めくるめく官能世界に程遠く さん付け、呼び捨て
「ねえ」「うん?」
「お友達がね、あなたから未だに『さん付け』で呼ばれてるの、なんか、おかしくない、
って言うのよね」
「ふーん」
「でね、名前を呼び捨てにされたら、どんな気持ちなのかなあって」
「ご主人は何て」
「おい、とか、お前とか、名前で呼ばれたことなかったもの」
「で、貴女はどう思ってたの」
「べつに何も思わなかったわね、これが普通なのかなあって」
「お父さんやお母さんの前では」
「同じ、おい、とか、お前とか」
「ふーん、お父さんやお母さんからなんて呼ばれてるの」
「呼び捨てよ」
「さん付けは」「人前でお母さんが呼ぶくらい」
「カップルが納得していればいいんだから、他人がどうこう言う問題じゃないけどね、
ただね、ご主人の場合、お父さんやお母さんの前でも同じだったというのは、どうか
と思うよ」
「あなたの場合は」
「女性を呼び捨てにしたことは、中学以降、ただの一度もないよ」
「ぜんぜん?」「うん、ぜんぜん」
「お母さまからは」
「ちゃんとか、さんとか」
「お父さまからは」
「呼び捨て」
「へえ、人によって、家族によって、ずいぶんと違うのね」
「そうだね、こればっかりはね」
「呼び捨てで呼ばれてみたい?」
「うーん、どうかしら」
「ものは試しに、呼び捨てで呼んでみようか」
「ええ、呼んでみて」
「まゆ(真由美)」
「はい、ってなんかヘンな感じかも、うふ、慣れちゃうとそうでもないのかしらね」
「でしょうね」
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