加えて、給料は据え置きで別にそれほど悪いわけでもない。活動の為、資金は必要だった。私は、貯金を切り崩しても今回の事は成功させたかったのだ。
気をつけるべきは、通過事例と成り果てた、内部観察の日だけ顔を見せておくぐらいである。
それら転属作業を完了するのに、3ヶ月。思うに、何時でも切れる部署への転属願いであったので、すんなり受理された感は否めない。人員整理の際は、真っ先にお払い箱である。
実質、彼女の調査は残りの3ヶ月で行った。
最初の1ヶ月で、彼女の行動範囲と行動時間を把握した。
彼女が住んでいる、賃貸マンションの向かいに管理されていない昔の雑居ビルがあったのでそちらから、監視した。出社と帰宅、就寝のおおよその時間を把握する。
交友関係なども理解出来た。彼氏が一人。交流の深い同性の友人が二人。彼氏以外に、肉体関係のある異性が一人。その他、週2回ピラティスに通っている。
有難い事に、車は所有していないので、行動範囲、時間共に限られている。遠出はもっぱら、彼氏の車である。
2ヶ月目。
この月は非常に重要な、必ず成功させなければならない事があった。
合鍵の作成。
小笠原朱音のマンションのカギをである。
この作業が終わらない事には、その先の成功は有り得ない。
文字通り、鍵なのである。
鍵を盗み出すのは、彼女がピラティス行っている時間、リラクゼーション複合施設にいる間。
明確に言うなら、彼女がピラティスに行っていて、彼女のロッカーに彼女が居ない時間である。
時間にして、およそ1時間半。彼女のマンションの鍵は複雑なものではないので、合鍵を作るのは容易である。
試しに、私のアパートの合鍵を作ってもらったが、15分とかからなかった。
彼女が通う複合施設から、合鍵を作れる場所まで往復で30分。合鍵作成に若干時間を取られても余裕である。
私は、彼女が通う複合施設の会員に登録した。初回のチケット料金は格安で販売するらしい。2回目以降、正規のバカ高い料金を支払うことになる。
いわゆるお試し期間で、チケットは3枚入っていた。
2回分を下見に使った。ピラティスやヨガを行う部屋やロッカー、監視カメラの位置などを確認した。
ロッカーの鍵は、腕などに巻き付ける事が出来るタイプで、鍵を使う時だけソフトケースから出して使う物だ。ソフトケースには三桁の数字が表記されている。その数字が、ロッカーと対応する。
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