めくるめく官能世界に程遠く
「来ちゃったわ」
「誰が」
「お友達よ、言い忘れていたの、押入れに隠れて、早く」
「お邪魔しまーす」「こんばんは」「ご主人戻られていないようね」「お酒を飲めない
方なんですって」「あら、かわいそうに」「丁度いいじゃない」「お若いのにねえ」
「はい、ポテトチップ」「クッキー焼いたわ」「胡瓜の糠漬け持ってきた」・・・・・
この人達は何をしに来たんだ?何人いるのさ。
押入れの戸を少し開け、明かりを入れたけれど、肝心の居間の様子は分からない。
だいたい、僕は何で押入れに居なきゃならないんだ。
家の中 近くて遠い男女の仲 ってか。
瞼が重い、ま、いっか、眠くなってきた。
彼女らがほろ酔い気分で、下世話な話も含めてたけなわの頃、
「ねえねえ、何か聞こえない、あの音」
「えー、どうしたの、なになに」
「うん、たしかに聞こえるわね、まゆさんも聞こえるでしょ」
「うーん、どうかしら、外かしらね」
「ねえ、ここよ、この中よ」
「イビキよ、誰か寝てるのよ」
「泥棒? ちょっとー、押さないでよ、こわいじゃないの」
まゆみ「あのう」
「よーし、女と思って甘く見たらいかんぜよ」
まゆみ「あのう」
「何なのよ、うるさわね、今、臨戦態勢なのよ、静かにして」
まゆみ「あれ、うちの主人です」
みんな一斉に「ええー!?」
まゆみが押入れを開けた。りょうがグーグーいびきをかいて眠っていた。
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