12月。前年に盛り上がったって事で、忘年会とは別にまたクリスマス会が催されることになった。
忘年会は部署毎だが、このクリスマス会は若手が部署の垣根を越えて集まれるので今年は人数も増えた。
ただ、真由美はいない。
本当は参加したかったのだが、加奈からの頼みで「F」にヘルプで入って欲しいと頼まれていた日と被ってしまったのだ。
1次会でプレゼント交換をして2次会のカラオケへ… 今回は予約を入れておいたので、大き目の部屋が用意されている。
俺はカラオケ屋で飲みながら( そういえば、真由美とまともに喋り始めたのは1年前のカラオケからだったなぁ。あの時は、まさか今みたいな関係になるなんて思ってもなかったのにな… )なんて思い返していた。
延長するか3次会行くかなんて相談をしている。(22時半かぁ… まだ電車もあるしと、)皆には帰るって事で離れさせて貰った。
電車に揺られて向かう先は… 「F」。
駅を出ると、いつもは薄暗いロータリーがクリスマスの飾り付けで煌びやかだ。
歩いていても忘年会だクリスマスだと街全体が浮かれてるのが感じ取れる。
ビルに入ったら何処の店からか、カラオケでクリスマスソングを歌ってるのが漏れ聞こえて来る。
ガチャッ… (うわっ!満席。) 加奈が手を合わせて慌てて出て来る。
「修ちゃん、ゴメン。」
「いや、忙しくて結構じゃない。また後で来るよ。(笑)」
「何処?」
「飯。」
大体こういう時は何処かで時間を潰すのだけど、「チョッと。」って言うと、何処の店に行くか解らないのだが、「飯。」って言うと、高校時代の先輩がやってる炉端屋さんに行くのが定番になっていて、席が空くと連絡が来るようになっている。
ガラガラ… 「いらっしゃい。おう!修二。久しぶりだな。」
「毎度です。(笑)」
「今日は何処も多いだろ?」
「そうっすね。」
「何にする?」
「アレ、あります?」
「あるよ。」
「じゃぁ、それと何か適当に炙ってくださいよ。」
「あいよ。」
ここではいつも芋焼酎を飲みながら先輩のお任せで適当に肴を出して貰う。
ただ、芋といってもジャガイモの焼酎だ。
北海道へ行った時に初めて飲んだのだが、スッキリと飲みやすく美味かったので土産に買って来て先輩にも飲ませたら、気に入ってくれて、自分で取り寄せて店に出すようになったのだ。
「やっぱり美味いっすね。(笑)」
「酒?肴?」
「両方っすよ。」 なんて笑いながら小一時間程すると、加奈から連絡が入って来た。
「じゃぁ、先輩。ご馳走様。」
「おう!ありがとな。まだ来るか解らねぇけど、一応よいお年をな。(笑)」なんて送り出される。
ガチャッ… 「いらっしゃい。」 席が空いたと言ってもBOXは満席、カウンターも鈴なり状態だ。
カウンターの中程に空いた2席の1つに座る。
「修二さん。ゴメンなさいね。」と、女の子がお絞りを出してくれる。
「何。今日は皆サンタさんか?(笑)」
「そうなんですよ。チーフだけトナカイですけどね。(笑)」
チーフを見ると、薄茶色の衣装に角の付いたカチューシャをしている。
「似合わねぇな。(笑)」
「可愛いでしょ。(笑) 今日はあまり付いてられませんけど、こんなんで… 」 と、水割りを1杯作って出してくれる。
「そりゃ、しょうがないよ。俺は水と氷さえ置いてくれたら勝手にやってるからさ。(笑)」
店の様子を見渡す。 真由… いや、由美もそれなりに頑張ってるようだ。
一瞬だけこちらをチラッと見て、目を見開いて忙しいって表情を見せ、また客の対応をしている。
加奈が後ろを通る時に
「今月、4越えるわよ。」と言って通り過ぎた。
4000か、在庫を考えると年明けはまた仕入れを多めに頼まないとイケないなぁ…
なんて考えながら飲んでると、帰る客が袋に煙草をいくつか入れて持って帰る。(正月休み用に1~2カートン持って帰るのかな?)
1時を過ぎて、少し店も落ち着いてきた感じになってきた。由美が俺と隣の2人組の客の対応を任され、付きに来た。
「お疲れ~。」
「ありがとうございます。」 と、隣の客が煙草を咥えると由美が火を点ける。由美を初めて見る客だ。
「一杯どう?」
「ありがとうございます。頂きます。」と言ってグラスを持ってくる。
「初めて見るね。名前は?」
「由美です。」お隣さんは初めての女の子に興味津々だ。
由美は俺の方を気にするが、俺は構わないからどうぞって感じで隣の対応に中心を置くように素振りする。
「由美ちゃん。歌上手いねぇ… 」 なんて会話をしている。どうやら歌わさせられるような感じだ。
由美がマイクを持って歌い出す。ハイトーンのロングブレスでも平気で歌いこなす。
酒を飲んでいてよくこれだけ声が出るもんだといつも関心してしまう。(笑)
と、加奈が酒を作りにきて、「由美ちゃん、ホントに来て欲しいんだけど。」 と言う。
「さぁ?それは俺の知った事じゃねぇけど。平日なら会社の連中も飲み歩かねぇだろうから大丈夫なんじゃねぇかな。週末は飲み歩いてる奴も居るだろうし、顔が差しちゃマズいだろうけど。」
「相談してもイイ?」
「どうぞご自由に。(笑)」
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