めくるめく官能世界に程遠く
「ただいまー」
「お帰りなさい、お疲れさま」
玄関先で軽くキスを交わして中に。
「あったかーい、暖房にしたのね」
「うん、1時間くらい前に。体を冷やすと受精するのによくないと思って」
「うふ、優しいのね、ありがとう」
「鍋物にしようと、豚バラにキャベツまるごと1個入れたけど、これどうしようか」
「えっ、切らずにそのまま入れたの」
「一枚づつ剥いで食べればいいかなと、でも、鍋の中で溶けた」
「ふふ、すごい料理、キャベツでお出汁が出るわ」
「あー、だから汁が甘いんだな、まゆさん、北海道で買った昆布とどんこはどこ」
「もったいないから仕舞っちゃったわ」
「ふうん、じゃあ、今まで使っていたのは」
「ここにあります」
「えっ、昆布こんな少し、干し椎茸も薄くのばしたような」
「よい昆布は高いのよ、どんこも貴重な食材ですからね、お料理番組でやっているよう
な贅沢な使い方はできません」
「じゃあ、それでいいよ、入れよう」
「煮崩れを起こしそうな豚バラと溶けたキャベツで十分に旨味が出ているわ、あとは醤
油とお祝いに頂いたお酒とお砂糖、お塩で十分よ」
「お酒って、あの大吟醸、味醂を使えばいいのに」
「あなたがお酒を召し上がらないから、いつまでも残ってるし、お料理用ね」
「お味はどう」
「うん、美味しい、旨い、これならどこへ行っても恥ずかしくない嫁さんになれる」
「あなた、私はだれ」
「ふふ、そんなに真顔で睨まなくても・・・かわいいよね、まゆさん」
「んもう・・・」
※元投稿はこちら >>