健太は戸惑っていた。さっきまでことごとく否定されたような雰囲気だったのに、どうして?どういうこと?そんな疑問を健太は里子に聞いた。
「甘えていいの?ほんとに?」 里子は優しく微笑みながら答えた。「私ね、幼い頃から健太くんがかわいいと思っていてね、いつか私の子供にならないかなあ、なんて思うくらいに健太くんをみてたの。だからね、学校で声をかけてもらった時はすごく嬉しかったよ。」 言いながらソファーから立ち上がり、キッチンに向かった。歩きながら里子は話し続けた。「だから今日は、教師の奥野先生ではなく、母親とみて接して欲しかったの。健太くん、雅彦以上に我が子みたいに感じたから、いとおしくなってきちゃった。だからもう少し私に付き合ってね。コーヒー入れるね」
健太はたまらなくなり、コーヒー豆を棚から出そうと背を向けている里子を後ろから抱き締めた。
「僕も里子さんのようなお母さんだったらいいなあ、とずっと思ってました。奥野先生も素敵だけど、素の里子さんも素敵です。」 背を向けたまま、里子はうつむいて微笑んだ。そして、振り向き様に健太の両頬にそっと両手を添えて、優しく口づけをした。
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