その年も押し詰まり、てる子は大掃除に追われていた。
町内の衣料店に買い物に出る、てる子。
夫と自分の新しい下着を買う為だった、当時は現在みたいに華やかな下着類もなく、臍まで隠れるような下着が田舎では当たり前だった。
そんな中で股上の浅い下着に目が行った。
こんな下着を履くと彦則は、どう思うだろうか?
そん事を思いながら、ひとりで顔を染めて居た。
これを精算に持って行くと、店の奥さんは何と思うだろうか…などと考えながらも、てる子は他の下着に、その下着を紛れ込ませる。
精算をする時も、ひとりで顔を染め羞恥していた。
やがて年も新たまり新年を迎える。
何をする訳でも無いが、てる子は普段通りの生活を続ける。
正月も終わり、また何時ものように仕事が始まる。
そんな、ある日に彦則が近づき小声で
「今度の休みに町に出ようか」
と囁いて来る。
てる子も小さく頷く。
休みの日に打ち合わせ通りに、時間をずらしバスに乗り電車に乗る。
隣町の駅で待ち合わせた彦則と、てる子。
そこで知り合いに会う事は、まず無く二人は寄り添いながら歩き始める。
駅を出て直ぐに細い路地に入る、自転車同士がすれ違うのがやっとの細い道路を少し歩くと「旅館」と小さな看板が上がる所に着く。
「ここだわ、てる子」
彦則が耳元で言うと、てる子の背中を押すように玄関に入る。
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