お盆明け。会社のお客さん(需要が急速に伸びている携帯電話関連のアクセサリー商品を開発販売している会社)が使ってた工場が倒産したっていうので、別の工場を見付けたところ、製品を作る原料の保管や投入が紙袋の物では無く、フレコンバックでの取り扱いになるということで、詰め替え作業が発生した。
かなりの数で半年や1年の仕事になりそうなのだが、作業場を確認するとホント大変な作業だ。
紙袋40個を1トンバックに詰め替えるのだけど、1個1個カッターナイフで紙袋を切り、投入している。
袋の上の所を切ってザーッと入れるのだが、切り口の所に原料が残ってしまい。パタパタと振って何だか面倒そうだ。
少し見ていたのだがチョッと気付いた事があったので、試させて貰った。
袋は縦の方の上の所は閉じてあるのでどうしても窪んだ部分が残り、そこに原料が溜まって、それを振り落さないとイケない。
でも、横は閉じてないので切っても窪みは出来ない。それに真っ直ぐに切ってもしっかり開かずに原料が残ってしまう。
なので山切りにしてみたら、縦に切ってたよりも一気に綺麗に投入出来た。しかも切り口が大きいので速度も早い。
「こういう感じでやってみて下さい。」って、お願いしてやって貰ったら
「おぉ!こりゃ、早いし綺麗に落ちるし、これからこうするよ。(笑)」って、作業してくれてる人も受け入れてくれた。
「スミマセン。もう1つ、カッターナイフは刃が折れて混入する可能性があるので、もうチョッと刃がしっかりした物を使って貰えると安全かと思います。」
「そうだな。そうするよ。」と、この仕事も徐々に見直しや手直しして作業マニュアルを作っていかないとイケない。
こういった新たな仕事のマニュアルや安全に作業する為の提案や、効率化を上げる為の見直しなどをするのも俺の仕事の1つである。
まぁ、今回は上手い具合に製造工場も直ぐに見つかって、新たな所では生産量も今までの倍以上でも対応して貰えるようなので今後の携帯電話の普及率によっては助かるのかな。(ホントの主たる仕事は、お客さまのニーズに合わせた材料調達や困りごとに対しての手伝いやアドバイス等々で、ウチの製品や商品を使って貰う為のサービス対応ってのをやっている。)
ただ、主任や係長になると客先へ出向いての対応などをしなくてはイケなくなり、出張が増える。
俺は『仕事よりも飯。飯よりも遊び』って人間なので、休めるなら出来るだけ休みたいし、人の上に立って責任を持つなんてのは嫌なので、そこを出来るだけ避けたいが為に今の立場を維持している。(それに裏稼業もあるし、40歳位までは今のままがイイかなぁ… )
9月、真由美が出張から戻った週末。今日はお客です… と、カウンターに俺と並んで座っている。
「師匠。岡山のデミカツ食べて来ました。(笑)」
「どうだった?」
「面白いものを考えつくもんですね。名古屋の味噌カツも美味しいですけど、デミカツも美味しいですね。」
「どっちが美味い?」
「でも、普通にソースにカラシを効かせて食べるのも美味しいですし、どれって言われても困ります。(笑)」
「そうだよな。(笑) で、仕事の方はどうだったの?」
「現場を見てきて、チョッと工事が必要ですけど、生産効率が20~30%は上げられそうですので、ウチはこのままプレゼンしてお客さんの返答待ちになりそうですね。」
「20~30なら取れるだろ。」
「とは、思うんですけどね。」なんて、仕事の話しをしていると咲ちゃんが
「な~に。珍しいわね、2人でお仕事の話ししてるの?」って、笑ってくる。
「珍しいって失礼な。(笑)」
「あっ、聞きましたよ師匠。お盆明けに大変だったらしいですね。」
「あぁ、お客さんが使ってた工場が倒産してな。ウチの原料を使って貰ってるので別の工場探したりして。まぁ、何とか良い所が見つかって助かったよ。」
咲ちゃんが「仕事と言えば、ヒロさんの所はどうなの?お盆も結局顔を見せてくれなかったし。」
「あぁ、順調らしいよ。まぁ、今年は初めての事だらけだから、お盆も色々あって帰って来れなかったらしいしな。」
「忙しいのね。」
「うん。今までに無いサービスの提供だから、まだ手探りな部分が多いんだろうな。(笑)」
「そうそう、係長… いえ、所長から軽い素材で、しかも70㎏対応で折り畳み可能な背負子を作れって言われて作りましたね。」
「おぉ、あれな。兄ちゃんが褒めてたな。アルミとカーボンで上手く作った所に、真由美の提案で落下防止の留め具と底にコロコロ付けたら使い勝手が良くなって、配達するのが随分楽になったって言ってたもんな。(笑)」
「あれは、博多に行った時にお土産屋さんの所で、手提げバッグの底にコロコロが付いてるのが売っていて、運ぶのに便利そうだなって思って買ったのを思い出して… 」
「そう。だから俺が言ってるだろ、色んな所へ行ったりして経験してみて初めて解る事があるって。それを知ってるからこそ、そうやって背負子の下にコロコロなんて結びつけられるんだよ。ただ単に遊びに行ってるだけじゃ無く、その遊びの中からでも経験値として知りえた情報が糧となって活きてくるんだよ。(笑)」
「何です?お師匠さんとお弟子さんの勉強会ですか?(笑)」
「まぁ、兄ちゃんの注文のお陰だな。(笑)」
「ですね。(笑)」 って話してると、真由美が突然思い出したのか咲ちゃんに話し出した。
「咲さん。今度、時間合わせ
て炉端屋さん行きません?」
「炉端って、あそこの?」
「えぇ。この前、初めて連れて行って貰って、咲さんがあそこのジャガイモの焼酎が好きだって聞いたから一緒にどうかなって。アレ美味しいですもんね。(笑)」
「そうなのよ。アレと地鶏のステーキが最高なのよ。(笑)」
「この前は売り切れだったんで私も食べてみたいんです。(笑)」
「美味しいわよ。あぁ、ダメ。考えただけでヨダレが出そう。(笑)」
「ねっ、行きましょ。」
「じゃぁ、その時は修二さんの同伴って事でヨロシクね。♡」
「えっ!俺持ち?しかも2人も同伴?(笑)」
「師匠。ありがとうございま~す。」
「って、何で勝手に話しが決まってんの?」
「お願いね。お師匠さん。♡」
「ま、たまにはイイか。」って事で、いつになるかは解らないけど同伴させられる事が決まってしまった。(笑)
「焼酎って言えば、修二さんが持ってきた芋焼酎。美味しいから結構出るのよね。」
「そうですね。ハウスボトルにしとくの勿体ないと思うんですよ。(笑)」
「ま、アレはお試しだからどうするかは知らないけど。この辺の酒屋ではまだ見当たらないから今はココだけの味だな。(笑)」
「甕に入れて出してるから、お客さんも何の銘柄か知りたいって言うんだけど、ママがまだ秘密って教えないのよね。(笑)」
「師匠。どうして甕に入れて出すように言ったんですか?」
「まぁ、最初は謎な方が興味も引くし、甕に入れると味がまろやかになるらしいよ。(笑)」
「そうなんですか?」
「ま、あくまでも、「らしい」だからな。(笑) そうだ!」
「どうしたんですか?」
「あの梅酒… 」
「あっ、ウチのですか?」
「そう。あれをオーク樽に入れたらどうだろ?」
「オーク樽?」
「うん。醸造所でウィスキーなんかを熟成させてる樽だよ。」
「あぁ、あの黒〇危機一髪みたいな樽。あれってオークって言うんですか?」
「そう。オークって素材なんだけど、あの梅酒が余計に美味くなったら最高じゃん。(笑)」
「一度、試してみます?」
「うん。何か樽の小さいのとかがあるみたいだから、仕入れてみるよ。(笑)」
「修二さんは、ホント色々と面白いものを知ってるし、こういう事を考えるの好きね。(笑)」
「ま、儲けにはならないけど、やってみて美味いモノを飲んだり食ったり出来りゃ、嬉しいじゃん。(笑)」
「確かにね。(笑)」って、食べ物や飲み物の話しをしてると腹が減ってくる。(笑)
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