ぬるいシャワーを浴びながら、琥珀の躰はまだ城太郎の余韻に浸っていた。
躰の奥から、白濁した熱い液体が逆流して、太ももを伝って浴室の床に滑り落ちる。
排水口に吸い込まれてゆくそれを見ながら、琥珀はなぜか少し、罪悪感を感じた。こっそり抜け出してきた部屋を思い出し、不安になる。
パジャマを着直して、バスルームを出ると、月明かりに照らされた部屋で城太郎が手招きをした。
「ほら、これ。昨日見せたいって言ってたやつ。」
小さな白い箱を琥珀に手渡す。
開けてみると、小さなピアスが1対、月明かりに照らされて金色に輝いていた。
べっこう飴のような黄金色のその宝石を、琥珀は以前、母親から見せてもらったことがあった。
自分と同じ名前の――そう、琥珀だ。
「…きれい」
「ブルーアンバーだよ。死んだ母さんの形見なんだ。」
「ブルー…。
でも、青くないね?」
琥珀の質問に答えずに、城太郎は微笑んで、ピアスをひとつ手に取ると、キャッチをはずした。
「…城太郎くん?私、ピアスの穴、空いてないよ?」
ブチッ
城太郎は、迷うことなく琥珀の右耳に小さなピアスを突き刺して、力を入れた。
小さな悲鳴があがって、血液が数滴、滴り落ちる。
指についた赤い血をぺろりとなめて、城太郎が微笑む。
「こっちの処女も、もらっちゃったね」
ズキズキと痛む右の耳たぶを押さえる。
突然のことにショックを受けて、思わず涙が頬を伝った。
「…ごめんね?痛かった?」
琥珀を引き寄せて、城太郎が囁く。
頬の涙を優しくキスで拭う。
残酷さや凶暴さをどこかに隠した、優しい城太郎。
その脆さに混乱し、危険を感じながらも、ますます惹かれてしまうのは何故なのだろう。
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