めくるめく官能世界に程遠く
まい宅リビング
「ごめんなさいね、わざわざお呼びだてして」
「お電話では、まいさんの進路についてとか」
「ええ、そうですの、主人とも相談したのですけれども、まいの進学をあなたはどうお
思いになられまして」
「まいさんはよくお出来になるお嬢さまですし、学力に問題がるとは思いませんけれど、
まいさん自身、進路に迷いがお有りになるようで、一介の学生にはよく分かりません」
「まいは小児科の医師になりたいと申した時もありましたのよ、でも、いつの頃か口を
濁すようになりましてね、優しい子ですから、あの子なりに家計を考えてのことなので
しょうけれど、一人娘ですから、私ども、経済的負担については覚悟を決めています。
それよりも私は、あの子が受験の波を乗り越えられなかったときのことが心配で」
「ええ、そうですよね」
「ごめんなさいね、長々とおしゃべりして、母親の愚痴ですわね」
「いいえ、お母さまのご心配はごもっともです」
「あなたに聞いていただくだけでも気が楽になります」
「僕でよければ、いつでもお話相手に加えさせてください、お母さまと交わす秘密は守
ります」
「ありがとう」
「あのう、まいさんのことで一つ宜しいでしょうか」
「何でしょう」
「僕もまいさんから小児科医になりたいと聞かされていましたけれど、どうなんでしょ
う、本当のところ、それほど強い意思をお持ちなのでしょうか、僕にはそうは思えない
フシがありまして」
「といいますと」
「地方大学はイヤ、一浪もイヤ、医専の予備校も眼中にないと、これでは、まいさん自
ら道を狭めているような気がします、運が良ければ程度のまいさんの淡い希望なのでは
ないかと」
「まあ、まいがそんなことまであなたに」
「ええ、それで、フィードバックして考えてみたのですけれども、お母さまからご覧に
なる、まいさんの良いところとはどんなところでしょう、僕には、まいさんは対人の調
整能力が並みでなく、なんと言えばよいのでしょう、天賦の才能とでも言いましょうか、
凡人には考えられないほど秀でているように見えます」
「そうね、そういえば」
「もしかすると、お嬢さまは誰にもできないようなコーディネート職が天職なのではな
いでしょうか、僕のような者がお母さまに申し上げてすいません」
「あなたがあの子のお婿さんならいいのにね、うふ」
「はは、それはどうですかね、頼りないことこの上ない婿で、お父上が激怒されますよ」
「あはは、まいも素敵な方を好きになって、よい青春を過ごしていると思うわ、私もあ
なたが大好きよ」
「では、お母さまとお約束のいつもの軽めのおしるしを」
「ええ、宜しくてよ、おねがい、うふ」
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