4月。「BBQの準備をしなくて済むってのが、こんなに楽なんだ。(笑)」って事で嬉しくなっちまう。
去年手伝ってくれた子の実家の肉屋さんがオッケーしてくれたのと、一人辺り200円程の上乗せになるけど、今までが安過ぎた(俺の仕入れと捌きがあったからだっちゅうの)から会社も大丈夫って事で、世代交代した。
花見をしながら呑んでると
「今まで当たり前のように任せてたけど、大変だったんですね。」って、今年の準備を担当した女子社員が声をかけてくる。
「いや、その代わりに煙草屋したりして稼いでるからそれぐらいはご奉仕だったんだよな、修ちゃん。」
と、煙草を買ってくれてる同僚が言う。
「まぁ、肉もチョロッと貰ってたりしたしな。(笑)」
「でも私、これだけの量だなんて思ってなかったから、驚きました。」
「まぁ、今年からは肉が捌かれて来るから、野菜の準備だけになったし、楽になったって言えば楽になったんだろうな。」
「修ちゃん。そう言えば、兄ちゃんとこの話しは聞いたか?」
「えっ、知らないよ。何かあったの?」
「うん。今までは東京で間借りしてるような感じだったけど、来年を目処に新会社として設立するらしいよ。」
「じゃぁ、兄ちゃんは社長か?」
「さぁ、それは人事でどうなるか知らないけど、事実上は新会社のトップなんだろうな。(笑)」
「凄いなぁ。(笑)」
「って、他人事みたいに笑ってるけど、修ちゃんが言い始めた事なんだぜ。」
「まぁ、確かに言ったのは俺だけど、実際に立ち上げたのは兄ちゃんだからな。」って話してると真由美がやって来た。
「ヨっ!主任。(笑)」(真由美がこの春から昇進して主任になった。)
「主任じゃないですぅ。(困)」
「何でだよ、主任になったんだろ。おめでとう!」と、周りにいた皆と乾杯する。
「修二さん。知ってます?」
「何が?」
「真由美ちゃん。この1年主任したら、新会社に引っ張られるらしいですよ。」
「えっ!そうなの?」
「いえ、まだ何も決まってる訳じゃ無いんですけど。向こうから話しも来てるし、どうだろう?って… 」
「イイんじゃないの兄ちゃんの手伝いで。田舎者から都会の人にも昇進だ。(笑)」
なんて話しながら宴は二次会へ…今年は真由美と一緒に居酒屋へ流れて来た。
「東京の話しって何時あったの?」
「ついこの前で、私も驚いたんですけど、所長が出来れば来させられないかって言ってくれてるらしいんですよ。」
「兄ちゃんがか。」
「でも私。師匠に勉強させて貰ってるし、「F」も楽しいし、此処を離れるのが… 」
「それは、どう選ぼうが自由だろうけど、新しい世界を見るってのもアリだとは思うよ。(笑)」
「でも… 」って話したり、他の皆とワイワイ盛り上がる。
定番の流れで、二次会から「F」へ流れてきた。
「いらっしゃい。今日はお花見だったの?」
「あぁ、それもだし、由美の昇進祝いだな。(笑)」
「昇進?」って、加奈が驚く。
「あぁ、この春から主任になったんだよな。」
「そうなの!」
「えぇ、まぁ… 」
「だから、もう俺の上司になるんだぜ。(笑)」
「師匠の上司。上司の師匠。ってどっちが上よ?(笑)」
「まぁまぁ、祝いだから一緒に呑めよ。」って事で、乾杯。
「修ちゃんとこの会社で女の子が26歳で主任なんて珍しいわね。」
「そうだな。俺が見た中では早い方かな。(笑)」
「ヤるわね、由美ちゃん。(笑)」
「いえ、これは罠です。(笑)」
「罠って何よ。(笑)」
「加奈。実はな、来年になったら兄ちゃん所が新会社になって、そこへ由美を呼ぶつもりらしいんだ。」
「えっ!東京行っちゃうの?」
「いえ、まだ何も決まって無いんですけど、そんな話しもチラッとあるってだけなんです。」
「ヒロさんの罠か。(笑) これは、動かない修ちゃんとのパイプ役かもね。」
「何でそんなのが必要なんだよ。今は携帯もあるし、パソコンでも繋げるし、由美には本当に来て欲しいんだと思うぜ。」(後で兄ちゃんに聞いたら、俺のことを勉強しようとしてたのも知ってるし、「F」でも客ウケが良い上に多少の下ネタや悪乗りも動じずチャンと対応するし、背負子の件でもそうだったけど仕事も出来るし、女性目線ってのが自分には足りないので助けて貰おうって思ったらしい。)
「まだ、軽く話しがあっただけで何も決まってませんし、私そんな急に移動して新会社に行けって言われても役立たずのような気がするんですけどね。(困)」(後に秋の人事に関わってくるので、夏過ぎには返答が欲しいと正式に打診があったそうだ。)
「まぁ、正式に話しがあってから考えるしか無いか。(笑)」
「そうですね。」
「で、それはこれからなんだけど、ツーリングどうする?」
「そうですね、少し慣らし運転したいですし、再来週かその次辺りってどうです?」
「再来週か… それなら、桜が咲く頃だし少し遠いけど福島の三春まで行ってみようか。」
「福島ですか!」
「あぁ、三春って桜が有名な所があるんだ。」
「へぇ~。」
「磐梯山や猪苗代湖もあるし、チョッとコース考えとくよ。」
「いきなり福島まで大丈夫かなぁ… 」
「まぁ、一応遊園地コースで富士山と富士急ハイランドってのも候補にしとくか。(笑)」
って、話しながら時間も経ち、帰る時間になった。
帰りのタクシーで
「師匠。まだ全然本決まりでも何でも無いんですけど… 」
「ん?東京か。」
「はい。行きたくないって言うよりも離れたく無いんです。」
「此処からか?」
「… 師匠からも。」
「そこは大人になれよ。(笑) 俺なんかにかまってるより、せっかくのチャンスを逃さないようにしないと。」
「でも… 」
「今は便利な世の中になったし、携帯もあるしメールだって出来る。もし、本当に必要なんだったらいつだって駆けつけるさ。」
「でも、悩みます。(困)」
「ま、恰好つけたけど不幸とか用事があったら駆けつけられないけどな。(笑)」
「師匠はホントに凄いですね。」
「何が?」
「こんな私が昇進なんかして、次の打診までされてるのに咎めもせずに… 」
「何で咎める必要があるんだよ。」
「だって。まだ何も解ってない勉強中の身ですよ。」
「だからこそだよ。(笑)」
「どういう事ですか?」
「こんな田舎よりも、東京へ行ってホントの世の中の流れってもんを思う存分感じて、吸収する事が出来るチャンスなんだぜ。それを逃すなんて事を何で俺がさせなきゃイケないの?」
「私になんか、世の中の流れなんて解りませんよ。(困)」
「解らないから行って肌で感じて勉強するんだよ。それを、会社に還元しようが自分で新たな道を選ぼうが、それは真由美の自由だけど、今は会社が給料を出して行かせてくれるんだから、こんな有難いチャンスは無いんだぜ。(笑)」
「でも… 」
「真由美。最初、俺に付いて来た目的は何だった?金か?体か?違うだろ。」
「そうなんですけど… 」
「だったら、大丈夫。俺なんかは自分の世界を守る為だけに生きてるような人間なんだからさ。兄ちゃん所へ行って、この先の世の中の暮らしや人の様変わりをいち早く感じ取って、それを活かす勉強をしたらイイさ。」
「そんな事、出来るのかなぁ?」
「出来るさ。でも、勉強するだけじゃダメだからな。そこから、自分なりの考えってもんとリスクを避ける術を合わせて、いかに良い方へむけられるかってのが大事になってくるからな。(笑)」
「難しいですね。(困)」
「何を言ってるんだよ。クローゼットのハンガーを考えたり、浴衣に似合うって団扇を用意したり、もうやってるじゃないか。それをもっと大きく考えたらイイだけの事だよ。」
「やっぱり、もうチョッと考えさせて下さい。」
「あんまり考え込み過ぎて内へ入っちゃダメだぞ。」
「そんな時は師匠にぶつけます。(笑)」
「そう。それでイイんだよ。俺はその為に居るようなもんなんだからさ。(笑)」
「私。こんなのでイイのかしら?」
「何が?」
「だって、師匠に色々教えて貰ってる上にいっぱい甘えて、会社に内緒で夜の仕事なんかしてるのに… 」
「だけど、それがあって背負子を考えられたり、上の人とも酒なんかでも上手く付き合えたり出来てるんだから、そこはそれでイイんじゃねぇの。(笑)」
なんて喋ってると、いつものバス停に到着。朝から町内の行事があるんで、今日はここで別れて帰った。
※元投稿はこちら >>