めくるめく官能世界に程遠く
補習6回目
花火大会での気まずさから、静かなスタート。
小声で口火を切ったのは女子高生だった。
「この間はごめんなさい」
「まいさんは何もしていない、謝るなんておかしいですよ、僕も周りの雰囲気に飲まれ
てしまった、でも、謝らない、まいさんが好きだからね」
「ありがとう、お兄さん、大好き」
「しぃー、声が大きい、ふふ ゴホン、えーと、今日の予習は、っと」
「うふふ」
・・・・・・・・・・・・・・・
翌日、駅前カフェ
「はい、どうぞ、ご招待しまーす」
「えっ、何これ、学園祭?」
「ええ、そうよ、女子校だから招待状がないと入れないの」
「へえー、そうなんだ、うちの工学祭なんて、近所のチビまで来るけどね」
「両親は午前中にひと回りして帰るから、午後なら余裕で案内できます」
「おお、いいね、ありがとう、これ一人1枚?」
「人数は受付で申告すればいいの」
「ふうん、なるほどなるほど」
「こりゃー楽しみ、でもなあ」
「なにか」
「女性の集団のニオイがねー」
「お姉さんと約束したもの、これはチャンスよ」
「何の約束」
「お兄さんを鍛えて、女性免疫力をUPするの」
「あー、あれか、忘れなさい」
「うふ、ムリ」
「実はね、お姉さんとのなれそめも、そのニオイが発端なんです」
「えー?どういうこと」
「お姉さんに貸した自転車のサドルをクンクン嗅いだら、そりゃーいい匂いで」
「お兄さん、いやらしい」
「やっぱりそう思う?そうだよなあ、お姉さんも最初そう思ったって、はは」
「お姉さんに叱られたでしょう」
「いんや、逆に涙流して僕に抱きついてきた」
「ええー、うそ、ほんとにー、信じらんない」
「話を端折りすぎたけど、ほんとのほんと」
「へえー」
「お姉さんが発するどのニオイも、僕だけが感じる特別ないい匂い」
「そうなんですね」
「まいさんにも、そういう人が、きっとどこかにいる、どこかでまいさんと出会えること
を心待ちにしている」
「出会いたいなあ、私も」
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