めくるめく官能世界に程遠く
昨日の結婚式新郎側ーりょう、父、母(故)、媒酌人ご夫婦、新婦側ーまゆみ、父、母、
兄、計9名、披露宴同数。
御神酒を酌み交わし、夫婦の契りを結ぶ三献の盃の三々九度では、りょうは事前に口を
つけるだけで飲まなくてよいと知らされていたけれど、神に誓いを立てるのに嘘は嫌だ
と、まゆみの心配をよそに、9回とも少量ずつ飲み干し、披露宴が終わるまで顔をまっ赤
にしていた。
気が張っていたせいか、眠くはならなかった。
りょうが虚ろな目で結婚指輪をまゆみの中指に嵌めそうになり、慌ててまゆみが薬指を
差し出した。
当のまゆみはびっくりしたに違いないけれど、りょうにとっては些細なハプニング、怒
られそうなのでダンマリ。
媒酌人ご夫婦は参列者の少なさに戸惑われつつ、これも当世と、式次第を暖かく見守っ
てくださった。
華美でない神前の儀式・形式に襟を正される思いがした。
定山渓温泉ホテル
まゆみはりょうの真意を測りかねていた。
りょうが北海道に来ることを言い忘れていたなどあり得ない、どうして直前になるまで
何も言ってくれなかったの。
そもそもどうして親類縁者もいない北の地なの。
りょうのすることは一つ一つ何かしら意味があることを、一緒に住んでいて既に知って
いますけれど、それを自分で見つけ、自分で感じなさいというの。
りょう、あなたは誰なの、どうして私の目の前に突然に現れたの。
全ての疑問が自分で解けたら、私を残して、また目の前から突然に消えてしまうのかしら。
私達、夫婦ですもの、そんなことないわよね、ないわよね、あなた。
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