ある土曜の午後。
裕美の家へと健一がやって来る。
「こんにちは、牛乳の集金に来ました」
玄関へ、裕美がやって来る。
(夫は出張中で、家には裕美一人しかいない)
「あら、健一君。こんな御苦労さま」
玄関口にて、裕美は健一へ支払を行う。
金を受け取り、裕美へと健一が領収書を渡す。
「ありがとうございました。じゃあ、これで失礼します」
「健一君、こんな暑い日に大変ね」
「別にそんな大した事じゃありませんよ」
「ねぇ、ちょっと休んでいったら?せっかく来てくれたんだし、麦茶でも飲んでい
って」
「悪いですよ、そんなの。かまいませんから」
「いいじゃない、急がなきゃならない訳でもないでしょ?」
「はぁ・・・」
やや強引に、健一は裕美によって家のリビングへと導かれる。
そのまま健一は促されるままソファーに座るも、落ち着かずソワソワするばかり
だった。
裕美が麦茶を健一へ差し出す。
「ありがとうございます」
麦茶を飲む健一。
そんな健一の横へ、裕美が座る。
真横に座る裕美に、健一は緊張を高めていく。
「どうかした?」
「え?」
「何だか、落ち着かない様子だけど?」
「いえ・・・別に何でもありません」
何とか取り繕うも、どうしていいか分からず、ひたすら麦茶をチビチビと飲み続
ける。
「健一君と、こうしてゆっくりお話するのって初めてね。いつもは集金のやり取り
だけで終わっちゃうし」
「そうですね」
「私ね、健一君にはすごく興味があったの」
「え、僕に・・・?」
「礼儀正しくて、家のお手伝いも真面目にして、とってもいい子だなって、私感心
してたのよ」
「そんな事ありませんよ、普通にしてるだけだし・・・」
「フフ、健一君なら、学校の女の子にモテモテでしょ?彼女とかはいるの?」
「い、いませんよ」
「へぇ、そうなの?健一君は性格もいいし、ルックスもなかなかじゃない」
「そんな事は・・・」
「もし私が健一君と同い年だったら、きっと恋してたと思うわ」
「え・・・」
そんな健一へ、裕美が身体を寄せて距離を詰めた。そして健一の手の甲へ、裕美
は被せる様に自らの手を置いた。
健一はそんな裕美に、露骨に動揺を露わにさせていく。
「山中さん・・・」
「健一君だって、女の子に興味とかあるでしょ?」
「今はまだ、そういう感じで好きになる女子とかいないから・・・」
「そう?でも好きになる子はまだいなくても、純粋に女に興味はあるんじゃな
い?」
「純粋に?」
「裸とか、セックスとか」
健一は息を呑む。
「どうなの?」
「あ、ありませんよ・・・」
「本当に?」
「僕、まだ集金先が残っていますから、これで失礼します」
強引に、健一はソファーから立ち上がろうとした。
「もし健一君が、そういうのに興味があるっていうなら、私が色々教えてあげても
いいわよ?」
その言葉に、健一の動きがピタリと止まる。
「え・・・」
「私じゃ、健一君は不満?」
「からかわないでください」
「こんな事、冗談で言えるとでも?」
「・・・・」
健一の耳元へ、裕美が顔を近付け囁く。
「今、ここには私達しかいないのよ?後は健一君しだい」
健一の表情が緊張に強張っていく。
(続く)
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