正月休みに入った2日目。久々に戻って来たって事で、兄ちゃんと「F」で待ち合わせ。
兄ちゃんは家族サービスで晩御飯に出掛けてから来るっていうので、一足先に飲み始めている。
ガチャっとドアが開き、兄ちゃんが顔を覗かせた。
「あっ!ヒロさん、いらっしゃい。お久しぶり~」と、加奈が迎える。
「おぉ、久しぶりだな。(笑)」って言いながら俺の横へ。
そこへ「いらっしゃいませ。(笑)」と、由美が付く。
「真由美ちゃん。ホントに入ってるんだな。(笑)」
「ここでは、由美です。♡」と、慣れた手つきで水割りを作る。
「由美も一緒に飲みな。」
「は~い。」 と、3人で乾杯。
「話しには聞いてたけど、真… いや、由美ちゃんがそっちに居ると違和感があるな。(笑)」
「もうチョッと早ければ、もっと違和感のあるミニスカのサンタさんでしたのに。(笑)」
「それは見たかったな。(笑)」
「ホントは既定ならダメなんですけど、係… いや、所長は黙っといてくれるんですか?」
「えっ?俺が聞いた話しでは、知り合いに頼まれた臨時の助っ人だろ。(笑)」
「ですね。(笑)」
「背負子で無茶ぶりしてたし、言えた義理じゃ無いよな。(笑)」
「会社で堂々と裏稼業してるお前が言うな。(笑) そうそう、あの背負子。コロコロを2つにして引っ張る時はナナメにすりゃイイだけだし、何より真っ直ぐに置いたら固定できるってのが、取り出しとかの作業し易いって評判良いんだよ。(笑)」
「その背負子で、仕事は順調なのかい?(笑)」
「まぁ、何とかな。今は都心部が中心なんで買い物代行の比率もそこそこあるんだけど、地方へ移ると弁当の方が上がってくるって思うんだよな。」
「あぁ、そうそう。何か提案があるって言ってたよな。(笑)」と、由美に話しを振る。
「おっ!何かあるの?」
「いえ、これは師匠が言い出したんですけどね。今、顧客のターゲットはお年寄りや在宅ワーカーじゃないですか。」
「そうだな。」
「それを、こういう夜の仕事してる人に向けても広がるんじゃないかなって話しなんです。」
「夜の仕事か。」
「そう。兄ちゃんの居る東京なんかもそうだけど、大きな歓楽街には夜の仕事をしてる人間っていっぱいいるだろ。」
「まぁ、いるよな。」
「そういう人達って、そんなに早起きしないじゃん。」
「ま、夜が遅いしそうだわな。」
「朝、遅めに起きて昼頃に弁当が届けば便利かなぁって。」
「なる程ね。」
「それに、お買い物も代行して貰えるとその時間に美容室だネイルだと行ける時間に余裕が出来るし、使って貰えるんじゃないかなって。」
「そうか、早めに出掛けられてそういう所に行く時間に余裕が出来るか。チョッと待てよ… でも、難しいのはエリアなんだよな。皆が同じ所に住んでりゃイイけど、そんな訳が無いし、それをリサーチするのがなぁ… 」
「まぁ、失敗しても一回やってみるってのはアリだと思うよ。」
「でも、そこは狙い目かもな。こりゃ、来期から新たな客を増やすのに、戻ったら早速戦略会議しないとイケないな。(笑)」と、ここで由美がチェンジになる。
「ヒロさん。お久しぶりです。♡」と、咲ちゃんが来た。
「おぅ、咲。久しぶりだな元気だったか?」
「お陰様で。ヒロさんは?」
「まぁ、やる事が多すぎて身体壊してる暇が無いってやつだな。(笑)」
「頑張りすぎちゃダメですよ。(笑)」
「なぁ、咲。」
「何です?」
「お前さ、こういう仕事してるだろ。」
「夜の仕事ですか。」
「そう。で、ここなら3時までだけど、いつも何時頃に起きてる?」
「帰って、何だかんだで寝るのが5時とかで、起きるのは11時とか、遅いと昼頃ですね。」
「御飯は?」
「食べずに珈琲飲んでるか、食べてもトーストぐらいかな。」
「弁当があったら?」
「嬉しいですね。(笑)」
「幾らぐらいなら出せる?」
「そうですね、ワンコインなら嬉しいですけど。届けて貰えるなら600円~700円ぐらいかな。」
「じゃぁ、もし弁当を頼んだとしてだよ。13時半とか14時頃に空容器を回収に来る人が、咲の代わりにスーパーとかで、牛乳だとか何だかんだと欲しいモノを買って来て届けてくれたら?」
「あっ、それ嬉しいかも。その分色々と出来る時間が作れますもんね。」
「そうか、やっぱりそこに需要はあるか。」
「はい?」
「いや、修二がな。俺がやってる仕事を夜の仕事してる人に広げてみてもイイんじゃないかって言うからさ。」
「でも、確かにありがたいかもです。朝って言うか、お昼ですけど御弁当が来て、お昼過ぎに頼んでたお買い物が届くなら他の事する時間に余裕が出来ますもん。(笑)」
「そうか、時間か… 」
「だって、私でさえそう思うのに、クラブとか東京の銀座とかで働いてる人達なんて毎日のように髪のセット行ったりしてるんでしょ。そりゃ時間が要ると思いますよ。」
「そこだな。夜の人を取り入れるには、時間ってのをウリにしていくべきだな。」
「兄ちゃん。一つ言えるのは、そういうお客には女性が担当しなきゃイケないから気を付けなよ。」
「そうか、そうだよな。独身女性も多いだろうし、スッピン見られたく無いもんな。(笑)」
「確かに、身内以外の男の人に生活の一部を覗かれるってのは嫌ですからね。(笑)」
「まぁ、とにかくリサーチの方法とウリ方だな。(笑)」
「あっ、ウリ方って言えば、ウチの謎のハウスボトルはよく出てますよ修二さん。」
「みたいだな。(笑)」
「何だ、謎のボトルって?」
「修二さんが仕入れてくれる焼酎をハウスボトルにしてるんですけどね。飲み口良くって美味しいって、お客さんに普通にボトルで入れてくれって言われるんですけど、修二さんとママがまだ内緒って教えないんですよ。(笑)」
「何、またお前新しい小遣い稼ぎしてんの?」
「いや、これに関しては何の稼ぎにもなってない。」
「じゃ、何でお前が仕入れてんの?」
「この辺には出まわってない焼酎で、ウチの親戚のなんだ。」
「親戚?」
「そう。母ちゃんの従姉妹が焼酎の酒蔵に嫁いでてさ、そこのが美味いから紹介しただけなんだよ。」
「で、何で謎なの?」
「ま、今は様子見って感じだな。もうチョッと見てコンスタントに出るようなら、銘柄教えて酒屋に取り寄せして貰ったらイイんじゃないかなぁって。」
「で、今は謎で甕に入れて提供中です。(笑)」
「甕?」
「チョッと飲んでみる?」と、味見するのに少し用意して貰う。
「おっ、これ芋か。何か飲みやすいな。(笑)」
「な。親戚だって贔屓目を抜きにしても普通に美味いだろ。」
「で、何で甕なんだ?」
「銘柄を内緒にしてみようってのもあるけど、味がまろやかになるらしいからやってみてるだけ。(笑)」
「で、これハウスボトルで出せるぐらいの値段なの?」
「そうなんだよ。度数は20なんだけど、この辺りで出してるハウスボトルの焼酎と何ら変わらないんだよ。」
「20?」
「そう。九州じゃ、焼酎は20度が当たり前。(笑)」
「へぇ~、でも普通にボトルでもイケるんじゃない?」
「そうだな。そろそろ半年だし、加奈に言って酒屋で取り扱いしてくれるか確認させるよ。(笑)」
つて、話しをしてるとチーフが「ママがこちらも飲んでみて下さいって言ってます。」と、ロックグラスを持ってきた。
「何だ、新しいウィスキーか?」と、一口飲んで
「何コレ、梅酒か?美味いな。(笑)」
「ヒロさん、それ由美ちゃんとママが作ったんですよ。(笑)」
「作ったの?」
「そう。由美が家で作ってたのを加奈に飲ませたら、欲しいってなって。それじゃ、一緒に作ろうってことで置いてあるんだよ。」
「美味いな。これウィスキーか?」
「バーボンなんだけど… チョッと早くない?」
「あっ、これはまだ前に由美ちゃんがくれた樽の方のです。」
「バーボンか、初めて飲んだけどこんな味になるんだな。真由美ちゃんやるなぁ。(笑)」なんて飲んでると咲ちゃんが聞く。
「ヒロさん。お盆は帰って来れなかったみたいだけど、お仕事忙しいの?」
「まぁ、お陰さんでな。」
「ちゃんと遊んでます?」
「ま、そこそこにな。 あっ、そうそう。俺、サウナ好きだからスーパー銭湯に行くんだけどさ、大きな商業施設の中にあってな。直ぐ前が競艇場なんだけど、最寄りの駅から無料でバスが走ってて便利なんだよな。」
「風呂入ってボートかい?」
「ま、競艇はチョロッとだな。(笑) その施設が映画館にゲームセンターにパチンコ屋。それにディスカウントストアにレストラン街って、色々入ってるんだよ。」
「何か便利そうですね。」
「それだけ店があって競艇場もあったら、金を出し合ってバスを無料で走らせて客を来やすくするのも当たり前だな。(笑)」
「大体、朝から映画観て、飯食ったら風呂とサウナ入って昼寝して帰るのが多いかな。(笑)」
「で、夜は飲み屋か?(笑)」
「あの辺は結構安いんだよな。(笑)」
「で、フィリピンのお姉ちゃんとヨロシクやってんだぜ、咲ちゃん。(笑)」
「そうなんですか?」
「そんな訳ないだろ。(笑) けど、あの辺りは何故かそういう外国人も店も多いよな。」
「まぁ、東京では下町って言われてても、ここら辺よりは遥かに都会だしな。都心に行くと家賃なんかも高いだろうけど、あの辺りだと丁度イイんじゃないの?」
「そうなんだよな。だからフィリピン系の店なんかも多いんだろうな。」
「ヒロさんの行ってる店も?」
「あぁ、前に修二を連れて行った所はそうだったな。」
「おっ、違う店も見つけたの?」
「そりゃ、接待とまではいかないけど、仕事で来てくれた人なんかと出掛けるのにチョッとは知っとかないとな。(笑)」
「東京かぁ、行ってみたいな。」
「咲ちゃんは東京に行った事無いの?」
「ディ〇ニーランドはありますけど、後は子供の時に東京タワーに登ったくらいで、あまり覚えてないんです。(笑)」
「東京タワーか、俺も子供の時に1回登っただけだな。」って、笑ってるとBOXの客が帰って加奈が来た。
「ヒロさん。ホント久しぶりね。(笑)」
「1年以上空いたからな。(笑)」
「どうなの東京は?」
「東京って言っても仕事で行ってるだけだし、下町だからココと何にも変わらないよ。」
「一人暮らしで、自炊とかちゃんとやってんの?(笑)」
「おぅ、料理は滅多にしないけどな。(笑)」
「外食ばっかり?」
「って言うかよ、朝はパンなんだけどな。昼は仕事で弁当を扱ってるんで試食だったり何だりで、晩は飯屋で定食とビール飲んでも1000円だからな。(笑)」
「そうか、お昼がタダなら良いわね。」
「料理しない分、洗い物って言う作業をしなくて済むから楽だよ。」
「掃除に洗濯にそこまですると大変か。」
「まぁ、女房の有難さってのはつくづく感じるな。(笑)」
「で、仕事の方は?」
「さっきも喋ってたんだけど、またコイツらが仕事を増やすような事を言い出しやがってよ。(笑)」
「だから、俺は言うだけでヤるかどうかは知らないよ。(笑)」
「何を言い出したの?」
「 弁当の配達や買い物の代行を夜の仕事をしてる人を対象にしてみたらどうだって言うんだよ。」
「まぁ、確かに独身の子ならヒロさんと一緒で家事が減るんだから便利だわね。」
「咲も言ってたけど、時間が作れるってやっぱり良いか?」
「そりゃ、料理や買い物しなくてイイ分だけ別の事に時間が使えるのは有難いわよ。(笑)」
「そうか。やっぱり後はエリアの問題か… 」と、飲みながら
「ママ、そう言えばこの焼酎と梅酒。美味いな。(笑)」
「焼酎は修ちゃんが教えてくれたんだけど、梅酒は由美ちゃんの手作りよ。(笑)」
「バーボンってのは初めて飲んだけど、美味いな。」
「量が無いから別料金になるけどグラスで出そうかなって思ってるの。」
「炭酸とかで割ったら女性にウケるんじゃない?」
「焼酎はどう?」
「コレ、飲みやすいし美味いよ。」
「加奈。そろそろ半年だし、一回酒屋に取り扱えるか聞いてみても良いんじゃない?」
「じゃぁ、そろそろ解禁ね。(笑)」
「で、真… いや、由美ちゃんの仕事ぶりはどうですか?オーナー様。(笑)」
「何がオーナー様よ。客ウケも良いし、気が利くし、本気でやったら直ぐにお店出来るタイプね。(笑)」
「ふ~ん。」
「会社ではどうなの?上司として見たら。」
「仕事は当然だけど、酒の席の付き合いも出来るし、チョッとぐらいエッチな事でも平気であしらえるし、俺としては有難い存在だったよ。(笑)」
「そんなに褒めて、由美がくしゃみしてない?(笑)」
「アンタの弟子なんだから、ちゃんと大事にしてあげなさいよ。(笑)」
「そうだったな。お前の弟子だったな、これは失礼しました。(笑)」
「弟子ねぇ… そんなに褒めてるんだからもう、俺の方が弟子でイイんじゃね?(笑)」
「アンタが弟子なんて、師匠が逃げるわ。(笑)」 2人が(ウンウン)と頷く。
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