◯幻想
50代独り暮らしの直史は、夜な夜な性欲の昂りに身悶えている。
女を抱きたいが風俗に行く金は無い。年齢が年齢なだけにマッチングアプリでも相手にされず、鬱々とした気分でスマホでアダルト動画を鑑賞しながら自慰をして果てるのだが、毎日続くルーティンワークに虚しい。
そんな直史が妙案を思い付いたのは、ディスカウントストアで安くTENGAを入手した日の夜だった。
直史は意を決してお気に入りの抱き枕にカッタ
ーナイフで切り込みを入れ、そこに買ってきたTENGAを差し込む。
「これは…」
直史はパンツを下ろし、抱き枕を強く抱きしめながらTENGAに硬くなったペニスを押し当てる。すると抱き枕は直史を許容する様に、するりと直史のペニスを飲み込んだ。
「あっ…あふっ…」
直史は抱き枕を抱き締めてキスをしながら夢中になって腰を振る。すると前立腺から湧き出た衝動が睾丸を通じ、亀頭の先から大量精液となって抱き枕の中に放出される。
「あふんっ!あああっ!ああっ!」
直史は十数年ぶりの生中出しセックスの快楽に酔いしれる。
「ああっ…気持ちいいよぅ…」
直史のペニスは一回の射精では静まらず、二回、三回と休む事なく腰を振っては抱き枕の中に射精する。その間直史は抱き枕に語り掛け、抱き締め、何度もキスをした。そして射精が5回目に達したところで直史は尻を出したまま気を失い、枕を抱いたまま眠りについた。
すると直史は夢をみた。
「貴方は直史さんですか?」
直史が声の方に振り返ると、ストライプのワンピースを着た美女が優しい笑みをたたえている。
「私は直史さんの抱き枕です。抱いてくださってありがとうございました」
そういうと抱き枕はワンピースをストンと落とし、直史に美しい乳房を露出する。
「直史様の慰めに私の身体を好きに使ってください」
直史は大層興奮して抱き枕の乳房にむしゃぶり付いて押し倒すと無理矢理にペニスを抱き枕の秘部へ突き立てる。
「あ…ああん…直史様…」
抱き枕は赤らめた顔を恥ずかしそうに背ける。直史はそれを力ずくで自らの方へ向け、抱き枕の可憐な唇にベロベロと舌を捩じ込ませる。
「おおおおっ」
直史はパチンパチンと音が立つほど激しく腰を打ち据える。抱き枕の肉襞が直史のペニスに絡まり、直史は何度も射精する。
「抱き枕ーっ!」
直史は次第に抱き枕が愛しく思え、更には抱き枕は抱き枕ではないのではないか?という思考に駆られる。
もしかしたら抱き枕は抱き枕の姿の人間なのかも知れない…いや、抱き枕は抱き枕のままでも愛すべき存在なのかも知れない…
直史はニュルニュルとペニスを出し入れしながら逡巡し、枕を今まで以上に硬く抱きながら最後の射精をする。深く深く抱き枕の子宮の奥に届く様に…
「赤ちゃんできちゃう…」
「一緒に育てよう…」
直史の意識が深い闇に落ちたのは抱き枕とそんなピロートークをした直後だった。
直史の実家に連絡があったのはその数日後。
「◯◯署の者ですが、直史さんのご実家で宜しいですか?…」
現場に駆け付けた母親が見たのは、全裸で抱き枕のカバーに入った、変わり果てた直史の姿であった。
果たして直史は幸せだったのだろうか?
(この項目 了)
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