打ちがあるんだから、此処に来てない奴らにそう簡単に観せられたんじゃ、嫌だと思わない?」
「ですね。」
「その辺は金儲けしたいスタッフと、本人の思いで色々あったんじゃ無いかな?」
「そうですよね。私はバカだから、お金の事ばかり考えてました。」
「前に加奈が言ったろ。十分がって… 」
「ですね。そこで欲張ってせっかく集まってくれたファンに離れられてるようじゃ、意味が無いですもんね。」
「そりゃ、本当に来たくっても来れなかったやつもいっぱい居るだろうけど、此処に来た奴の中には仕事を辞めてでも来たって奴も居るんだから、そんな奴らの想いを踏みにじるような事は出来ないだろ。」
「仕事を辞めてまで… 」
「あぁ、会社が休ませてくれないんだけど、このLIVEは来ないと一生後悔するんで辞めたって奴が居るらしいよ。」
「それは、裏切れませんね。」
そして、遂にステージが始まった。
スクリーンに映し出されるバイクの映像。
「うわっ、あのバイクカッコイイ。♡」って真由美が言ってたら、本人がそのバイクでステージに登場。
そこからLIVEが始まった。流石に大きな会場だ、俺達は真ん中より少し後ろだから前には3万人以上の人が居る。
1万人の会場が3つ分(まぁ、建物とか無いので2つぐらいかな。)も前にステージがあるのだから遠い。
遠いけどスクリーンもあり、それを抜きにしても超ド級の迫力だ。
すると、途中で車が用意され俺達の近く(大体30mぐらいかな。)で円形のステージがせり上がる。
そこにやって来てギター1本でステージをやってくれた。
「師匠。めっちゃ見えます。」
「これは凄いな。近いしラッキーだったな。(笑)」(実際、凄いなと思うのは前のステージと距離があるのに、音のタイムラグを無くしてコーラスとレスポンスする。この技術だけでも色んな試行錯誤があったんだろうなと関心する。)
まぁ、そんなラッキーな事もあったし、途中にはゲストとして何組かアーティストが出てきたりとあったけど、1時間の休憩を2回挟んで2時間半超えのステージを3回。
最後は本人も客も拳を振り上げ「生きまくれ!」と吠え続け、干支も4回目という人が怒涛の勢いでヤリ切った。(後にテレビか雑誌かで見たが、このステージの音は海を越えて対岸の10㎞近く先まで届いていたと言う。)
暫くの放心状態の後、水でタオルを絞り顔や手足を拭く。(真由美はエラいもんで、シャツだけは着替えられるようにと、下着では無く見られても平気なように水着を着けて来ていた。)
やはり高いツアーで来てるのだろう、飛行機の時間とかがあるので退場も順番があるようで規制がかかる。
俺達が出るまでにはまだ時間があるなと思い、持って来たゴミ袋に周りのゴミを放り込む。(まぁ、自分の汚した所ぐらいは綺麗にして帰ろうかなぁって思ってただけなんだけど。)
すると周りの人が「まだ袋ってありますか?」と、自分達のゴミも持って帰らないとって思ったのか聞いてくる。
「ありますよ。」と渡すと、あっと言う間に無くなってしまった。(W杯でも話題になった、日本の応援団が用意してたブルーの袋だ。この時は分別なんて考えず纏めて放り込んでいたけど。)
バスの時間もあるし、発着場までの時間を考えるとギリギリだなと会場を出る。出口には凄いゴミの山が出来上がっていた。(笑)
思ってたより時間が掛かってしまい、バスに着くと
「待ってましたよ。もう5分して来なかったら出発する所でしたよ。」と、運転手さんが言う。
退場するのと道中が混雑するのは想定してたので予定の出発時刻から30分は遅れても待ってるつもりだったが、俺達が来ないので「もう10分。」 まだ来ないので、「もう5分。」と、45分遅れが限界だと思ってたところに現れたようだった。
まぁ、皆も状況が解ってるだけに仕方ないかと言う人や疲れ果てて眠ってる人ばかりだったけど
「皆さん、お待たせしました。」と一応の詫びを入れる。
やはり疲れてたのだろうな。バスが出発して直ぐに俺達も眠りについた。
バスが到着したがフェリーの時間まで暫くあるようで、他の客達はどうやって時間を潰すかと少し困惑してるようだった。
俺達は駅に向かい電車で宮崎の田舎町まで移動。
ホテルに入り、温泉へ向かった。(田舎のホテルなので多少の融通が利く。前々日に泊った時は、目的が解ってるので出発前の冷凍なんかに冷蔵庫を使わせてくれたし、今日も少々早いけどチェックインさせてくれる。しかも、温泉ついでに半日ぐらいの観光なら便利だと、格安のレンタカーを紹介してくれた。)
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