アパレル彼女に努める真弓の仕事は、自分の受け持つ十数店舗の管理である。抜き打ちで各店舗を訪れて、スタッフとして勤務することも仕事のうちである。
キーワードを叩いていた指を止めると必要な物をバックに入れて、上司に訪問先を告げると社屋を出て駅に足を向けていた。
いきなり真弓の姿を見たスタッフたちはそれぞれの顔に緊張という文字を浮かべ、内心で苦笑をする。それでも1時間もすれば気持ちも解れ、良い意味で力が抜けるのは真弓の人柄なのかもしれない。
不意に男性の単独客が戸惑いながらやって来た。
無理もない、レディース服専門の店なのだから。
あまり多くはないが近年はこういった男性の一人客も見られるようになり、意外とお金に糸目をつけないからドル箱なのだ。何故ならパートナーへのプレゼントだったりするので、財布の固い女性客よりもいいお客さんだったりするのだ。
真弓の腕の見せ所だった。
男の自分がこんな店に1人で来るなんて、我ながらどうかしていると思った。けれど彼女が嬉しそうに喜ぶ顔を想像すると、これくらいのことは何でもない………といいたいけれど、やっぱり恥ずかしい。ほら、あそこの女性客たちがこちらを見てコソコソ何かを喋ってるじゃないか、あ〜あ早く買い物を済ませて出ていきたいぜ…………。
よほど不審者に見えたのか心細そうに見えたのかのどちらなのか、店員の中でも一番年齢がありそうな女性、店長らしき人が速やかにやって来るのが見える。さすがにこちらの事情を察した接客をしてくれて、やっぱり店長なのだろう。
この店で一番年齢が高いであろうことは見て分かるけれど、40代……いや30代のどこかかもしれない。前者ならば恐ろしく綺麗な人で、後者ならば大人の魅力……色気が凄いじゃないか。身体に馴染んだスーツがボディラインを浮かび上がらせて、腰の括れもお尻の形も目のやり場に困る………。
下着売り場でもないのに背徳気分になる。柔らかい物腰で熱心に服を選んでくれるのはありがたいけれど、その……なんというかハラハラさせる。
だって今にも、あっ……………!!
少し緩い胸元のブラウスに名札なんかを付けているせいで、屈むからその名札の重みで中が見えてしまったのだ。仕事熱心なのはいいが無防備過ぎやしないか……。
本人は品物を選びながらこちらには喋りかけ、何度も屈み込むから胸元がパカバカ開くのだ。時間にして数秒に過ぎないが、一部がレース仕立てになって肌が透ける生地を用いた白いブラジャーがチラチラ見える。エロチックで上品さを兼ね揃えて、この綺麗な人のセンスが分かる。
中腰になるのが疲れたのかついにしゃがんだのを見て、胸元が見えなくなって少し残念……。膝上数センチのタイトスカートでもしゃがむと、ずいぶんとずり上がって短くなる。さすがに大人の女性らしく膝を閉じて、こちらには向けることはなく上半身をこちらに向ける。あーでもないこーでもないとやり取りをしながら女性は、しゃがんだまま横に足をずらして隣の商品を手にする。
もうこんなところでいいかと精算をしてしまいたいのに、こう熱心に対応をされると悪くて断りづらい。そして、図らずもその瞬間が訪れる。
可能な限り膝を開いて横移動をしたまま停止、手にした商品を持ちながら身体ごとこちらに向き直ったのだ。太腿の間の暗がりに照明の光が届いてしまい、ブラとお揃いの下着を惜しげもなく披露する。
フロントの一部が透けたレースのカーテンのようになっていて、黒々とした恥毛があまりにも鮮やかに透けて見えていた。何より白い内腿の柔肌に太いレースの帯びが巻き付き、そこから手前にと肌の色が違って見える。それは即ちパンストではなく、セパレートタイプのストッキングを意味していた。
ヤバい、デニムの前が急速に窮屈になっていくことを自覚する。こんなに綺麗なのに見かけによらず、アソコのほうは剛毛と知ってそのギャップに軽いショックを受けた。
あそこに顔を埋めたい………。
そんな強い欲求を感じながら、最後の商品は進もられるがままにまとめて購入してしまった。満面の笑顔に見送られ、女優の井○遥に似ているあの店長らしき女性の顔が、いつまでも頭から離れなかった。
よほどあの女性のことが、心に残っていたのだろう。車をコインパーキングに駐車していることを失念し、気がつけば電車に乗り最寄り駅に着いて溜息をつく。しかたなく一旦帰宅して荷物を置いてから、駅にとんぼ返りである。無駄な駐車料金がかさむ前にピックアップしなければならない。
夜の帳が下りはじめた電車内は当たり前だけれどラッシュアワーを迎え、普段は電車を利用しない身としてはいささか居心地が悪かった。密集状態に耐えてやっと降りるべき駅に到着。下車していく者たちに続いてホームへと降り立つその時、あの女性の顔が見えてドキリとする。
何も考えずに何気なく今降りた扉から再び乗車すると、運良くあの女性の背後に立つ幸運に恵まれて自分でも動揺してしまった。これからなにをしようというのか………。
考えるより先に手が動き、女性の柔らかいお尻に触れてしまう自分がいた。何をしてるんだと理性が訴えかけてくるが、自分でも大胆に腰の上にあるスカートのファスナーを下げ、ウェストを回してその位置を横までずらすと手を侵入させる。
戸惑う女性を無視して手の平をあの剛毛をすけさせていた場所に当てがい、指だけをその股の下に滑り込ませる……。
電車の走行音も耳に入らず、柔らかい場所を指の腹でのの字を描くように動かす。すると女性が膝を曲げて腰を落とし、なんとか抗おうとする。
でもその指先には薄手の生地を通り越し、浸潤してきた湿り気を確かに感じとっていた。
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