「師匠。」
「ん?」
「裏で少し見たんですけど、凄い数の煙草ですね。」
「まぁ、今日は出た後だから少ない方だけどな。」
「一ヶ月、3000とかって言われてましたけど、問屋さんでも無いのにどうやって仕入れるんですか?」
「知りたい?」
「危ないんですか?」
「危なくは無いよ。(笑)」
「じゃぁ、危うい?」
「かもな… (笑)」
「怖いような… 」
「じゃぁ、やめとくか?」
「いえ、聞きたいです。」
「ここへ来る前に寄り道したろ。」
「パチンコ屋さん?」
「そう。実はあそこが仕入れ先なんだよ。」
「へぇ~。でも何でですか?」
「パチンコってのはな、負けたらそれだけなんだけど、勝ったら手数料分は取られるけど玉を特殊景品ってのに交換して、その景品を買い取って貰うと現金化されるんだ。」
「はい。」
「けど、一般の景品だと特殊景品と違って手数料無しで品物と交換してくれるんだ。」
「へぇ~。」
「で、特殊景品にすると200円分の玉数で、同じ玉数なのに一般景品にすると270円の煙草をくれる訳だ。さて、幾らお得?」
「70円ですね。」
「だったら煙草に交換するだろ?」
「ですね。」
「でも、パチンコ屋も商品ばかりにされると品数が足りなくなるので、今だと一人1日5カートンまでって所が多いんだよ。」
「なる程。」
「けど、自分だけじゃ、そんなにしょっちゅう勝てる訳じゃ無いよな。」
「はい。」
「じゃぁ、どうする?」
「誰かに分けて貰う。」
「だけど、そんなに気前の良い奴なんていないよな。」
「まぁ。」
「だったら、その煙草を20円上乗せで買うって言ったら… 」
「売ります。200円が220円ですもんね。」
「1カートンで?」
「10個だから、200円の儲け。」
「さぁ、そこでだ。パチンコ屋には常連客がいて、毎日入り浸ってる人が居るんだよ。パチンコ中毒って言う奴もいる程だ。」
「はい。」
「その人達に「1日交換出来るのが5カートン、1週間で4日分以上の20カートン以上なら買い取りします。」って条件で約束したら、売る方は幾らお得?」
「20円上乗せだから1カートンで200円浮いて20だから最低でも4000円。」
「一ヶ月で?」
「4000の4週間として、16000円の得。」
「そうだな。それを10人以上の常連客に頼んでおいたら一ヶ月が4週間として、集まる煙草の数は… 」
「20の10の4だから800カートン」
「でも、一人で20カートンをそんなに上手く数を揃えられない時もある。」
「ですね。」
「そんな時は、常連仲間でやり取りしたり、翌週に回したりして、揃えてくれる。」
「なる程。」
「そう。それを4店舗で集めれば… 」
「3200!」
「そう。最低でそれだけ集められるんだよ。」
「はぁ~。」
「まぁ、とにかく220円の煙草を最低でも3200カートンは確保出来るって訳だ。」
「ですね。」
「だから、さっき煙草を仕入れてくれる常連の1人に、皆にコーヒーでもってことで千円預けておいたのさ。」
「なる程~。」
「で、その前に道で出会ったのもパチンコの常連客で、あんな事を言っても冗談として笑ってくれてるような人なの。(笑)」
「そうだったんですか。」
「そういう事。だから仕事先の人。(笑)」
「さて、ココからがこの商売の真髄だ。」
「はい。」
「真由美も既に俺の一言で脳が勘違いを起こしてるけど、この商売はパチンコ独特の換金方法と、勘違いと言うか、感覚麻痺を利用したものなんだ。」
「えっ、どういう事ですか?」
「皆な、現金化される特殊景品のレートで計算をしてしまうようになってるんだよ。(笑)」
「えっ?」
「考えてみな。通常の景品として270円で煙草を貰っただけなのに、頭の中では200円で貰えたと勘違いしてる。その270円の煙草を50円も安い220円で買い取られてるのに、20円得をしてるって風に感覚が麻痺してるのさ。パチンコをしてない真由美でさえ、俺が「幾らお得?」って言った一言で勘違いしてるだろ?」
「うわっ、ホントだ。」
「それに俺がやってるのはパチンコ屋のからくりを利用して、パチンコ屋の儲けを抜き取ってる商売なんだ。」
「えっ、どういう事ですか?」
「一般景品の煙草だと270円のはずが、現金化する為に特殊景品にすると200円にしかならない。つまり100円に対して35円の手数料を取られてるって事だ。」
「確かにそうですね。」
「でも、賭け事をしてる人間ってのはどうしても、お金で勝ち負けを勘定してしまうんだ。」
「そうですね。競馬や競輪なんかも勝った負けたはお金ですもんね。」
「だから、135円が100円になっても現金化して計算するんだよ。」
「へぇ… 」
「例えば、パチンコで1万円使って勝ったとしよう。出た玉を特殊景品にして、それをを買い取りして貰ったら2万円ありました。さて、幾らの勝ち?」
「1万円。」
「違うよな。100円で35円の手数料を取られてるんだから、実際は?」
「あっ、13500円だ!」
「だけど、皆は1万円の勝ちだと喜んでいる。3万勝ったと喜んでる時には1万円を越える儲けを手数料として取られてるのにだ… 」
「じゃ、10万勝ったと喜んでる人は実は35000円も取られている。」
「そう。一応、景品にして買い取りをするって手順があるんだけど、とにかくパチンコ屋は特殊景品を使い回してるだけなのに、客が現金化してくれるだけで手数料がどんどん転がり込んでくるんだ。」
「凄っ!」
「玉を貸すのに玉貸し料。客が負ける分。特殊景品を現金化するのに手数料。と、金が入ってくる仕組みなんだよ。」
「 上手く出来てますね。」
「そこで、1店舗最低800カートン。1カートンが700円で56万円。特殊景品で現金化するとパチンコ屋の儲けなんだけど、少なくてもそれだけは一般景品の煙草にして俺が抜き取らさせてもらってるんだ。」
「56万の4件で、2240000円! 最低で… 」
「そう。それを、パチンコ屋の常連。加奈と俺。煙草を買う客で分配してるって仕組み。」
と、裏稼業の流れを説明してると加奈が戻って来た。
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