今日も午前中から指名が入っていた。
「あきちゃん、お願~い」と呼ばれたが監視カメラにはあのマルタイが映っていた。「店長、あの人、、、」私が躊躇していると「あきちゃん、失礼の無い様にね、あの人にはお世話になってるから」と送り出された。
私は無言で俯きながら部屋に入り「宜しくお願いします」と小さな声で言うとマルタイは「こっちに座って」と私をベッドに座らせました。
「この間はごめんな、ちょっと会社でやな事があって」私が黙っていると「店長には俺から話しつけておいたから、罰金とか無いから。それとコレ、この間のお詫び」私にティファニーの箱を握らせた。「これは困ります」と言うと「大丈夫、カバンにしまって!」と言われ一応受け取る事にしました。
マルタイは「今日はお詫びに食事でもと思って来たんだ」私は「まだ仕事があるので」と言うと「今日の仕事は店長に言って全部キャンセルさせたから、表で待ってるから支度して来て」と私を部屋から出しました。
店長にその事を言うと「あきちゃん、デートでしょ。あの人には逆らえないから、早く着替えて」と私は更衣室に放り込まれた。
お店を出ると黒の高級車が止まっていて後部座席の窓が開いた。あの男が手招きをする。運転席の若い男が出て来てドアを開けてくれた。多少恐怖心もあったが任務だと思い車に乗りました。
連れられて来たのは都内の高級レストランでした。私は安物のカーディガンにパンツだったので場違いな所に来てしまったと恥ずかしく小さくなっていました。あの男は自分の会社の話しや自分の好きな野球の話しをし始めました。レストランから見える野球場と遊園地を眺めながら高級そうな食事を食べていると、男は「気に入らなかったかな?」と悲しそうな目をしました。「美味しいです」一言だけ言うと「今度はあきちゃんの好きな所に連れて行ってあげる!どこが良い?」と真面目に聞いて来るので「遊園地かな」と答えました。たまたまレストランから見えた遊園地を口にしてしまいました。男は笑顔になり「それじゃ今度の土曜日に行こう!どこに住んでるの迎えに行くよ」とはしゃいでいる男の目は少年の様でした。何か情報を聞けるチャンスだと思い私は最寄りの駅を伝えました。
食事が終わりレストランを出ると男は「上のホテルの部屋で飲み直さないか?」と言って来ましたが「帰ります」と言うと「じゃあ、送って行くね」と言うので「電車で帰りますから大丈夫です。今日はご馳走様でした」と歩き出そうとしたら「LINEだけでも」と言われLINEを交換しました。
電車に乗り上司に報告しないと、カバンからスマホを出そうとしたら隣に上司がいました。
「何か聞けたか?」
「デートに誘われました。次の土曜日です」
「あいつ、お前が気にいったみたいだな。何か分かったら連絡をくれ!」
そう言うと立ち去って行きました。
アパートに帰ってお店で貰った箱を開けるとローズゴールドのイヤリングが入ってました。
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