めくるめく官能世界に程遠く
まゆみは直感的に思った。
りょうは、事業家としての父親を尊敬している反面、敬愛する母親への父の仕打ちを今
も許していないのでは。
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「そろそろお彼岸ね、あなたのご予定は」
「別にこれといった予定はないですよ」
「じゃあ、私、お母さまに家族に加えて頂くご報告をしたいから、お墓参りのあと、お
父さまのご都合に合わせて会食の予定を立ててもいいかしら」
「うん、いいんじゃない」
「よかったあ、あのね、お寺の近くにとっても美味しいお店があるんですって」
「へえー、どこそれ」
「うふ、当日まで、ひ・み・つ」
「秘密はいいけど、目の玉が飛び出そうな高級店じゃないんだろうね、僕にフランス料
理のマナーなんて、期待しないで欲しいんだけど」
「まさかー、うふ、これでもれっきとした、かけそば君の家内ですわ、そんなとこ選ぶ
わけないじゃないの、うふふ」
「ということは、うーん・・・・どぜう鍋とか」
「なにそれ、食べたことないわ」
「どじょう鍋のこと、むかし家族で食べに行った、美味しかったよ」
「私も食べてみたいわ、そうだ、それに変更しましょう、うん」
「ふふ、なんだよ、美味しいお店はどうなったのさ」
「えへ、新情報なのだワン」
「はは」
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