めくるめく官能世界に程遠く
「会社の古参従業員が電話で、最近、親父が社員寮に住む未亡人の部屋から早朝、早出
出勤していて、他の者に示しがつかないというので、実情を把握すため会社へ行ってみ
たのだけれど・・・」
「ああ、それで急に会社へいらしたのね、通りで、で、どうでしたの」
「親父は、見積書入りの封書を持って、得意先へ直談判に行っていたので会えなかった、
見積もりを見せて値段交渉に入るのが普通だよね、ところが、親父はそうしない、相手
の腹積もりを先に聞いて、値段が折り合わないと思えば、交渉のテーブルにつかないで
封書を開封せずにそのまま持ち帰る、不当な値引きに一切応じない親父流の交渉術ですよ」
「へえー、真剣勝負なのね、お父さまって凄いと思うわ」
「うん、でね、いい機会だから自己紹介を兼ねて、従業員名簿やら会社特有の伝票起こ
しの仕方などを教えてもらいましたよ」
「伝票はどこでも同じでしょう」
「いや、それがね、会計処理ソフトを使っていないのですよ、そればかりか、入金・出
金伝票も使わず、振替伝票に直接記入していた、親父流の合理的方法といえばそうなん
だろうけれど」
「へえー、そうなんですね、長年やっていらした方法でしょうから」
「まあね、でも、万事がそんな親父流だから、あれらに慣れるには、頭を切り替えて昭
和に戻さないといけない、とてもではないけれど、ド平成のアホには無理かも」
「うふ、大丈夫よ、あなたなら何とかなりますって」
「えーと、なんだっけ、そうだ、未亡人のことだった、齢より若く見える人で、スナック
で働いていたのを会社の古参が見初めて寮で一緒に生活していたけれど、二人共バツイチ
で、籍を入れずに内縁のままだったそうですよ」
「へえー」
「母が生前『男性の前では調子がよくておとなしく、陰でものを言う人』と言っていた
けれど、従業員に訊くと、気さくでおとなしく、人付き合いもよいと評判は上々だった」
「同じに見えて、ずいぶん違うわね」
「そうだね、それと気になるのは、社外での男性付き合いが、古参のご主人が心筋梗塞
で亡くなる直前まで相当数あったという噂ですよ、噂だから、にわかには信じ難いのだ
けれど」
「そうね、噂って怖いわよね」
「うん、見ようによって事実は真実を隠す、メディアやマスコミの報道などもそうでしょ、
事実を曲げて伝えているのがほとんどだし、まあ、あれらは金のためなら何でもやる輩と
思えばいいだけだけど」
「うふ、あなたらしいわ」
「親父と未亡人が男女関係が有るかどうかは、誰も現場を目撃した者がいないから、今は
推測でしかないけれど、それにしても、親父が何故、未亡人の部屋から出勤するのか、
真意がよく分からない」
「お父さまは結婚されるご意思はないのかしら」
「さあ、親父は女性に甘いからなあ」
「うふ、あなたそっくり」
「断っておくけれど、母親の血も入っている、けじめはちゃんとつけるよ」
「さあ、どうでしょう、まいさんのことはどうなりまして」
「ゲホゲホ」
「うふふ、さあ、お父さまを気にしている場合ではないわ、まいさんに先を越されたら、
妻の面目が立ちませんもの、赤ちゃん早くうー、お願い、今日もたっぷり愛してね」
「えっ、今から」
「そうよ、子作りに朝も昼も夜もないのよ、あなたと居るだけで体が熱くなってきちゃう、
全身愛撫上手なあなたに抱かれて、私、またイカされるんだわ、あー、思っただけで、
お股がこんなに濡れちゃった、触ってみて、ね、濡れてるでしょ、お嗅ぎになって、
あなたしか知らないいい匂いで溢れてるわ、あー、もうだめ、今まで、こんなに硬くて
びんびんな人一人もいなかったですもの、愛しています、お願い、来て、奥深くに突き
刺して、早く来て」
「うーん、いい匂いのいい女、ひと嗅ぎ千両ひと舐め万両の極上女、もう、親父のこと
なんてどうでもいいや、一日中何度でも膣内射精するぞ、ふらふらで足腰立たないで、
死にそうになっても知らないからな」
「いいわん、あなたなら本望だわん、好き好き愛してるわん」
「僕もだわん、愛してるわん」
(守護霊:いつからこのふたり、犬になったのだ)
(母:おほほほ、およろしいのですわん)
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