めくるめく官能世界に程遠く
「近頃、お母さんに夢とか希望とかをよく訊かれるの」
「へえー、で、何て」
「前は小児科医でしたけど、偏差値的に無理そうなので、今は別に考えていないわ」
「子供が好きなの」
「というより、赤ちゃんが好き」
「かわいいもんね」
「ええ、天使みたいよ、赤ちゃんを見て怒ってる人見たことないもの、無垢の象徴だわ」
「ふふ、そらそうだ、赤ん坊を見て怒る人は、何か特別な事情のある人だけだよ」
「お兄さんは小さいとき、どんな夢を持ってらしたの」
「ジェット戦闘機のパイロット」
「へえー、飛行機が好きなのね」
「うん、大空を飛びたかった、まゆさん、大空をどう思う、無限だと思うかな」
「ええ、そう思うわ、どうして」
「じゃあ、まゆさんの視界のこの大空は無限」
「もちろん有限よ、お兄さんの言いたいことって何」
「見えないものを見る力があって初めて、無限といえるのではと思うんだよね、
『大切なことは、目に見えない』というサンテグジュペリの『星の王子さま』は大人向
けの童話だと思う、まいさんが大空は無限と言ったのも、まいさんには、目に見えない
大切なことが見えているからだよ」
「お兄さん、ロマンチストよね」
「僕だけでなく、女性には伝わり難いだろうけれど、基本、男はみんなロマンチストな
のかも」
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