3月初旬。兄ちゃんの新事業も4月から始まるって事で最終の確認って意味もあり、出張で東京まで来ている。
本当は日曜に前乗りなのだが、今回は武道館でやるような全国区のアーティストでは無いが昔から好きなフォークシンガーがいて、江古田のライブハウスで土曜にLIVEがあるので1日早く来た。(勿論、宿泊は自費だ。)
武道館の時のような立ちっぱなしなんて事もなく、お酒を飲みながら楽しめる。
この人のLIVEは歌もだけど喋りも凄くて、喜怒哀楽が散りばめられ、1本の映画を観たような感覚にさえなる。
ものまね番組にも出た事があり、自分では『出遅れフォークシンガー』 なんて名乗ったりしている。
そのLIVEも見てみたいし、また新宿にも行きたいと言うので今回も真由美と一緒だ。
今日は少し早めに出発して横浜に寄り道して、中華街でお昼を楽しんだ。
「師匠。よくあんな隠れ家みたいな所を知ってますね。(笑)」
「まさかレジの奥の衝立の裏に階段があるなんて思わないだろ。(笑)」
「土曜のお昼で混んでるのに、あんなにゆっくり出来るなんて… 」
「しかも、贅沢しても安いしな。(笑)」
「フカヒレ丸ごとなんて初めて食べました。私、中華って言うと〇将かバー〇ヤンですもん。(笑)」
「いや、俺だって普段はそうだよ。(笑)」なんて話しながら移動してランドマークタワーに登る。
横浜の街を見下ろし「今日は時間が無いし散策出来ないから、此処からの眺めだけで我慢しなよ。(笑)」
「いいえ、ここからだけでも十分です。(嬉)」
東京へ移動。ホテルにチェックインして荷物を置き、夕方ライブハウスに入る。開演までアルコールで喉を潤しながら、談笑する。
「真由美のくれた梅酒。ホント美味いな。(笑)」
「良かった。♡」
「あれでアル中になったの?(笑)」
「急性です。(笑)」
「そうだよな。焼酎で25度なのに、バーボンなら40度だもんな。同じ量でもエラい違いだ。」
「そうなんですよ。甘くて美味しいもんだから、ついつい飲んじゃって… 」
「小学生でアル中。(笑)」
「だから、急性のです。(笑)」
「そうだ、それよりな。今度は博多だって言ったじゃん。」
「はい。」
「行った事ある?」
「いえ、無いです。」
「そうか。じゃぁ、行きは飛行機。帰りは新幹線ってのはどう?」
「えっ!飛行機ですか?」
「苦手か?」
「いえ、高校の修学旅行以来なんでチョッと嬉しいです。」
「乗り物、好きだもんな。」
「はい。」
「男も含めて。(笑)」
「もう。(怒)」とフザケてるとLIVEが始まった。
トレードマークはサングラス。目が悪いってのもあり、サングラスを外すのはパンツを脱ぐのと同じ位に恥ずかしいらしい。
1曲目が終わり、のっけからトークが快調だ。
途中、ものまねが入る。「♪果てしない大空と… 」
お喋りもそっくりで、本人がラジオから聴こえてきたものまねの声に
「これ、いつ録音したやつだっけ?」って、間違えた事もあるらしい。
そんな楽しい時間はあれよあれよと言う間に過ぎてしまい、アンコールで心揺さぶられ終了した。
横を見ると真由美が涙を拭っている。
「どうしたの?」
「だって、何か感動しちゃったんですもん。」
「そんなに良かった?(笑)」
「えぇ。この前のとはまた違って、話しに笑ったかと思うと引き込まれちゃったりして、歌でしんみりしちゃって。何か泣かされちゃいます。(嬉)」
「気に入ってくれたんなら良かった。」
「何でこんな凄い人が売れないんですか?」
「さぁね。それが解ればとっくに全国区で、こんな間近で観させて貰えてないよ。(笑)」
「師匠は何でこの人を知ったんですか?」
「昔、テレビで不定期のドラマをやっていてな。そのエンディングで聴いたのがきっかけなんだ。」
「へぇ~、師匠もドラマとか観てたんですか?」
「観てたよ。しかも学園モノで生徒役がジャ〇ーズ(笑)」
「誰ですか?」
「確か、〇沢… 何だっけ?」
「えっ!〇沢君。光G◌NJIの?」
「そうそう。それが前に居たグループで出てたんだよ。(笑)」
「へぇ~、そんなドラマがあったんですか。」
「単発物だから、チョッとしかやらなかったんだけどな。(笑)」
「そのチョッとを見逃さないって所が師匠なんです。(笑)」
なんて喋ってると、CDを買ってくれた人にサインをするってので、俺は持ってるんで真由美の分を買う事にした。
順番が来て近寄ると、俺の顔を見て「オゥ、いつもありがとうな。」って、声をかけてくれる。
「いえいえ、こっちこそありがとうございます。」
なんて、挨拶をして「この子、初めて来たんで良かったら握手してやって下さいよ。」と、お願いする。
真由美は緊張しながらも握手して貰い
「初めて観たんですけど、感動しました。ファンになっちゃいました。♡」と話し掛ける。
「なってよ、なってよ。(笑)大歓迎だから、これからもヨロシクね。」なんて返され、会場をあとにした。
「師匠。顔覚えて貰ってるんですね。」
「そりゃ、この規模の箱で女のファンが多い中、数少ない男のファンで何度も来てたら覚えてもくれるよ。(笑)」
「それにしたって、気軽にお喋りされて… 私、歌手の人とお喋りするのなんて初めてで、緊張しました。(笑)」
「でも、ちゃんと喋ってたし、歓迎されてたじゃん。」
「何か嬉しくなっちゃいました。♡」
「良い人だろ?」
「はい。とっても素敵な方でした。」
「でも、全国区じゃないんだ。(悲)」
「何故なんでしょうね?勿体ないです。」
「なぁ。歌も上手くなくて、喋りも出来ないようなのが全国区なのに、何でこういうホントに実力のある人が世に知られないのかが不思議だよ。まぁ、逆に言えば知らない奴らは損をしてるよな。(笑)」
「私は得をさせて貰いました。♡」
新宿。今日はライブハウスを出て直ぐの所にうどん屋さんがあったので、そこで食事を済ませて来た。
ゴールデン街のいつもの店へ向かう。
顔を覗かせると、「あら、いらっしゃい。この前はゴメンだったわね。相席でイイ?」
と、テーブルに居たカップルの向かいに座らされる。
「お邪魔します。」 「どうぞ。」 と、座らせてもらう。
「師匠。今日、ライブハウスに師匠を入れて男の人って7人だったじゃないですか。いつもあんな感じなんですか?」
「そうだな。昔っからだけど、女のファンが多いんだよな。(笑)」
「まぁ、確かに惹きつけられましたけど。(笑)」
「今はガタイもよくなって、あんな感じだけど、昔は細くってキャーキャー言われてたんだよ。」
「へぇ~、そんな感じだったんですか。」
「今日は男の客が7人だったけど、そのウチの2人はプロレスラーだったからね。」
「えっ!そうなんですか?」
「あぁ。一人はマスクマンなんだけど、もう一人はその弟分。」
「タイ○ーマスク?」
「そこまで有名じゃ無いけど、ハ〇○サって選手さ。時間ががある時はLIVEを観に来て、朝まで打ち上げらしいよ。(笑)」
「うわぁ、何か飲みそう。(笑)」
なんて喋ってると、向かいの客が聞いてくる。
「スミマセン。ハ〇○サって聞こえたもんで。」
「えっ、何か?」
「僕。プロレスファンなんですけど、お知り合いなんですか?」
「いえいえ。僕が好きなアーティストさんの友達で、今日はこっちでLIVEがあったんですけど、そこへ来てたんですよ。」
「マスクは?」
「まぁ、プライベートですからね。」
「へぇ~、素顔を知ってるんだ。凄いな。(笑)」
「別に凄くは無いですけど。たまたま今日は顔を覗かされたんで、お見かけしただけですよ。」
と、横の彼女が「ハ〇○サって、あの空中殺法の人?」って、彼氏に聞いている。(笑)
ママが、「今日もLIVEだったの?」と聞いてくる。
「あぁ、今日はマイナーな人のだけどね。江古田であったんだよ。」
「あら、そうだったの?意外に近いわね。(笑)」
「まぁ、それもだし、今回は出張もこっちだったから早めに来たんだけどね。(笑)」
「今日は土曜だから、前乗りの前張りね。(笑)」
「前張りはココ。(笑)」って、真由美の股間を指さす。
「何で私にフルんですか? 私はモザイクです。(笑)」 と返してくる。
「これは、失礼しました。(笑)」なんて笑ってると、土曜なので飲みに出てる客も多く、チョコチョコ店を覗いて行く人もいる。
小一時間程居ただろうか、前回紹介された店も行きたいので聞いてみる。
「ママ、ごめんよ。この前に紹介して貰った店もチョッと覗いて帰りたいし、行けるかな?」
「何処だったっけ?」
「この先の紫の看板の所。」
「分かった。聞いてみるね。」と、電話をしてくれる。
「大丈夫だって。」と、返事が来たので、お勘定をして店を出た。
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