めくるめく官能世界に程遠く
企業インターン実習の終了日。
「皆さんの足手まといになり、申し訳ございませんでした」
「いいや、従業員達からクレームがなかったのは息子さんだけですよ」
「父をご存じで」
「業界は広いようで狭い、面識はないけれども、信頼の厚い方と聞いています」
「社長さんこそ、独立独歩で名を馳せてお出でではございませんか」
「やせ我慢なだけでね、はは」
「社員の方々の技量も素晴らしいですね、父がここを見れば、きっと、羨むに違いない
と思います」
「人は城といいますからね、うちは忙しくなっても信用に足らない外注には出さないし、
バイトも雇わない、うちのような小規模なところは質の低下は命取りですからね」
「そうなんですね、父も同じようなことを言っています」
「君も父上の後を継がれるの」
「はい、先々のことですから、どうなるか分かりませんけれど、一応そのつもりです」
「じゃあ、君に一つだけ助言しておきましょうかね、父上のもとで力量を発揮している
従業員を、君も信頼するのはとても大事ですが、父上が第一線を退けば、君の信頼に必
ずしも答えてくれるとは限らない、大小に関わらず、独立企業の宿命のようなものです」
「ありがとうございます。ご助言に感謝申し上げます」
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