今日は何処とも忙しいだろうし店も延長してる所が多いみたいで、この時間になってもいつも来る客が来ない。
暫くするとお隣さんが帰るようでチェックして席を立ち、由美が見送りに出る。
「ありがとうございました~ 」 そしてこちらへ戻ってきた。
「ふぅ… 」
「お疲れ。何か飲む?」
「あっ、いえ。もう沢山頂いちゃって… 」
「まぁ、形だけでも。(笑)」
「じゃぁ、一杯だけ。」 と水割りを作り、改めて「お疲れさん。」とグラスを鳴らす。
「忙しかったろ?」
「はい。今日は忘年会なんかのお客さんが多くて… 」
「それに、ミニスカのサンタさんが居るんじゃ、来るわな。(笑)」
「どうです?♡(笑)」
「似合ってるよ。チョッと胸が苦しそうだけどな。(笑)」
「もう。♡」由美は少し胸が大きいので、身体のサイズで服を合わせると、どうしても胸元が強調されるようだ。
「クリスマス会どうでした?」
「ん?盛り上がってたよ。真由美ちゃんが居ないって残念がってた奴もいたしな。」
「ホントですかぁ?」
「うん。立ちションの真由美ちゃんってな。(笑)」
「アッハッハー、そんな事ありましたね。」
「そうそう。連れションして… で、連れ飲みでココへ初めて来たんだもんな。もう、あれから1年だよ。」
「ホントですね。(笑)」
「まさか1年経って、サンタさんになるとは思わなかったけどな。(笑)」
「プレゼントはありませんけどね。(笑) あっ、今年は何貰ったんですか?」
「あっ、そういえば開けてないや。」 と紙袋を開けて中を見た。
「あっ… ほら。」
「何々?」と由美が覗き込む。
「あっ… (笑)」中身は去年真由美が貰ったロンドン兵のサンタバージョンだった。
「いる?(笑)」
「いりま~せん。(笑)」
「なんか、こんなやりとり去年もしてたな。」
「ですね。(笑)」 と、加奈が来て
「修ちゃんゴメン。今日こんなんでタクシーが捕まり難くって。帰りチョッと待って貰わないとイケないかもよ。」と、言う。
「あぁ、別に構わないよ。」と答えると由美が加奈に耳打ちする。加奈が小さくOkサインを出しながら何か言っている。
「何?」って聞くと「チーフに送って貰うつもりだったんですけど、ママに師匠と同じ方向なんで、便乗させて貰って帰ってイイですか?って聞いたんです。」
「で、Okって。」
「他の女の子も送らないとイケないし、その方がありがたいですって。」
「そう。」
いくら加奈でも俺と真由美が深い関係だとは知らないので、(まぁ、知るつもりも無いだろうけど。)任せとくって感じで片手でゴメンとポーズをとる。
「師匠。」
「ん?」
「煙草って、よく出るもんなんですね。ココのお客さんだけで20~30カートンは持って帰ってるし、他の店の方も取りに来られたし、店の中でも10個以上は出てるし… 」
「ココだけでそれだけ出てるだろ。」
「はい。」
「でも、よく考えなよ。パチンコ屋や俺達なんかより国が一番ボロ儲けしてるんだから。」
「どういう事ですか?」
「煙草には税金が多く含まれている。」
「ですね。」
「まぁ、解り易いように仮に煙草の税金が100円だったとして、国民が1億人としても喫煙者が10%だと1千万人。それが一人平均1日1箱で年間幾ら?」
「エェ~っと、1千万の100の365日… 3650億円!」
「そう。ホントは100円なんて訳無いんだけどな。まぁ、喫煙者ってのはそれだけ吸わない人よりも税金を負担してるんだけど、それでもニコチンってのに依存してるって訳だ。」
「凄っ!」
「今でこそ禁煙だの何だのって言ってるが、昔はポイ捨てなんか当たり前だった。電車や新幹線の座席に灰皿が付いてたし、映画館でも座席で吸えた。車にしたって灰皿やシガーライターが付いている。国民を率先してニコチン中毒者に仕向けてたって事。」
「怖っ!」
「それだけ煙草ってのは吸う人の口と国の懐にとっては美味しい代物って訳さ。」
「そう考えたら凄いですね。」
「何が?」
「師匠がです。」
「何で?」
「だって、それだけ煙草が売れるって計算して、パチンコの常連さんを使ってパチンコ屋さんの儲けから少し頂いて。喫煙者とパチンコ客の依存性を利用してるんですから。」
「そうかな。」
「でも、何でママと2:1なんですか?折半でもイイような気もするんですけど。」
「加奈は煙草の販売と銘柄の出入り数を管理して俺に銘柄分けによる仕入れの指示をしなけりゃイケない。」
「はい。」
「俺は、指示された銘柄と数をパチンコ客に指示して回収してココへ持ち込む。」
「ですね。」
「でもな。これだけの煙草を保管するのには保管料ってものが必要になる。」
「なる程。つまり家賃みたいなものですね。」
「まぁ、簡単に言えばそんなとこかな。これだけ捌きがしやすくて預けて安心な所は無いからな。(笑)」
と話してるとチェンジで、今度は咲ちゃんが付きに来た。
「こんばんは。」
「忙しそうだったね。(笑)」
「お陰様で。♡」
「サンタさん可愛いね。」
「そう?似合ってます?」
「うん。咲ちゃんは背が高いからツリーでも似合うかもよ。(笑)」
「ツリーって。(怒) あっ、でも緑ってのもイイかも。(笑) で、さっき何処行ってたんですか?」
「あぁ、いつもの炉端だよ。」
「イイなぁ。」
「そう?(笑)」
「私、あそこの地鶏のガーリックステーキが大好きなんですよ。」
「あぁ、美味いよな。鶏も美味いし、あのカリカリのガーリックがイイんだよな。(笑)」
「あれとジャガイモの焼酎頂いちゃうと、もう幸せで。♡」
「咲ちゃん。ヨダレヨダレ… (笑)」
「あぁ。(笑)」なんて口を拭うゼスチャーをしておどける。
「由美ちゃん。可愛いですね。」
「そう?」
「可愛いですよ。今日だって、あの可愛い子誰?あの可愛い子誰?って、何回聞かれたか。(笑)」
「へぇ~。」
「修二さんが、由美ちゃん可愛がって連れて飲みに来るの解りますもん。」
「いや、あれは昔の加奈と一緒で、俺を面白がって付いて来るんだよ。(笑)」
「お弟子さんですもんね。(笑)」
「自称な。」
「いいえ、立派なお弟子さんです。ね、師匠。♡(笑)」
「またぁ、そういう事を言う。」
「修二さん。由美ちゃんってどんなお仕事されてるんですか?」
「ん?由美はね、兄ちゃんと同じで… まぁ、兄ちゃんは移動になったけど、顧客変更や商品の変更なんかに伴うレイアウト変更や規格の設計やデザインをしてる部署に居るんだよ。」
「そうなんだ。」
「同じ会社でも俺とは全くの畑違い。」
「なのに師匠。」
「夜遊びのな。(笑)」
そんな事を話してると、閉店も近付き客も減ったようで加奈が来た。
「修ちゃん。今日はゴメンだったわね。」
「いやいや、盛況でよかったんじゃない。(笑)」
「煙草も正月休み用にって買ってく人がいてね。」
「やっぱり… 」
「明日も由美ちゃんに入って貰うけど、来る?」
「いや、明日はお参りがあるから出れないな。」
「そうなの?」
「あっ、加奈。ペイントマーカーある?」
「あるけど。」
「チョッと貸して。」
「ハイ、どうぞ。」
「由美ちゃん呼んで。」
「何するの?」他の客の相手をしていた由美と咲ちゃんにチョッとだけ交代して貰う。
「由美。このボトルに俺の絵を描いてみて。」と、由美がササッと描いてみる。
「こんなんでイイですか?」
「あっ!上手い。(驚)」
「加奈。ハウスボトル。」と、持って来させる。
「これに、加奈の絵を描いてみて。」
サササッ… 「これでイイですか?」
「あぁ、ありがとう。」 そう言って、また咲ちゃんと交代して貰う。
「咲ちゃん、コレどう思う?」と、俺のボトルを見せる。
「あら、何か特徴捉えてて上手いですね。」
「これは?」と、ハウスボトルを見せる。
「あっ、ママだ。可愛い♡」
「由美ちゃん、こんな特技があるのね。」
「な。こんな事させるのも面白いかもよ。」
なんて話してると閉店時間になったようで、チェックの終わった客がタクシーが来たので帰って行く。
「ありがとうございました。」と、加奈と由美が見送りに出る。
もう少しお客さんが残ってるが、常連や慣れた客なので、グラスだけ残し店も片付けに入る。
少しして、「修ちゃん。車来たわよ。」と、声が掛かる。
店を出ると見送りに来た加奈が、「直ぐに由美ちゃんに下りて貰うから、下でチョッと待ってて。」と言って店に戻っていった。
下に行くとタクシーが待っているので、運転手に「F」の迎えか確認して、もう1人来るので少し待っててと伝える。
5分もしないウチに真由美が「お待たせしました。」と、下りて来た。
取敢えず車に乗り込み走り出す。行き先は真由美のアパート近くのバス停経由、俺の家。
「えらく早かったね。」
「ママが、明日も来てくれるんだから、そのまま着て帰ってイイわよって… 」と、少しコートを開けて見せる。
店で着ていたサンタの衣装のままだ。
「そりゃ、早いな。(笑)」
「明日は来れないんですか?」
「あぁ、明日はお参りがあって、後座ってのがあるからそっちの付き合いさ。」
「残念です。」
「真由美。」
「はい。」
「チョッと早いけど、クリスマスプレゼントだ。」と言って、笑いながらさっき見せた紙袋を渡そうとする。
「いりま~せん。(笑)」
「まぁまぁ、そう言わずに。」
「だって、サンタさんでしょ。」 強引に渡すと、少し違うのに気付く。
「あれ?」 そう言って中を覗く。中には小さな箱。そう、中身を入れ替えておいたのだ。
「何々?見てもイイですか。」
「あぁ、イイよ。」 真由美が箱を開け、こっちを見る。
「イイんですか?」
「あぁ。」
「ありがとうございます。♡ じゃぁ、付けて下さい。」 といってコートを開けて背中を向ける。
そう、チョッとしたネックレスを用意しておいたのだ。
「どうです?」 と、こっちを向く。
「うん。似合ってるよ。(笑)」 そう言ってると、最初の到着地に着いた。
真由美が「師匠。プレゼントありがとうございます。じゃぁ、おやすみなさい。♡」と、帰って行った。
悪戯で、コートのポケットにあのサンタさんを忍ばせておいたけど、後で笑ってくれるかな?(笑)
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