突然、隣に座っていた女性が「お兄さん、凄いですね。」と、声を掛けてくる。
「えっ、何がですか?」
「お2人のお話が聞こえてたんですけど、彼女が言うように店のチョイスから値段なんかまで考えるの、早いですね。(笑)」
「お姉さんも思いますよね。」
「いや、適当に思いつきで… 」
「私、聞いていて、なる程なぁって思いましたよ。最後に支払いが簡単に出来るのまで考えてるってのがイイですね。(笑)」
「でしょ。私の師匠なんです。♡」
「そうなの?(笑)」
なんて、袖触れ合うも何かの縁ってやつで、会話がはずむ。って言うか、俺そっちのけで2人が仲良くなって盛り上がってる。
俺はチョッとトイレって事で席を外す。
「…に拭いてたんですって。」
「アッハッハー。何それ~、面白い。」
トイレから戻ると、ママも一緒になって3人で大笑いしている。
「お師匠さん、面白いのね。(笑)」って、ママが声をかけて来る。
「何々?真由美。お前何か喋ったのか?」
「廊下往復50回です。(笑)」
隣の女性が笑いながら「お兄さん、天才ね。」と言ってくる。
「間違ってはいないっしょ。(笑)」
「にしても、横になんて思いつかないわよねぇ。普通。(笑)」
「他にないの?」
「えっ、議員さんにチ〇コ硬いか知らねぇけどって言ったとか?(笑)」
「コラ、真由美。」
「だって、市会議員さんが県会議員になれた話なんですもん。(笑)」
「えっ?何々。聞かせてよ。」と、女性が聞く。
「師匠~。イイでしょ。」
「まぁ、それ位ならな。」と、俺は水割りを注文して飲んでるが、蚊帳の外。真由美が藤田さんとの話をしている。
一頻り話しを聞いて、女性が
「はぁ~、そりゃお師匠さんって言いたくなるわ。」
って言ってると、ママが「ゴメンねぇ。残念だけど、時間なの。」と、1時を過ぎて閉店時間になったのを告げる。
お会計を済ませ、「ありがとうね。また寄ってね。」と声を掛けてくれる。
「また寄らせてもらいま~す。」と店を出ようとすると、 女性が「ありがとね。楽しかったわ。私はいつもこの辺りで飲んでるから、また出会えたらね~。」と、手を振って見送ってくれた。
再び歌舞伎町へ向いて歩きながら話す。
「師匠~、楽しいですね。(笑)」
「そうか?(笑)」
「師匠はいつも旅とかLIVEとか行っては、こんな風に遊んでるんですか?」
「そうだな。飲み歩いてる事が多いな。(笑)」
「さっきのお姉さんなんかも、私がいなかったらお持ち帰り出来たかも知れなかったのに、残念でしたね。(笑)」
「無い無い。(笑)でも、一期一会ってやつで面白いだろ。それよりどうする。もうチョッと飲むか?寝るか?」
「私、疲れちゃったんで寝てもイイですか?」
「よし。じゃぁ、寝に行くか。」
いつもは大浴場で足を伸ばして風呂に入れるカプセルホテルなんだけど、今日は真由美と一緒なのでホテルを予約しておいた。
部屋へ入るなり、真由美が
「師匠。ゴメンなさい。私、眠気の限界~。おやすみなさい。♡」と、ほっぺにChu!っとしてベッドに倒れ込んだ。
(まぁ、LIVEでテンションが上がり、酒場ではしゃいだんだから眠くもなるな。)
「真由美、寝る前に着替えだけでもしとけよ。」と、部屋着を渡す。
「は~い。」と、何とか身を起こして着替えだけはして、夢の中へと向かったようだ。
俺はもうチョッと飲み足りないなと思ったので、部屋を抜け出し再び眠らぬ街に出掛けて行った。
翌日。ホテルを出て、朝昼兼用でサラリーマンに人気だという新橋の定食屋さんで食事を摂り、某テレビ局に向かう。
真由美が何か珍しい所とかがあるのなら見たいと言うので、テレビの収録現場の見学に行くのだ。
ホントは東京にいるバイク仲間が使っているカスタムのお店(数人の芸能人も御用達らしい。)へ行き、カスタムメイドの作業現場を見学させて貰おうと思ってたのだが、週末でショップの方が忙しく、作業はしないとの事だったので諦めた。
そこで、親戚のオジさんの友達にテレビ局のプロデューサーがいて、見学させてくれるというのでお願いしておいたのだ。
先ずは受付へ。受付嬢にアポイントを伝えると、少ししてプロデューサーさんが迎えに来てくれた。
「君が修二君か。オジさんにはいつも世話になってるんだよ。(笑)」
「スミマセンね、無理を言いまして。」
「いや、なんのなんの。」なんて挨拶しながら入構の手続きをしてくれる。
「あまり相手してられなくて悪いんだけど、見学終わったら自由に帰ってくれたらイイからね。」
と、先ずは自分の担当する番組のスタジオへ連れて行ってくれる。
皆が「お疲れ様です!」と頭を下げてくる。
「今日は16時からの収録なんで、今はセッティング中なんだよ。」と、バラエティー番組の担当なんだと教えてくれる。
「へぇ~、そうなんですか?」そして別のスタジオへ…
「ココでこれから収録が始まるから、時間が許す限りいてくれてイイからね。あっ、あとコレ(入構証)ぶら下げてるから御飯まだなら食事やお茶していってくれても大丈夫だからね。有料だけど。(笑)」
「ありがとうございます。」
「ゴメンだけど、今から自分の方の準備しなくちゃイケないからココまでになるけど、ホントゆっくりしていってね。あと、オジさんにヨロシク言っといてよ。(笑)」と言いながら別れた。
「師匠。こんな所に入れるなんて凄いですね。」
「ツテがあって良かったな。(笑)」
「この収録って、あの番組ですよね。」
「入り口にそう書いてあったじゃん。」
「じゃぁ、あれに出てるタレントさんたち見れるんだ。(嬉)」
「だろうな。」なんて言ってると収録が始まるようで、司会のお笑い芸人、バラドル、ゲストの歌手、タレント達、アシスタントのアナウンサーが呼びこまれる。
俺達を含めスポンサー等が招待した人も居て、見学者は30人程だろうか。左右に分かれた真ん中を「お願いしま~す!」と挨拶しながら通り抜けて行く。
「師匠。こんな間近で… 」 真由美は有名人を目の当たりにして喜んでいる。
俺は、そんな事よりも画面で映ってる世界とは全く違う収録の雰囲気に、いくらバラエティーでお笑いだと言っても、皆仕事で真剣なもんだと関心して見てる。
お笑いタレントがニコニコしながら、フレームから外れた瞬間に真顔で台本を確認して、次に出て行くタイミングを間違えないように構えていたり、カメラが切り替わって自分が映ってない間に汗を拭いたり次の小道具の準備をしたり…
何といっても、カメラのフレームぎりぎりで、見切れないようにスタッフが次の段取りをして待ち構えてるのが面白い。
面白いと言うか、仕事なんだなと改めて思う。この現場全てをディレクターが指示して動かしてるんだから大したもんだ。
その上でこの番組を総括してるんだから、プロデューサーって凄いもんだなと思う。
収録が一旦止まり、セットの取り換えが始まる。
俺達はここで出ることにした。帰る時間を考えるとあまりゆっくりもしてられないが喫茶ルームで休憩を取る。
すぐそばに某アイドルグループの1人が座ってきて、スタッフと真剣な面持ちで何やら意見交換している。
(アイドルって言ったって、俺と歳はかわらないし普通に社会人だよな。)
「師匠。面白いもんですよね。」
「何が?」
「だって、画面に映ってる華やかさの裏を見たらベニヤ板が打ち付けてあるだけの簡素な作りとか、重たそうに見えてる柱が発泡スチロールで、女の子でも簡単に持ち運んでるなんて… 」
「そうだな。上手く出来てるよな。要は画面に映る仕上げさえ見栄え良く出来れば、裏がベニヤだろうが発泡スチロールだろうが、とにかく予算を抑えて時間を無駄にしないように、しかも出来るなら他の番組にも使い回しが出来るようにとか、全てが考えられた世界なんだよな。」
「最初はミーハーな気分で見てましたけど、イイお勉強になりました。(笑)」
「そう。それが大事なんだよ。俺が旅なんかしてるのもそう。写真や映像の情報だけでなく、実際に目の当たりにして体感してこそ解ることがあるから面白いんだ。それが、自分の財産になるんだよ。今日はイイ物見させて貰ったな。(笑)」
「ハイ。」
「じゃぁ、次は博多だぞ。(笑)」
「エッ!」
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