10時過ぎ、洗面所からドライヤーの音が聞こえる。
昨晩はチョッと飲み過ぎたのもあり、部屋着に着替えて2人でバタンキュー。チェックアウトを少し延長だ。
「お待たせしました。」と、真由美が身支度を整えて出て来た。
「ヨシ。じゃぁ、行くか。」と、ホテルを出て呉服町駅まで移動して少し歩く。
「師匠。昨日お店出てから、おんぶして貰ったんまでは覚えてるんですけど… 」
「あぁ、もう寝てたもんな。部屋に入ってから着替えてた時も、服は脱ぎっぱなしにするわ、ボタンが留められないわって俺に留めさせるわ… (笑)」
「すみません。(恥)」
「いや、面白かったからイイんだけどな。「師匠。ボタンが… アレレ?もう、留めて~!」って半べそでな。(笑)」などと話してると到着した。
お昼には少し早い11時半チョッと過ぎ。近くまで行くと店の前には10人程が並んでいる。まだ店が開いてないみたいだ。
美味い博多ラーメンを食べさせようと、少し場所が解りにくい店にやって来た。
本当に解りにくくって、最初に教えられて来た時は本当にココにあるのか?って、不安になりながら辿り着いたんだけど。(笑)
いざ食べてみたら本当に美味かったので、まだ4回目だけど博多に来ると寄っている店なのだ。
前に来た時は看板があったのに無くなってしまっていて、余計に解りにくくなった感じだ。
最近は口コミでお客さんが増えたらしいけど入れたら良い。大将がかなりこだわる人でスープの出来が気に入らないと店を開けないらしいんだけど、今のところは毎回入れている。(笑) ま、何にせよ美味いのだ。
「真由美。豚骨ラーメンって食ったことあるだろうけど、ココのは全然違うから。(笑)」
「どう違うんですか?」
「何て言うんだろ。濃厚っていうか、とろみっていうか… でも臭みが無くてな。まぁ、とにかく美味いんだよ。(笑)」
なんて話してると店が開いた。席に座って注文をする。やって来たラーメンのスープを先ず一口味わう。
真由美が「美味しい」って目を見開く。
俺は(何か前と雰囲気が変わったなぁ。ま、美味いからイイんだけど。) なんて思いながら食べていた。
店を出て駅へ歩いてると、美味しいと噂に聞いて来たのか店を探す人が歩いていて、行き過ぎたのかもと道を振り向いている。
真由美が「師匠。あのラーメン美味しいですね。お腹いっぱいだったけど、カレー味も美味しかったし… (喜)」
って話し掛けてきたのを聞き「すみません。博多〇気一杯!!って、この辺なんですか?」と、聞いてくる。
「あぁ、あのパーキングの向こうの所を入るんですよ。(笑)」と、教える。(教えたけど、解るかなぁ?あそこを曲がってからも看板が無くなってるから解りにくいんだよなぁ。ま、表に人が並んでたら解るだろうけど。)
「師匠、そう言えば師匠もラーメン屋さんに行ってたんですよね。」
「あぁ。俺が行ってた所は鶏ガラと野菜を炊き込んで作るスープだったんだけど、とにかく濃厚でな。客には見せられないけど、仕込みの時は頭とか脚がプカプカ浮いてて。野菜も洗ってぶつ切りにしたら皮も剥かずに寸胴に投入。(笑)」
「豪快ですね。」
「大将がよく言ってたな。「野菜ってのは皮にもちゃんと旨味ってもんがあるんだ、捨てるなんて勿体ない。」ってな。」
「へぇ~。」
「忙しい時なんかに客が帰って2、3分して丼を下げに行ったら、膜が張ってる程だったんだ。」
「今の所より濃厚そう。(笑)」
「でも、美味くってな。国道端にあったんだけど、口コミで色んな所から来たトラックの運ちゃんなんかが立ち寄ってくれる店だったんだよ。残念だけど大将が癌で死んじまって、店は無くなったんだけどな。」
「有名店だったんだ。」
「あの頃は今みたいにパソコンも無かったし、ホントの口コミだけだったから有名かどうかは知らないけど、何せ忙しかったな。」
「どんなんだったんだろう?」
「懐かしいな。最初入って皿洗いから始めて、最後は釜も任せて貰ってたけど。真由美はデポって解るか?」
「えっ、倉庫のですか?」
「あっ、そうか。そりゃ、そっちになるな。(笑) 倉庫のデポじゃ無くって、麺を茹でる時に使うカゴなんだけど。」
「あぁ。(恥)」
「あれを振りすぎて、柄からカゴだけ外れて飛んでった事があったぐらいさ。(笑)」
「あんなの取れるんですか?」
「まぁ、あれも消耗品だからな。湯切りの時に、腕を引く瞬間にスナップを効かすんだって教えられて。いつものようにクイッてやったらスポッて飛んで行って、アァーッ!!ってな。(笑)」
「師匠がラーメン屋さんしてるの見てみたかったな。(笑)」
「もう、必死。忙しい時は、ラーメン作りながら唐揚げ… 唐揚げも美味かったんだよなぁ。醤油ベースのタレに七味唐辛子を効かせて漬けこんで。(懐)」
「何か、美味しそう。(笑)」
「ビールに合う合う。(笑) でも、今でも謎な事があるんだよな。」
「何ですか?」
「ラーメンの丼に魔法の粉って言って白い粉を小さじの半分程入れてスープを注ぐ時に混ぜてたんだけど、何かの旨味の素なんだけど「〇の素」とも違ったし。あれ、何の粉だったんだろ?」
「危ない粉ですか?(笑)」
「そんなんだったら、どんだけ高いラーメンになるっての。ってか、捕まってる。(笑)」
とかって、懐かしい事を思い出しながら歩いてた。(今では当たり前に知られてるグルタミンが正体だったんだけど… )
お昼過ぎ。腹ごなしに中洲川端で地下鉄を降り、商店街や川べりをぶらりとしながら天神駅へ。
コインロッカーに入れておいた荷物を取り出し博多駅へ向かう。
昨日下見をしておいたので真由美が目的の店へ向かいアレコレと土産物を買っている。
「そんなに買って、誰にあげるの?(笑)」
「ママとか「F」の人達にって思って… 」
「そうか。じゃ、俺は行って無い事にしとかないとな。(笑)」
「あっ、そうか。」
「会社はいつものように俺が持ってくから、真由美は博多に来たの内緒な。(笑)」
「はい。解りました。」
「で、帰りの晩飯どうする?」
「せっかくだから、駅弁食べたいかなって思ってるんですけど。」
「えっ、駅弁がしたい?(笑)」
「もう。食・べ・た・い です。」 なんて笑いながら弁当を選ぶ。
俺はいつも博多から帰る時は『かしわめし』と、チョッともの足りないので何か目新しい弁当って、2つ買ってしまう。(笑)
真由美は幕ノ内を買っていた。
新幹線が博多駅を出発。「あぁ~あ。もう帰らないとイケないのか。(寂)」
「まぁ、1泊2日って移動もあるから、アッ!という間だよな。(笑)」
「でも、考えたら充実してるんですよね。LIVEに屋台に名物のもつ鍋、それにラーメンって。」
「グビグビ焼酎も呑んだしな。(笑)」
「師匠の怖~い所も見ちゃったし。」
「怖かった?あれは小便に立っただけ。じゃぁ、黙って下向いてたら、「由美です。♡」って、アイツらの所行ってたか?(笑)」
「嫌です。♡(笑)」 なんて話してたら九州を離れる関門海峡のトンネルに入った。
「九州さん。バイバ~イ。」って、真由美が呟いている。(笑)
「明後日から「F」入るんだな。」
「はい。」
「頑張れよ、由美ちゃん。(笑)」
「平日だけど、たまには来て下さいね。(笑)」
「次の日が休みだったら考えるんだけどなぁ。(笑)」
弁当を食べながら聞く。「真由美。博多はどうだった?」
「チョッと怖い事もあったけど、LIVEも屋台も行ったし楽しかったです。それに、食べ物も色々と美味しかったし。やっぱり、この新幹線や飛行場が近いってのが便利よくって、良い所でした。(笑)」
「九州の玄関口って言う程だしな。」 そう言ってるウチに新幹線から在来線に乗り換え、21時過ぎ。真由美の降りる駅に着いた。
「ありがとうございました。」
「おう!じゃぁ、また明日な。」
ホームで手を振って見送ってくれている姿が遠くなって行く。(さぁ!明日からまた仕事だ。頑張ろう)って思いながら帰宅した。
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