4月。俺はまた肉を捌いてる。例年恒例とはいえ、仕入れはしてやるから誰か交代してくれよと思う。
「修二さん。」と、真由美が声を掛けてくる。
「何?」
「この子の家がお肉屋さんで、お手伝いしてたからお肉を捌けるらしいですよ。」
と、男の子を紹介される。真由美のいる部署に新しく配属になったらしい。
「こんにちは。お疲れ様です。」と挨拶される。
「おっ!手伝ってくれるの?」
「お邪魔にならなければイイんですけど。」と、言って手伝いに入ってくれる。
「家が肉屋なら、跡継ぎしなくてイイの?」
「僕は次男なんで、兄貴が継ぐんですよ。(笑)」
「へぇ~、そうなの。じゃ、お肉は安くで手に入るんだ。」
「話しには聞きましたけど、修二さんみたいに卸値そのままって訳にはいかないですけどね。」
「でも、家にはスライサーとかあるんでしょ。」
「ですね。」
「もう、俺も歳だからさ(笑) 楽したいし、そろそろ世代交代って事でレクの奴らに相談しようっかな。(笑)」
「えっ!俺にですか?」
「だって、少しぐらい上がったって、一般より安く仕入れられて捌きもしてくれるなら、そっちの方がイイじゃん。(笑)」
「一度、家に相談してみてからでイイんなら、大丈夫ですけど… 」
「ホント?」
「はい。」
「ヨシ、決まりだ。本当にレクに相談するからね。(笑)」
「解りました。」って、世代交代の交渉が進む。
「あの、修二さん。」
「ん?」
「真由美さんから聞いたんですけど。」
「何を?」
「煙草なんですけど、僕も買わせて貰ってイイですか?」
「あぁ、煙草か。イイよ。一応、1ヶ月纏め買いして貰って、足りない時は個別で言ってくれたら用意するって感じだけど、それでイイ?」
「解りました。お願いします。」って、事でBBQの支度候補と煙草の客が同時に出来た。
夜。歓迎会&花見&BBQも終わり、レク委員と今回の担当に当たった奴らは後始末。俺らは一足先に2次会へ流れて行く。
居酒屋へ行くグループ、カラオケに行くグループ、飲み屋へ行くグループなんかに別れる。
俺は肉ばっかで、チョッと魚が食いたくなったので居酒屋グループへ、真由美は同僚の女の子とカラオケへ行くようだ。
こそっと「後で「F」行くぞ。」とだけ伝えて、それぞれの2次会へ向かった。
俺は居酒屋で魚系の品を注文して皆とグラスを鳴らす。向かいに座ってる同期の女子社員が、
「修ちゃん。この前、ヒロさん所に行って来たんでしょ。どうだった?」 って聞いてくる。
「そりゃ、兄ちゃんだもん。チャンとフィリピン系の可愛いお姉ちゃんが居る店を見付けて常連になってたよ。(笑)」
「バカ。仕事の方よ。(笑)」
「何だ仕事か。まぁ、話しぐらいは聞いてるだろうけど、契約の数もそこそこあって順調な滑り出しみたいだよ。後はどうやって都心や全国に広めるかなんだけど、俺はテレビは高くつくし、今からの時代だからインターネットと、アナログでラジオなんてどう?って、言っておいたんだけどね。」
「インターネットか。ホント便利になったわよね。(笑)」
「って、お前はババァか?(笑)」
「私がババァなら、アンタはじじぃね。(笑)」なんてフザけてる。
隣からは「真由美ちゃん。ティ〇ァニーのオー〇ンハート付けてるけどホワイトデーに貰ったのかしら、羨ましいわね。」
なんて声が聞こえる。
「俺があげようか?クリップをこう(手真似する)捻って作った、修ちゃんのオーッサンハート。(笑)」
「アハハッ!子供の時に作りましたね、そういうの。」
「懐かしいだろ~ (笑)」って、冗談を言いながら時間が過ぎて行く。
次、どうする?って事で、3次会ってカラオケや飲み屋へ行く者、帰る者に別れる。
俺は帰るって事にして1人で「F」に向かうことにした。
ドアを開けると何か賑やかだ。まぁ、何処の会社も同じでこの時期なら花見や歓迎会などからから流れて来るお客も多い。
ん? カウンターを見ると、由美が居る。どうもこの感じだと顔を覗かせたら、忙しいのでヘルプに入ってくれと言われたようだ。
「いらっしゃいませ。」と、声が掛かる。
空いてたのでカウンターに座ると由美がお絞りを持って来て、一瞬プクッと頬を膨らませて笑顔に戻り元の場所へ付きに行く。
BOXに居た加奈の方を見ると、ゴメンと手を合わせてる。
咲ちゃんが来て、「修二さん。ゴメンなさい、忙しくって由美ちゃんに助けて貰っちゃってます。」 って言ってくる。
「本人がOkして入ったんなら、イイんじゃない。」
と、由美を見ると確かに胸元にはネックレス… (あれ?クリスマスの時にあげたやつだな。) なんて思いながら飲んでいる。
咲ちゃんが聞く「修二さん。この前、付けなかったんで聞けなかったんですけど、ヒロさん所に行って来られたんですよね。」
「あぁ、先月な。」
「どうでした?」
「あぁ、兄ちゃんだもん。仕事はしっかり準備出来てたし、まだ始まったばかりだけど上々な滑り出しみたいだよ。飲み屋もちゃっかり見付けて、フィリピン系だったけど咲ちゃんみたいに可愛い子ちゃんが居る店の常連になってたし。(笑)」
「飲み屋は知りませんけど、お仕事の方が順調のようで良かったです。♡」
「やっぱり心配か、兄ちゃんの事。(笑)」
「だって、大事な先輩ですもん。」
「ホントは好きなくせに。(笑)」
「いいえ、違います。「だった。」です。(笑)」
「あっ、過去形ね。」
「子供の頃の事ですもん。(笑)」
「そりゃぁ、失礼しました。(笑)」なんて話して、横の客の方へ行く。
1人でグラスを傾けながら、(ゴールデンウイーク前に博多か、それから田植えだろ。5月の末は礼子と温泉だなぁ… )
なんて、先のスケジュールを考えながら、アレコレと思いを馳せる。と、チーフが来て聞いてくる。
「修二さん。今日も由美ちゃん、お願い出来ますか?」
「あぁ、元から客で来て一緒に帰るつもりだったから大丈夫だよ。」
「じゃ、閉店まで居て貰わないとイケませんけど、お願いしますね。」
「解ったけど、帰りの車はチャン呼んでよ。(笑)」
「解りました。」 (って、加奈のやつ由美に閉店まで入って貰うつもりか。(憤) )
まぁ、仕方ないかって思ってしまう俺も俺なんだけど。
まさかのヘルプだろうし、帰りは真由美の愚痴をいっぱい聞いてやろうっと。(笑)
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