文化祭まであと2日。
決行日が近づくにつれ、俺は次第にやる気を失っていった。
あの日から音声ファイルも開いていない。
おまけに今日は教師の無断欠勤だ。
小林先生も若くて美人なのはいいのだが、やはり女の人では頼りにならないのか。
彼女だって、俺と一緒に学年の生活指導の責任を負っているはずなのに……
俺はため息をつきながら、何気なく昨日の音声ファイルを開いてみた。
「落ちた!!」
「落ちた! 落ちた!」
「落ちたな……」
「ああ……落ちた……」
「もう少し絞めるぞ!」
「……」
「……」
「……」
「よしっ、このくらいでいいだろう」
「この女、こざかしく俺たちのことを嗅ぎ回っていやがって……」
「どうせ盗聴器を仕掛けやがったのも、この女だろう」
「おいっ! 例のクロロホルム持ってこい!」
「どうせ計画はバレちまったんだ! 明日からこの女、学校に来られなくしてやる!」
「おい、腰を持ち上げてくれ! パンツを脱がせるぞ」
「静かにな」
「ああ……ああ~~……あ~~……やっちゃいましたね先生」
「ガードルもショーツもパンストも、ぐしょぐしょだ」
「もう聞こえてねえよ。気持ちよさそうに天国に逝っちまってる」
「これだけ出しゃあ気持ちいいでしょ」
「でも、脱糞しなかっただけ大したものだな」
「それだけケツの締まりはいいってことか」
「おい、クロロホルム持ってきたぞ!」
「よし、たっぷり嗅がせろ! 残ったもの全部ぶちまけていいぞ」
「お~い、小林先生! 聞こえてるかい? あんたのあえぎ声、聞かせてやるよ」
(よし入った!)
(入ったな?)
「あれ? 息をしていないからダメか……」
(胸を押してみる?)
「うっ、うふう、ブクブクブクブク……」
「あんたの声だよ。聞こえてるかい?」
「うっ、ううっ、ブクブクブクブク……」
(あ~あ、カニみたいに泡吹いちゃって……)
「うっ、ブクブクブクブク……ブクブクブクブク……」
俺は頭の中が真っ白になった。
真っ白になりながらも、俺の行動は素早かった。
まず、盗聴器のコードを外し、関連するソフトウエアを全てアンインストールした。
次に、音声ファイルを全てゴミ箱に移し、ゴミ箱を空にした。
そして教室にとって返すと、教卓から盗聴器をコードごと引きちぎり、校舎の裏手の焼却炉の中へと投げ込んだ。
焼却炉の脇には、人が寝そべることができるくらいのダンボールが敷かれていた。
俺は盗聴器のことなど何にも知らないと決め込んだ。
小林先生が無断欠勤したのも、俺には何の関係もないことだ。
一戸若菜?
確かに俺の生徒だが、犯されようが犯されまいが、俺には何の関係もないことなのだ。
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