青天の霹靂ともいえる事態に見舞われた主婦は、どうしていいのか分からなかった。テレビの画面や映画、雑誌で目にするような美青年に誘惑されるなんて、想像したこともない。
背中から柔らかく抱き締められる喜びは、平凡な日々を生きる主婦を狼狽させた。誰ともわからない他人という不安。もう自分の身にこんなことは一生起こらないのではないか、そんな迷い……。
本来なら危機感を感じて叫び声を上げるところだが、抑圧された浅ましさが判断を鈍らせる。どんなに善良な人であれ、欲望を秘めている。それをコントロールするのは人生で学んだ道徳心であり、自分が持つ理性でもあり、良い人でありたいとする最低限のプライドなのかもしれない。
そんな自分を保つ為のそれらを抑制させる彼の手が、抱き締める我が身に温もりを伝えてくる。
カジュアルながら暖かいコードの前のボタンを外し、侵入をさせてくる。その手がお腹を通り過ぎて脇腹から上の辺りで止まり、心臓の鼓動の男がやけに大きく聞こえる。
やや見下ろす位置にある舞台上では戦隊ヒーローと悪役が戦いを繰り広げ、鳴り響くその音声が耳に届いて主婦は我に返った。
自分は一体、何をしているの……?
着ているセーターの下に潜り込んできた手が、ゆっくりとインナーを捲りあげて素肌に触れる。
ゾワゾワと鳥肌が浮き立った肌。男性にしては細く柔らかい指がブラの下まで移動をし、本気で声を上げようと思うのに出せない……。
彼の手の魅力的な誘惑に抗うだけの気力がなく、ブラのカップを包み込まれ、吐息が漏れる。たったそれだけのことなのに、主婦は自分に嘘をつけないことに顔を背けた。
「とっぉぉっー!」「ぎゃあああー!」
眼下で戦いを繰り広げる戦隊ヒーローと悪役たち双方の音声が、自分の場違いな状況を否が応でも主婦に意識させる。下へと下がる彼の手首を掴んだものの止めることはできず、スカートの中へと侵入することを許してしまった。
この時になって初めて本気で抵抗を試みようとしたが時すでに遅く、茂みの中を進む指先が敏感な蕾を捉えてしまっていた。思わず「はっ!」っと息を漏らし、片膝を上げた太腿で青年の手を妨害してみたが、指先の動きを止めることは叶わぬまま腰が引けていく。
指先の繊細な所作が覆いかぶさる包皮を揺さぶり続け、ショーツの隙間から冷涼な空気が入り込むそこに幾重もの波紋が広がっていく。力の抜けた膝が腰の位置を下げさせ、後ろから抱き抱えられて座り込むこともできない。
誰かに見られていないか、子供たちは……。
絶えず気にしなければならないが、親子連ればかりの皆の目は、互いの顔を見合わせるか舞台上に向けられている。無論のこと我が子たちも舞台に釘付けとなった目を剥がそうとはせず、母である自分を気にする理由がないようだった。
右端にいる自分達を目にする者がいたとしても、彼らから見える左側面はコートで下半身は隠れ、遠目には仲の良い夫婦か恋人に見えるだろうか。
隙間から入り込む冷たい空気が粘液まみれの恥部を冷やす間もなく、動かされ続ける指にそこだけ熱を発生させる。こんな公衆の面前で官能に染まる我が身に、危機感を覚える。
緊張する気持ちとは裏腹に高まる感度が、主婦から余裕を奪っていく。ぷっくりと膨らんだ蕾が指の下で、怒りを主張するようにコリコリとした硬さの自己主張を伝えている。粘度のある泉が主婦の興奮度を如実に証明し、達するまでの猶予がもうないことを、余裕のない反応のが告げていた。
卓はそっと辺りを窺いながらパンツのファスナーを下げ、主婦の着るコートの深く入るスリットに手を振る入れる。ショーツを脇に寄せて取り出したペニスをあてがうと、静かに腰を引き寄せた。
主婦もよく知るその生暖かな感触に抗おうとしたが一瞬遅く、次の瞬間には目を見開いていた。
膣の入口が沈み込み、押し広げられながら入ってくる感触が信じられずなかった。こんな所で子供たちもいるのに、あり得ない………。
でも確実に奥まで届いたペニスの感覚が現実を思い知らせ、体が緩やかに前後にと揺れ始めていた。
待って、ちょっと待って………。
付けてない、何もつけてないじゃない……!
生で挿入された懸念と不安が主婦を狼狽させる。
体を捻って青年にやめるよう顔で訴えたが、その思いは届かない。辺りに顔を向けたが、叫ぶこともできない。どうしよう、どうすればいいの……。
揺れる視界の中で焦るだけで解決策は何も浮かばず、やがて訪れる快感に思考能力の自由が失われていく。入ってきたときから気付いていたが、夫のモノよりも立派なサイズなのだ、硬くて傘の張りの良さまで分かる。拒絶しなければいけないのに、蟻地獄に引きずり込まれていく……。
低い柵に両手を置いて掴み、舞台上の内容を理解出来なくなったまま顔を前に向けていた。逞しいモノが感じる所を絶えず動き回り、肩を怒らせた主婦が恍惚する。この状態から自力で抜け出すことは到底無理な話。常識的な観点からは今すぐにやめさせるべきだが、ひとりの女の立場からは少なくとも今はペニスを抜いて欲しくはなかった。
いけないと頭では分かっているのに、後で後悔をすりに決まっているのに、今はただ突いて欲しいと願う女心が吐息をつかせる。眼鏡の奥の目をとろんとさせて、顎を小さく跳ね上げる。
2メートル先では嬌声を上げる我が子たちの頭が揺れ動き、お願いだからもう少し戦隊ヒーローショウに夢中になっていてと、母は虚ろになった目でペニスを味わう。
青年の腰の動きが早まる。
駄目、そんなに突いちゃ……。
腰を両手でがっしりと捕まれ、奥を突かれる。
駄目、立っていられなくなる……。
なおも突かれ続け、視界がぼやけてくる。
駄目、何も考えられなくなってくる……。
忙しなく出入りするペニスが、体を揺らす。
駄目、もう本当にいっちゃうから……。
ねぇ、ねぇったら……我慢できない………。
スキーのジャンブ台のように背中を反らせた主婦が体を強張らせ、数回弾ませた。
気が付けば柵を前に座り込み、青年の姿は消えてしまっていた。あんなに我慢を強いられながら、達することは久しぶりだった。
いや、セックス自体が久しぶりだったのだ。
まだ膣の中に入っている感覚が残っている。
不意に手に何かを握りしめていることに気付き、手の平を開く。
そこにはあの青年が残したと覚しき連絡先が記された紙片が、小さく折り畳まれて握らされていたのだ。その場で破り捨てることは簡単だったが、いつでも出来ることだと自分に言い訳する自分をどこかで恥じながら、コートのポケットにしまう自分がいる。
何をしているのかと自分でも思うけれど、いつでも処分はできる。
そう、いつでも捨てられるのだ。
その気になれば………。
※元投稿はこちら >>