めくるめく官能世界に程遠く
「あの広い北大構内を散策して、まゆさんが興味を持ったものは何かある」
「ただただ広くて、なんかよくわからなくて、歩くだけでヘトヘト」
「はは、うん、2時間も歩けば大抵の人は疲れるよ」
「あなたが見たかったものって何だったのかしら」
「新渡戸稲造とクラークの銅像」
「クラークって『青年よ大志を抱け』の人よね、新渡戸稲造は」
「西欧列強が日本をアジアの一弱小国と蔑んでいた時代、『武士道』を英語で書いて、
西欧列強に日本を知らしめた人で、国際連盟の事務次長を務めた人、以前の五千円札の
人ですよ」
「でも、何であなたが新渡戸稲造に興味を持たれたの」
「元々武道に興味があったのと、『武士道』の英語版と日本語版を読み較べるうちに、
新渡戸が書いた英語版の格調高い表現以外、西欧人に日本人の精神を理解させることは
不可能だったろうと思えたから」
「へえー、そうなんですね」
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