「師匠。この桜、凄いですね。」
「河津桜みたいに沢山並んでるのも凄いけど、こうやってドデカいのも迫力があって良いだろ。(笑)」
今日はツーリングで福島県の三春にやって来た。
早朝に出発して、まだ10時。今日の予定は磐梯山方面へは行かずに、いわきのハワイアンリゾートへ遊びに行き、水戸で1泊して観光と、牛久の大仏を見て帰ろうってコースだ。
(ホントはいわきで泊まりにしてゆっくりしたかったが、流石に急で取れなかった。)
「高速も慣れてなかったですけど、スピードは出さないとイケないけど、一般道より走りやすいですね。(笑)」
「そりゃ、信号は無いし対向車も無いし、歩行者や自転車も居ないしな。(笑)」
「師匠。」
「ん?」
「ハワイアンリゾート行かなくてイイんで、もうチョッとゆっくりしてたい。♡」と、真由美がもたれ掛かってくる。
「じゃ、そうするか。いわきで降りて、6号線で海沿い走って水戸まで行くか。」
「イイですか。(嬉)」
「あぁ。途中にデカいアンテナとかあるし、おさかなセンターなんかもあるから寄り道して行こう。(笑)」
(少し疲れたようで、桜も綺麗なのでゆっくりしたかったみたいだ。)
お昼。いわき勿来(【なこそ】って読めねぇ。)で降りて6号線を走り、暫くした所に食堂があったので入ってみた。
「師匠。我儘言って予定変更してもらいましたけど、大丈夫なんですか?」
「何が?」
「何処か思ってた所とかあったんじゃ無いですか?」
「無いよ。(笑)」
「へっ?」
「思ってたのはハワイアンリゾートだけ。後は直で水戸へ行こうって思ってただけだよ。(笑)」
「それならイイんですけど… 」
「そんなもん、どうにでもなるって。(笑)」
「そうですか。」
「もし、予定を考えてたとしても何かハプニングがあったら当然別の事を考えなきゃイケないんだし、道だって通行止めなんかあったら別ルートを探すんだから、決めた予定通りにならなくても、それはそれでこんな事もあるんだなって楽しめばイイだけだよ。(笑)」
「その楽しめるって余裕が師匠の凄いとこなんです。(笑)」
「でもな。同じハプニングでも阪神の震災の時は楽しめ無かったな。」
「あれは、別モノですよ。」
「いやぁ、あの時は従姉妹が結婚して神戸に住んでてな。まだ携帯もそんなに普及してなかったし、全然連絡取れなくて2日後にやっと無事だって連絡があってな。」
「2日後ですか。」
「物資が届かないって、そりゃそうだよな。道がガタガタで車が走れないし、通れる道は大渋滞なんだから。」
「そうですよね。」
「で、俺がバイクに乗ってるから乗せられるだけ荷物載せて届けに行ったんだ。」
「バイクは行けたんですか?」
「まぁ、何とかね。でも、ホント酷いありさまだったよ。高速は倒れてるしビルは傾いてる。寒い時期だったから焚火してると思ったら、通電火災ってやつで消防車が来ないしバケツリレーしようにも水が出ないんで見てるしか無い。」
「私は映像でしか見たこと無いけど、師匠は実際に見てきたんだ。」
「最初は食料ばっかり積んで行ったんだけど、女の人は生理とかってあるだろ。」
「そうですね。」
「だから、そんなのも欲しいとか、色々とその場に行かないと解らない事がいっぱいあったし、会社休んで大阪と神戸を一週間ず~っと往復して荷物を運んでたよ。」
「神戸から大阪に人は連れて行かなかったんですか?」
「帰りに荷物積むのに、人なんか乗せてたら邪魔じゃん。」
「あっ、そうか。」
「従姉妹も周りの人達の為に必死だったから、俺は注文された物を仕入れて運ぶばっかりだったな。」
「そんな経験があるんだ。」
「まぁ、その従姉妹も旦那の仕事で今は仙台に居るんだけどな。(笑)」
「仙台って、またエラく離れた所ですね。」って、話しをしていた。(その時は、まさか従姉妹が仙台で再び東日本の震災に被災するとは思いもしなかった。)
真由美がアンテナを見て驚く。
「師匠がアンテナって言うから東京タワーみたいなのかと思ってたら、コッチだったんですね。(笑)」
「な、デカいだろ。(笑)」(衛星と繋ぐパラボラアンテナってやつだ。)
「ホント、大きいですね。こんなのを、どうやってあそこに上げるんでしょうね?」
「いやいや、あれを丸ごとポンっと上げる訳じゃ無いんだからさ。(笑)」 なんて笑い、今度は おさかなセンターで休憩。
「師匠。」
「ん?」
「魚で思い出したんですけど… 」
「何を?」
「前に、鮒ずしの話しをした時に師匠は滋賀に行った事あるって言ってたじゃないですか。」
「あぁ、あるよ。」
「この前、友達が滋賀に行って来たんですけどね。琵琶湖博物館ってのがあるんですって。」
「あぁ、行きはしなかったけど、途中にあったな。」
「でね。水族館みたいな所があるらしいんですけど、そこに水槽のトンネルがあるんですって。」
「何処かの水族館にあったな。(笑)」
「で、その子もヨソの水族館にあるトンネルみたいだって喜んで通ったら、淡水魚ばっかりで海の魚みたいにカラフルなのが居なくてチョッとガッカリだったって笑ってました。(笑)」
「そうか、そうだよな。確かに淡水魚は金魚と錦鯉以外って、黒っぽいのばっかりだもんな。なる程ねぇ。(笑)」
「時計台とかみたいな有名な所じゃ無いけど、チョッと隠れたガッカリですね。(笑)」
「今度、琵琶湖に行く機会があったら話しのタネに行ってみようかな。(笑)」
って、茨城で何故か滋賀の話しをして水戸へ向かった。
ホテルにチェックインして風呂で汗を流し、夕食がてら少し呑もうかとフロントで近くの居酒屋を紹介して貰い出かける。
「真由美は水戸って言えば何が浮かぶ?」
「えっ、み・水戸黄門ですかね。」
「そうだよな。(笑)」
「あとは納豆ですかね。」
「そうなるよな。水戸って言えば黄門さまなんだけど、あんなに歩き回れる年寄りって居ないよな。(笑)」
「テレビですから。(笑)」
「しかも、そんなに偉い人なら籠を使ってるってな。(笑)」
「いえいえ、ちりめん問屋を装ってる意味がありませんって。(笑)」
「あっ、そうか。身分を隠してたんだったな。(笑)」
って、水戸のネタで笑いながら食事も済ませ、今日は部屋呑みしようって事で、買い出ししてから部屋に戻った。
俺はビール、真由美は酎ハイで乾杯。
「真由美。コレ食べてみな。」と、スナック菓子を渡す。
「何ですかコレ。納豆○ップル?何でチップスじゃ無いんですか?(笑)」って、開けて口にする。
「えっ!コレ美味しい。」
「で、コレを呑んでみな。」と、俺のビールを渡す。
「うわっ、めっちゃ合います。(笑) 美味しい。」
「だろ。前に加奈にビールに合う物を用意してやるって言ってたんだけど、なかなかイケるだろ。」
「はい。」
「じゃ、明日買って帰ろうっと。(笑)」
「私もこれ欲しいから買います。(笑)」って、笑いながら少し呑んで、今日は朝も早かったんで疲れたなって、眠りについた。
朝。昨夜、買おうって言ってたスナック菓子が荷物になるんで箱買いして俺の所に送って、後で分けることにした。
牛久の大仏が見えて「大きいっ!」って驚いていたが、 間近まで行くとホントにデカくて、2人で見上げて笑ってた。
「鎌倉や奈良の大仏は座ってるから、立ってるとやっぱりデカいな。(笑)」
「これは、座っても奈良や鎌倉より大きいんじゃ無いですか。(笑)」
今回のツーリングは桜、アンテナ、大仏と、【大きい】がテーマな旅になった感じだ。(笑)
高速で東京に入り、海側へ出てお台場の球体を見て通り、ベイブリッジの大黒埠頭で昼休憩。そして湘南海岸を走った。
「ここで江○洋介や織○裕二がデビューしたんだよな。(笑)」
「湘爆だ。(笑)」
「おっ!知ってるか?」
「映画は観たこと無いですけど、デビュー作だってのは聞いた事あります。」
「江○洋介が紫の頭でリーゼントしてたんだぜ。(笑)」
「地毛だったんですか?」
「だと思うよ。」
「何か似合わな~い。」
「今はオッサンだけど、若かったからそれなりだったさ。 でもな、原作に1番似てたのは適役だった横○銀蝿の翔。(笑)」
「横○銀蝿… (笑)」
「そう。ホントに漫画そっくりだったから笑っちまったもん。(笑)」
って、普通ならサザンとか出て来そうなもんだが、バイクに乗ってるもんだから、つい【湘爆】を思い出してしまった。(笑)
駅伝で有名な箱根で大涌谷を散策して「寿命が延びるぞ。(笑)」と黒い卵を食べて帰ることにした。
「師匠は旅とか好きですけど、それならトラックの運転手になろうとかって思わなかったんですか?」
「思った事はあるよ。高校の時に思ったんだけどな。親戚のオジサンに運ちゃんが居て。「良いなぁ、全国を旅出来て。」って言ったら、「何を言ってるんだ。アチコチ行ってるったって、工場か倉庫しか行かねぇし。大体よぉ、観光地にバスの駐車場はあっても、トラックの駐車場はねぇっちゅうの。それに毎回観光だ名物だ土産だって言ってたら赤字になるしよ、そもそも泊まる金が要らないようにって、トラックにはベッドが付いてるんだから、旅が出来るとかって甘い考えだけじゃ、勤まらないぞ。」って言われてな。」
「確かに、観光地にトラックで来られてもあんな大きなので、お客が1人って、困りますよね。」
「俺もそれを聞いて、確かに道中は運転席も高いし景色は良いかも知れないけど、仕事で工場と倉庫しか行けないんじゃ、俺がしたい旅とは違うなって思って運ちゃんになるのは諦めたんだ。(笑)」
「お金を使いに行くのと、稼ぎに行くのじゃ違い過ぎますよね。」
「そうなんだよ。よくよく考えたら、あの人達は旅をしてるんじゃ無くて、出稼ぎに行ってるんだ。」
「そうですよね。お仕事ですもんね。」
「まぁ、こうやって仕事じゃ無く旅をさせて貰えるってのは、ホント有り難いよ。(笑)」
「ホントそうですね。師匠。今日はありがとうございました。やっぱりツーリングって楽しいですね。(笑)」
「おう。じゃ、また行こうか。(笑)」
「お願いします。」
「今度は1回、日帰りでも何でもイイから真由美の考えたコースで行ってみようぜ。(笑)」
「えぇ~、私なんか全然観光とか見どころのある所とか知らないですし。道も良いコースなんて知らないですよ。(困)」
「だから、それを調べるのが楽しいんだし、実際にそこへ行ってみるのが面白いんだから、次は真由美が考えてみなよ。(笑)」
「面白くないコースになりそうなんだけどなぁ… 」
「大丈夫だって、雨降り以外は楽しいから。(笑)」
「解りました。じゃぁ、次に行く時は考えますね。」
って事で、ずっとバイクで走った疲れもあるし、明日からまた仕事だから今日は早く帰ってゆっくりしようと、別れて帰宅した。
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