真由美ちゃんが加奈に聞く。
「師匠って、やっぱり成績優秀でした?」
「そうねぇ。中学の時はいつも10番以内だったわね。(笑)」
「10人中な。(笑)」
「バカね。ウチは8クラスあったから330人ほどよ。」
「凄っ!」
「凄くないわよ。10番って言っても下からなんだから。(笑)」
「エッ。師匠、嘘ですよね。(驚)」
「ホントだよ。」
「だって、修ちゃんって興味のある事にしか目を向けないから、英語や国語なんて、からっきし… テストは白紙が多かったからよく怒られてたもんね。」
「まぁ、体育はそこそこよかったぞ。(笑)」
「じゃぁ、ママさんは?」
「加奈の成績は知らないなぁ。」
「私は中の下、位だったかな。(笑) でね。学校で知能指数(IQ)のテストがあったのよ。そしたら修ちゃんIQが135 」
「135!(驚)と、東大生以上… 」
「そう。先生が首を捻ってたもの。」
「まぁ、あれだな。修二の場合は勉強と勉学は別物ってやつだな。(笑)」
「師匠って、中学時代はどんな感じだったんですか?」
「俺こそ兄ちゃんと違って、いたって普通のサッカー少年だったな。(笑)」
「そうなんですかぁ。(疑)ママさん?」
「そうね。まぁ、夏休みの間、夜に学校のプールに忍び込んで皆と泳いでたとか、部室で酒盛りしてたくらいよね。(笑)」
「酒盛りって… 」
「あぁ、そうそう。2年になって直ぐだったわね。」
「何かあったんですか?(嬉)」
「何でだったかなぁ?多分、修ちゃんが先輩に何かしたんだと思うけど、3年で1番ワルだった人が教室で喋ってた修ちゃんの所にやってきて、締め上げようとしたんでしょうね。「チョッと立てや。」って言ってね。(笑)」
「俺は素直に立っただけ。(笑)」
「そう。立った瞬間にその3年生がひっくり返っちゃって。修ちゃんが「先輩、やめときましょうよ。」ってね。その一言で、学校中のワルぶってた奴らから一目置かれてたってのはあったな。」
「師匠って、何か格闘技されてたんですか?」
「何にもしてないよ。」
「じゃぁ、どうやって… 」
「だから、ただ立っただけ。あっ!真ん中の足じゃ無いぞ。(笑)」
「嘘だぁ。(疑)」
「ホントだよ。」
「真由美ちゃん。修二はそういう所もチョッとアレなんだよ。」(笑)
「アレって何ですか?」
「 俺なんかは腕っぷしだけなんだけどさ、コイツのはチョッと違うんだよ。」
「えっ、どういう風にですか?」
「修二には何かコツみたいな物があるらしくてな。一度会社のBBQの時に喧嘩で負けた事が無いって豪語してた奴が、何かのきっかけで他のやつと殴り合いになったんだよ。」
「会社のBBQでですか。」
「そう。それでチョッと騒ぎになるわな。」
「はい。」
「そしたら、その瞬間にそいつを押さえこんじまって「楽しく飲もうぜ。」って言ったら、素直に謝ってたもんな。(笑)」
「だってシラケるじゃん。(笑)」
「で、その暴れた奴が「俺、身動き取れなくなったけど、何て力してんの?」って不思議がってたもんな。(笑)」
「力なんていらないよ。要領とコツってやつさ。(笑)」
「真由美ちゃん、修二は笑ってでも人を殺しかねないよ。(笑)」
「怖~い。♡」
「笑いながら… って、俺は竹中直人か!(笑)」
真由美ちゃんが聞く。
「ママさん。さっきから気になってたんですけど… 」
「何?」
「お店に入ってから何回か別の店の方が来られて白い袋持って帰られてますよね。」
「あぁ、あれね。修ちゃん、イイでしょ?」
「ココへ来てりゃいずれ解るし。ま、イイか。」
「何ですか?」
「あれが、修ちゃんのお小遣いの元。」
「へぇ~、何なんです?」
「煙草よ。(笑)」
「煙草?危ないやつですか?」
「そんな訳ないだろ。いたって普通の煙草です。(笑)」
「師匠、裏稼業って煙草屋さんなんですか?」
「そうだよ。」
「何で煙草屋さんが裏なんです?」
「う~んとね… 面倒くさいや。加奈。」
「何処まで?」
「俺の取り分くらいかな… 」そう言って、俺は兄ちゃんとの話に花を咲かせる…
「ママさん。裏って、やっぱり 危ないんじゃ… 」
「危なくはないわよ。危ういけどね。(笑)」
「危うい?」
「真由美ちゃんは煙草は吸わないのね。」
「はい。」
「煙草っていくらか解る?」
「えぇ~っと、前にニュースでありましたね。値上がりで買い占めがとかって… 250円だったかな?」
「うん、前はね。今は大体270円なの。」
「270円…」
「普通は煙草屋さんでも自販機でもコンビニでも270円なの。」
「まぁ、そうですよね。」
「でも、ウチは250円。」
「250円? 20円安いんですか。」
「煙草は税金がかなりあるから値引きなんてしないんだけど、ウチは250円なの。買う?」
「買いますよね。」
「1カートンが10個だから… 」
「2700円が2500円。うん、買います。」
「でもね、その安い煙草を仕入れないといけないでしょ。」
「はい。」
「さぁ、どうやって?」
「えぇ~っと、煙草屋さんが卸値で仕入れても270円なのに250円で売れる卸屋さんてあるんですか?」
「あったら、皆買うでしょ。(笑)」
「ですよね。じゃぁ、どうやって?」
「それは、また貴女の師匠に聞いてみて。(笑)」
「えぇ~っ、気になる~。」
「ウチの仕入れ値は220円。」
「220!! あっ。でも、250円の220円だから、30の… 300円か。」
「さぁ、計算よ。(笑)」
「はい。」
「まぁ、細かい事は抜きに、大まかな概算よ。」
「はい。」
「ここのビルだけで20。この辺りには駅裏も入れると70以上の夜の店があります。1つ2つ向こうの駅からも買いに来てくれる店があって、少なく見て50件がウチの煙草を買ってくれます。」
「安いですもんね。」
「店の女の子で吸うのが平均3人なら、1日1箱を吸うとして10日で?」
「30だから、3カートン。」
「それが、一ヶ月30日だから3倍で9カートン。もうチョッと吸うから少なく見ても10カートン。」
「×50件で500。」
「そう。で、お客さんがお店で煙草が切れて買うのが1日平均10個だとしたら、一ヶ月で… 」
「休みがあっても25日程でしょうし、1日1カートン、ひと月25カートン×50で… 1250。」
「でもね。ウチから出た煙草がヨソの店で通常の270円で出されてるか、サービスとして250円で出されてるかは、買ってくれた人の自由だから知らないわよ。ただね、250円で出してる店に飲みに来たら、270円の煙草が250円。1カートン2500円で買えると知ったら… 」
「欲しくなりますよね。」
「でしょ。で、全部の店が250円にしてる場合よ。お店で譲ってくれなんて人もいて、1件がひと月平均10カートン分けてたら… 」
「500。」
「全部で?」
「500の1250の500で2250!」
「そう、それが最低ラインで、大体で2500~3000。多いなぁって時は3500、それ以上出るなんて時もあるの。」
「2500×の300円だから75万!凄っ。」
「で、ウチはストックと捌き。修ちゃんは仕入れ。取り分は2:1」
「75万だから… 25万!多かったら30!(驚)」
「そうなるわね。(笑)」
「お・お・お・お小遣いじゃ無いです。」
「修ちゃんは、だ・か・ら… 」
「裏稼業!」
「お小遣いは別で、アナタ達の会社とか。(笑)」
「えっ?」
「会社で煙草を吸う人はどれ位?」
「60~70人位は居るのかなぁ?」
「だとして、250円で煙草が買えるとしたら?」
「買います。」
「まぁ、半分として30人が修ちゃんから買うと。1人が1日平均1箱で30日だったら、3カートン。」
「はい。」
「で、30人だったら?」
「30人×の3の300で… 27000円。」
「まぁ、もう少しあるだろうから3万円ってとこかしら。」
「ですね。」
「でも、ウチは全く絡んで無いから… 」
「丸々3万円。」
「そう、会社でそれだけはあるのよ。」
「そうかぁ… あっ!だから前に師匠が皆が喜んでくれてるって言ってたんだ。」
「そうね。でも、会社がそんな商売をしてるって知ったら… 」
「ダメ… 」
「ってなるわよね。」
「まぁ… 」
「でも、会社でも煙草を吸ってるのは雇われてる人だけじゃ無く… 」
「経営者側の人達も吸ってる… 」
「そう。それに、皆からは安く煙草が買えるって、喜ばれてるんなら… 」
「目を瞑ろうか… 」
「って事よね。(笑)」
「はぁ~、やっぱり、師匠って凄いです。(驚)」
「でも、ホントに凄いのは… まぁ、修ちゃんがこの辺までって言ってたから、今はココまでにしときましょ。(笑)」
「えぇ~っ、聞きたいなぁ… (悲)」
「師匠。凄いです~!」
「何が?」
「裏稼業!」
「真由美ちゃん。修二の稼ぎを聞いてビックリしただろ?(笑)」
「係長、師匠って何者なんですか?」
「ん?修二かい。修二はいたって普通の会社員。(笑)」
「でも、どうやってそんな数の煙草を… ?」
「そこら辺を知ると、コイツの凄さがもっと解るさ。(笑)」
「別に凄くは無いでしょ。(笑)」
「し・し・し・知ってみたいような、怖いような… 」
「何で怖いんだよ?」
「だって、ママさんが危ういって… 」
「まぁまぁ、お腹いっぱいになるから今日はこの辺にしときましょ。(笑)」
「でさ、俺達はこんなんだけど、真由美ちゃんはどうだったの?高卒?大卒?」
「ん?真由美ちゃんは短大だったよな。」
「はい。中途半端な短大です。(笑)」
「いやいや、中途半端なんて事はないけど。子供の頃はどんな感じだったの?」
「本当に、いたって普通でしたよ。(笑)」
「(全員で)本当に?(疑)」
「両親が親戚の料理屋で働いてるんで、小学校の時は鍵っ子でしたし、中学校はちゃんとヘルメット被って通ってました。(笑)高校ではバンドしてましたけど… ホント普通でした。」
「ふ~ん、バンドか。ロック?ヘビメタ?もしかしてパンク?(笑)」
「何でですか、普通のガールズバンドです。(笑)」
「何してたの。ギター?」
「あっ、いえ。キーボードと… ボ、ボーカルを少々… (恥)」
「へぇ~、ボーカル。」
「そういやぁ、前にカラオケ行った時、上手かったもんな。」
「声も可愛かったし。♡」
「いやぁ、そんなこと無いです。(恥)」
「そうだ。歌おうぜ!」 と、カラオケを歌いながら夜も更けていった。
日も変わった頃、兄ちゃんも転勤の準備があるのでそろそろ帰ろうって事で、呼んで貰ったタクシーも到着したようで店を出る。
「ヒロさん。ありがとうございました。♡」
「帰った時は寄って下さいね。♡」と、見送られる。
「あぁ、ありがとうな。」
3人がちょうど同じ方向に帰るので1台に乗り込む。
「修二、イイのか?今日の。」
「あぁ、あれだ。まぁ、俺からの餞別だ。(笑)」
「俺が誘ったんだし、弟子(真由美ちゃん)の分くらいは出すよ。」
「いやいや、自分のはちゃんと払います。」
「いや、イイって。」
なんて喋ってると、兄ちゃんが
「なぁ、修二。転勤させろとまでは言わないが、お前にはまだ教えて貰わないとイケない事があるから、呼ぶからな。」
「まぁ、出張くらいならね。(笑)」
「真由美ちゃん。こんなオジさんに付き合ってくれて、今日はありがとうな。」
「いいえこちらこそ、楽しかったです。係長の事も聞けたし、師匠も出来たし。♡(笑)」
「ハハッ、師匠か。そうだな。ホントにイイ師匠を見付けたかも知れないぞ。(笑)」
「ハイ。(笑)それに「F」さんが何だか居心地良くって、一人でも通っちゃいそうです。(笑)」
そしてタクシーが兄ちゃんの家の近くを通りかかる。「運転手さん。ココで一人降りるよ。」と、タクシーを止める。
「御馳走さん。」 「あぁ、じゃぁな。」 と、手を振る兄ちゃんと別れタクシーが走り出す。
真由美ちゃんが、「修二さん… 」と、近寄りもたれかかって来る。
「ん?」
「いえ、師匠♡ 「F」さん、私も飲みに行ってイイですか?」
「そんなの俺に断らなくても行けばイイじゃん。(笑)」
「でも、何だか… 」
「何だったら、俺のボトル飲んでてもイイし、あれだ。真由美ちゃんの分くらいなら俺にツケといても構わないよ。(笑)」
「いいえ、そんなに甘えるなんて… 」
「だって、俺の裏を知っちまっただろ。」
「いやぁ、凄いです。」
「だから、「F」で真由美ちゃんが飲む分くらいは平気だって。(笑)」
「いいえ、それはダメです。それに… 」
「ん、それに?」
「真由美… ちゃんじゃ無くて、真由美って呼び捨てがイイです。」
「何で?」
「何か、ちゃんって付けられると他人行儀と言うか何と言うか、私は気兼ね無しに呼び捨てにされてる方がイイです。(笑)」
「そう?じゃ、じゃぁ、真由美。」
「はい。なんですか?(笑)」
「また、飲みに行くか?」
「ハイ。師匠。(嬉)」 「いや、だからその師匠ってのは… (笑)」
真由美ちゃん… いや、真由美のアパート近くの通りまでやって来た。
「師匠… 」
「ん?」
「ホ… ホントは部屋に寄って♡ って言いたいんですけど、チラかっちゃってるし恥ずかしいし… 」
「バ~カ(笑)」
「この前も今日も御馳走になっちゃって、今度は私が出しますから… 」
「イイよ。それより気をつけて帰りなよ。」
「ハイ。ありがとうございました。おやすみなさい。♡」って、ほっぺにChu!ってして帰っていった。
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