私小説③
家に帰ると兄が風呂場で何かをしていました。
『何してるの? お兄ちゃん』
私の声に驚いた兄の態度があまりに変だ、問い詰めてみる。
すると隠していた盗撮用カメラを差し出す兄、一体どういうこと?
更に問い詰めると、同僚と約束したという。
大学生の妹と毎日お風呂に入っていると話したらしい。
でも誰も信じてくれず、会社で嘘つきと呼ばれているという。
その解決策として「盗撮してこい」とカメラを渡されたらしい。
『ちゃんと話してくれれば協力してあげるのに』
「え、いいの?」
『いいよ。でも顔は撮らないでね。それなら許すよ』
顔が入らない位置にカメラを置き、確認しながら撮影を始める。
一応いつもの部屋着に着替えて自然な態度で服を脱ぐ。
まずはトレーナーを脱ぐ、ノーブラなのでバストは撮影されただろう。
続けてホットパンツとショーツを一緒に脱いで、兄に声をかける。
たぶん背中からお尻は撮られてるけど、大丈夫な範囲だと思う。
私に呼ばれて裸の兄が登場、一緒にお風呂に入りました。
お風呂上りはタオルを巻いて、あとは全くの普段通りです。
撮影は無事に終了しました。
これで兄も会社で肩身の狭い思いをしなくて済むだろう。
しかしその翌日、兄が申し訳なさそうに帰宅してきました。
『どうかしたの? お兄ちゃん』
「実はな、作り物みたいだと言うんだよ」
まぁ事実だから仕方ない、やはり演技は苦手だな。
「顔が撮れてないし、本当に妹かどうか怪しいって」
『わかった。家に来てもらおうよ。それなら大丈夫でしょう?』
「でもそんなこと」
『私の言う通りにして。お兄ちゃんを嘘つきにはさせないから』
そして兄が同僚を三人連れて帰りました。
では計画スタート。
『お帰り、お兄ちゃん。あれ? お客さん? お風呂はどうする? 』
「後で親父と・・・いや、いつ帰るか分からないか。今から入るよ」
『でもお客さんは大丈夫なの?』
「僕達にはお気遣いなく。お部屋で待ってますから」
『そうですか。じゃあ入ろうか。お兄ちゃん』
お風呂で私達の声が聞こえるように大きな声で会話する。
ゴトリ!!
『お兄ちゃん。何か音がしなかった?』
「いや、気のせいだろ? ちゃんと湯船に浸かりなさい」
『はーい』
と答えつつ、いきなり風呂場の扉を開きました。
扉に張り付いていた兄の同僚達は大慌て。
『こんな所でどうしましたか? 何かお探し物ですか? 』
「い、いや、その・・・トイレはどこですか?」と苦しい言い訳。
『トイレですか? あの扉です。でも三人一緒には無理ですよ』
三人は私がお風呂から出る前に消えていました。
裸を見られちゃったけど、これも兄のためだから仕方ないな。
またその翌日、昨日の三人を兄が連れて帰りました。
こんな話は聞いてない、どういうことだろう。
兄が私だけに見えるように軽く右手を挙げた、ゴメンという意味だ。
『今日は何ですか?』
「こんな淫らな男を会社には置いておけないと思いましてね」
『兄が淫ら? 一体何をしたんですか?』
「あなたと一緒にお風呂に入っていたでしょう? 」
『でも、あなたに兄をクビにする権利がありますか?』
「僕は専務だよ。それに時期社長でもある。権利はあると思うよ」
『おかしいですよ。兄妹で一緒にお風呂に入っただけですよ』
「それでも身体に触れることもあるでしょう? 」
『身体を綺麗にしているだけです。考え過ぎではないですか?』
「それなら僕達とも一緒に入れますか? 」
『え、それは・・・』
「やはり無理でしょう。彼は淫らな男です。もちろんクビです」
『そんな・・・クビだなんて・・・一緒に入れます』
「では入りましょう。エロ兄貴もちゃんと聞きましたね」
『でも一緒に入ってる理由は光熱費節約のためなんです』
「だから何?」
『だから大勢で入られたら困るんです。節約にならないから』
「それなら僕の家に来なさい。光熱費を気にする必要はないよ」
『で、でもそんなの・・・ねぇお兄ちゃん。ダメだよねぇ』
「いや、たまになら問題ないかも。親父も気付かないと思うよ」
『お兄ちゃん・・・』
「決まりだな。お兄さんも認めてくれているしね」
また兄が小さく右手を上げ「ごめん」の合図をしていた。
何か事情があるのかもしれないけど、少しショックでした。
一緒に家を出ようとする兄に「お前はここで入ればいいだろ?」と。
その一言で兄は居残りとなりました。
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