翌日、紀子は16時にファミレスの仕事を終え、車に乗り込もうとすると、
「あの~山内さん…こんにちは。昨夜はどうも。」
紀子の車のそばに智樹がいたらしく声をかけられた。
紀子はビックリして
「あら!智樹くん、どうしたの?」
急に智樹が現れたため動揺して、昨夜は『吉沢君』と呼んでいたのだが、昨夜の回想で『智樹君』と心の中で呼んでいたため、とっさに智樹が現れて思わず『智樹君』と呼んでしまったが、智樹はまったく気づいた様子もなく紀子はホッとした。
「あの~、昨夜いただいたワックスのお金を返そうと思って…これで足りますか?」
智樹は千円札を財布からだして紀子に手渡そうとした。
「何言ってるのよ!吉沢君昨夜お金ないって言ってたじゃない!?このお金はどうしたの?それに出世払いでいいって言ったはずよ!だからこれは受け取れないわ!」
智樹の出した手を引っ込めるため、紀子は智樹の腕を掴み押し返した。
「いえ、でも、せっかくお金借りれたから、俺持ってるとまた使っちゃいそうだし…」
智樹も引き下がらず、掴まれた腕を掴み返して、紀子の手のひらをこじ開けて千円札を握らせようとした。
智樹に腕を掴まれ、手のひらまでこじ開けられそうになってる紀子は、智樹の力強さにドキッとしてしまうのだが、そんな場合ではないので必死に説得した。
「あのね、吉沢君!私そんな借りてきたお金返してもらっても嬉しくないの!あなたがちゃんと働くようになったらちゃんと返してもらうから!その時はもちろん倍返しよ!(笑)」
腕を掴まれながら智樹を見上げながら紀子は言った。
智樹を見上げて間近で智樹を見て
(本当にカッコいいわ!これならモテるはずよね)
と思い、少しポーッとしてしまうのであった。
今日の智樹は学校の帰り道らしく、昨夜とは違い、高校の制服だったし、ましてや昨夜と違い、まだ明るいところで昨夜より近い距離の智樹に紀子はよけい意識してしまっていた。
「わかりました!俺夏休みバイトするから、そしたら自分のお金で返しますから…その時はちゃんと受け取ってくださいね。」
落としどころがみつかったところで紀子も素直に
「はい、わかったわ!」
と答えた時に、パートの同僚が「お疲れさま」と紀子と智樹のほうをニヤニヤしながら見て声をかけてきて、
まだ智樹に腕を掴まれままの紀子は「あっ!お、お疲れさまです」すぐに手をふりほどきながら答えたが、同僚はニヤニヤしながらそんな紀子を見ながら
「紀子さん、若い彼氏できたの?いいわねぇ。」
とからかったように言ってきたので紀子は全身真っ赤になってしまいながらも
「もう、何言ってんのよ!そんなんじゃないから!娘の同級生で返したいもんがあるってゆうから…」
必死に言い訳する紀子を面白そうに見ながら同僚は笑いながら車に乗り込んで帰っていった。
「もしかしてなんか誤解されちゃいましたか?」
智樹が心配そうに尋ねてきたが
「そんなわけないでしょ!誰が見たって親子よ!(笑)智樹君ごめんね!こんなオバサンと誤解されちゃったら智樹君だっていい迷惑よね?あはは…」
紀子はかなり動揺してる様子で、また『智樹君』と呼んでしまった。
「俺は全然大丈夫です!むしろ誤解されて嬉しかったりして。」
そんな智樹の本気とも冗談ともとれる言葉に紀子はまたまた体がカーッと熱くなってしまい
「もう、みんな何言ってんのよ!あぁ~なんか熱くなっちゃったからマックで冷たいものでも飲んでく?あっ!こんなオバサンとじゃ智樹君恥ずかしいか?(笑)」
「いえいえ、全然恥ずかしくないです!マック行きましょう!マックでジュース代ぐらい俺がだしますから。」
「とりあえず行きましよう!乗って!」
これ以上お店の人に見られたくないのもあって、早くこの場を離れたい一心で、智樹を乗せてマックへと走り出した。
マックについて
「智樹君、ちょっと場所とっといて!」
智樹にジュース代とはいえ払わすわけにいかないと思った紀子は、智樹に席取りさせてる間に飲み物とポテトを注文して、智樹の待つ席にと座った。
落ち着いて座って周りを見渡すと、昨夜とは違い、客の半分ぐらいが高校生や中学生みたいな感じであった。
みんな友達同士で来てる感じで、紀子は制服姿の智樹と向かい合わせで同じ席に座ってるのが、妙に恥ずかしく、また紀子を意識させてしまうものだった。
智樹のほうはまったく気にした様子もなく
「いくらでしたか?俺払いますよ!」
またお金を出そうと財布を開けてきたので、さすがにこんなとこで受け取るわけにもいかないし、まして智樹にだしてもらおうとも思ってなかったので
「いいの!後でね!」
とその場をなんとかおさめた。
話をそらすため紀子は学校の夏休みのことや、夏休みのバイトのことなど聞いていた。
明日までで学校は終わりで、夏休みは日雇いの現場作業に行くと聞いて、
「暑いから大変ね!ちゃんと食べてちゃんと寝なきゃダメよ!」
ついついお母さん口調で言ってしまうのであったが、母親が出てしまっていった智樹にとってはそれが嬉しいらしく、素直に
「はい!はい!」
と返事して
「俺、母ちゃんいなくなってそんなこと心配してもらったことなかったから…めちゃめちゃ嬉しいです。」
(そうか…智樹君大人びてるけどまだまだお母さんに甘えたいんだね!)
そんなことを紀子は考えてると胸がキュンとなるような感じだった。
無意識のうちに…いや、智樹に頼られたい気持ちからか紀子は食事や洗濯や掃除、普通母親がするであろうことをどうしてるのか聞いて、全部自分でやってるとゆう智樹が不憫になり、なんとかしてあげたいとゆう気持ちが強くなってきていたのである。
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