――――――。
半月が過ぎた。
お酒を飲んだ日の夜、たまたま翠が僕に手錠をかけるのを忘れた。
その隙に荷物を全て消して、家を出た。
理由は一つ。
舌が合わない。作ってくれる物の味が全て合わない。
味が濃いって感じて、毎回が苦痛…。
でも言えないから『美味しいよ』って言う。
これって僕の中で凄く大きくて、
これが全ての決定打になる。どれだけ憧れても惹かれても、これがダメならもうダメ…。
――――――夜中1時に京子へ電話をかけた。
呼び出し音…
「なに?」怒ってる
「あんな。」
「なに?切るで。」
「京子のご飯が食べたい。」
「は?今更何言うてんのん」
「俺は京子の作った飯がいい!!嘘ついて『美味しい』なんて相手に嘘ついて、自分にも嘘ついて、もうそんなん嫌!!俺は京子のご飯が食べたい!京子の隣で!!ほんまに美味しい物を一緒に食べて『ほんまの美味しいね』が言いたい!!ごめんなさい!俺にご飯作ってください。俺と京子でまたご飯食べさせてください。お願いします!!」
「知らんわ。うち来て言いや。」少し泣いてた。
そして切られた。
僕は即、京子の家へ。
――――――鍵が開いてる。
入ると、京子がご飯作ってる。こんな時間に。
「手洗って、そこ座り。今作ってるから。さすがに早すぎるわ。まだ火も入れてない。あたしの傍座ってうだうだ話してて。」鼻声で俺に話しかける。
「うん。手ぇ洗ってくるね。」
「うん。なんも変わってへんから。」
「え?」
「脱衣所の話。」
「あ、うん、」
「ほんまにアホな男。」
「なんか言うた?」
「『手ぇ洗ってきい』って言うた」
「はぁい。」
「洗った!」
「食器とスプーン出して待ってて。2人分な。」
「わかった。」
僕は用意して、
京子の後ろに行って、抱きつく…。
「なに?危ないで」
「京子…京子…京子…」涙が止まらない
「出来たから食べよ?」
僕の方を向いたと思ったら黙って抱きしめられた。
「これで最後な。あんたはあたしの旦那。紙も書いてへん。これが最後。わかったな?」
「はい。。」
「食べるよ。シチュー作ったから。」
「ありがとう…」
「こんな夜中に作ったん初めてやわ。」
「ごめんなさい。」
「あんたの好きなもん作った方がええかなって。」
「ありがとう。美味しい。味もちょうどいい。俺…これじゃないと食べたくない。」
「ほんまにか?誰にでも言うてんちゃうん?」鼻で笑ってる。
「どうやったら証明できる?」
「さあ?…ごちそうさまでした。」
「京子。」
立ち上がろうとする京子を抑えて目を見る。
「お前の飯以外はクソ不味くて食えたもんじゃない。こんなん相手に言うたら失礼やから言わん。けど、本音はそれ。この半月、毎食そう思ってた。京子の飯が恋しい。京子が恋しい。それだけ考えてた。ないって『この飯を向こう何十年は食う自信はない』って思った。言うたよな?俺の理想はうちのおばさん。あの人に勝てへん人は要らん。お前は勝ってる。やから帰ってきた。」
「そうか。」
「うん。」
「はよ、風呂入ってねい。」
「京子。」
「なに」
「なぁ。おいって!」
無理矢理キスする…。
そしてソファに腕を押さえつけて押し倒す…。
「お前の事愛してる…。全部な。」
「お前は?」
「どうやろな?」なんか、ニヤニヤしてる。
「嫌やったり、痛かったりしたら言えよ。」
優しく、優しく愛する…。
でもそのうち、京子の目がSの目に変わる…。僕はその目を見逃さない。
力を抜いて、、したい様にさせる。
これは2人で編み出した感覚…。
一瞬も目を離さない。
だからわかる…。瞬きも勿体ないくらい。
ずっと相手を見てたい。
ちょっとずつ、溶かして溶かされて…。
俺らだけの世界に…。
マンションの一室が2人だけの淫靡な世界に変わる。幸せと快楽の世界へ…。
「侑海くん。おかえり。今日は痛いのは要らんみたいやな。どうしたいかはっきり言うてみ。」
僕の膝の上に乗って京子が囁く。
「甘々がしたい…。京子と、京子だけの世界に入りたい。京子を見たい、色んな京子を。可愛い京子を。綺麗な京子を…。愛してるぞ。」
「えらい今日は上からやな」
「これも俺の一部。嫌か?年下のくせにって思うか?」
「思うんやったらはなから家入れへん。あの日、あんたが店に来た日、泊めたりせん。」
「愛してる…。」
「あたしも…。次逃げたら殺すからな。ほれでもええか?」
「本望や。」
「変態…」
と言ってキスする。
何度も。軽いのを。まだ囁き足りないから…。
「京子…」
「なんや?」
「耳見せてみ」
髪をかきあげる…
「色っぽいな。ほれ好きやわ。」
「なんで耳なん。」
耳元で…
「ピアス外せ。」
素直に2つずつ4つのピアスを外してテーブルに置く。
耳元で…
「外したで…。お返しや。」と俺の耳を噛む。
「はぅ…」
「で?何したいん?」笑ってる。
「お、お前の耳を…綺麗に、、舐めさせてください…」
「言葉おかしなってるで…」
「お願い…します…」
「そんな言うなら…ほら、好きだけしたらいい」
京子が耳を差し出してくる。
「京子…大好き…」
耳をゆっくり舐め上げる…
「ピアス穴が好き…いやらしい…」
「ほんま変態やな…の割には…舌短いしド下手…」
「あっ…ちょっと…ヤバい…」
「こうやんねん…」
京子が長い舌でゆっくり僕の耳と首を責めてくる。
「お前の…舌は凄いな……色んな使い方しよんな…」
「黙って傍に居とけば、この舌も体もあたしの全てあんたのもんや。どうすんのよ?」
「どっちか死ぬまで、死んでも、お前に溶かされたい…愛で包んでくれ…」
「言われんでもそうするわ。もしどっちか死んでもまた探せばいい。どんな関係でもあたしらはまた必ずこうなる。ちゃうか?」
「俺が探したる。またお前…見つけたるから…安心して…生きとけ…あぁ!ヤバい…出る!!…」
僕達はその晩、過去一《カコイチ》、甘く甘く、囁きあって、絡み合った。
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