夫と夜の営みがなくなって、もうかれこれ8年になる。
正確には妻である自分が拒むようになったのだから仕方がないけれど、セックスをする相手としてどうしても受け入れられなくなっていた。
これと言って大きな原因は無いのだけれど、小さな積み重ねからくる事実が、女として身体が拒否をするようになったのだ。
加齢臭、中年太り、口臭、顔頭の皮脂の過剰分泌等々………理由を言えばきりがない。
セックスなんて無ければないで、困らない。
煩わしいだけ、そう思うようになっていた。
でもそれは夫との印象が強いからで、まだ45歳の身体は生理が近づくたびに違うと訴えてくる。
それは40を過ぎて顕著になるのだから始末が悪くて、仲村静香は誰にも言えず困っていた。
そんなある日、ひと回りも歳下の会社の同僚から告白を受けて、人生が一変することになった。
既婚者だからと断わったのだけど、彼の気持ちは真剣そのもの。
悪い印象のない彼を傷付けないようにと、老舗の喫茶店に呼び出して誠心誠意、話をさせてもらった。
女として求められるときめきを十数年ぶりに味合わせてくれて、嬉しかった。
正直にその気持ちを彼に伝え、静香と彼は揃って店を出た。
納得してくれたものと信じていたけれど、そう思っていたのは静香だけで、どうやら彼は違ったらしい………。
それは、突然の事だった。
細い路地にある店を出てすぐに、ビルとビルのかなり細い間に引きずり込まれ、いきなり彼は唇を重ねてきた。
満足に抵抗も出来ないうちにその場にしゃがみこんだ彼に片脚を持ち上げられて、スカートの中に頭を…………。
悪夢、青天の霹靂、何とでも表現できる。
憤りと恐怖、戸惑いと羞恥心がない混ぜになる中で不意に下半身から鋭い感覚が走った。
ショーツを横にずらして無我夢中でむしゃぶりつかれるのは不本意だけれど、身体が言うことを聞かなくなっていた。
立ち上がった彼にそのまま貫かれ、激しい痛みに静香は悶絶した。
あまりの痛みに喉が詰まって、悲鳴も出せなかった。
それも数分が経つと抗らえぬ快感に包み込まれて、静香は必死に彼の首に両腕を回してしがみついていた。
硬くて、大きくて、熱くて、逞しくて………。
あんなに夢中になっていたのに、事のあとは自己嫌悪に苦しむ自分がいた。
仮にも人妻なのに、レイプされて感じるなんて。
いいえ………そもそも受け入れて求める自分がいた時点で、詭弁ではないのか……。
その迷いが彼を拒むことが出来ず、それからも彼の求めに応じる自分を止められなかった。
精神的なこと除けば彼のペニスは堪らない快感を静香にもたらし、全てを忘れさせた。
ただ、一点を除けばだけれど………。
どうしても最後まで集中出来ない理由、それは痛みだった。
そのお陰でオーガズムまで達することが出来ず、悩みに悩んで静香は病院に足を踏み入れた。
診察の結果、特に異常はないというのだ。
そんな筈はない、確かに毎回痛いのだから……。
女医のいる病院を探して診察を受けたけれど、ここでも同じ見解だった。
静香は納得出来なくて、藁にも縋る気持ちで患者に寄り添い幅広く診てくれる病院を探し出した。
それは、辛かったですね……。
細かく診察していきますからね、原因を見つけましょう…………。
けれども医師の顔は曇るばかりで、ここで駄目ならもう諦めよう…………。
静香は、そう思った。
あんな乱暴な自分本位のセックスをする相手を受け入れたから、きっと罰が当たったのだ。
意気消沈する静香に、医者は静かな口調で語り始める。
診た限りでは異常は認められませんがココだけの話、お相手は少し乱暴ではありませんか……?
頷く静香を見て確信したように、医者は言った。
精神的な傷、つまりトラウマから痛みを発症することは、実は珍しくいことではないんです………。
痛みの記憶が身体に痛みを感じさせるなんて、目から鱗だった。
ひとつ試して見ませんか……?
医者の提案に、静香は素直に従った。
この医者の言う通りならば、新たな記憶で塗り替えることが出来れば痛みから開放されるのではないか、そんな淡い期待に静香は縋った。
まだ女として求められる時間は、多くはない。
その間、痛みを抱え続けるなんて堪らない………。
ラテックス製の医療用手袋をした指に秘唇を開かれ、指の腹でクリトリスが刺激される。
この治療とも言えないような医者の行為に静香は手で口を塞ぎ、必死に声を我慢した。
いい大人の女がこんな所で喘ぐなんて、笑い話にもならない………。
そのうちに膣の中に挿入された指らしきものが、ゆっくり前後に動き出す。
クリトリスに触れられながら、膣の中もゆっくりゆっくり刺激されていく。
これで感じるなというのは、酷でしかない……。
声を詰まらせながら卑猥な息使いを続ける女を目の前にして、医師の彼は患者に対して久しぶりに勃起をしてしまった。
職業柄たくさんの女性器を目にして見慣れているのに、こんなにも感じて喘いでいるのだ。
地味に見える女性だけれど、決してブサイクな人ではない。
女性としてはむしろ身体の全盛期を迎え、そういう意味では食べ頃なのだ。
指をゆっくり出し入れするだけで中がこんなに潤いを見せ、強かに締め付けてくる。
もう、我慢が出来なかった。
クスコで拡げて診ても異常はありませんし、こうして触診しても大丈夫なようですね………。
でも男性器を挿入されると、やっぱり……なんてことは珍しくありません……。
どうでしょう、あくまで治療目的でしてみませんか………?
静香は医師の言った言葉が今いち理解が出来ず、聞き返していた。
つまり、挿入して試してみるんです……。
痛みが出るならやり方を変えてみるとか、どうしても痛くて我慢出来ないのならまた考えましょうか………。
もし痛くならないのであれば途中で中断も出来ますからね、試してみませんか………?
医師の彼は、道具とか器具を使って挿入するとは1度も言わなかった。
それはつまり彼のペニスを挿入するということと考えるのが、きっと自然なのだろう。
いざ本番でまた痛い思いをするくらいなら、ここで医師の彼に検証してもらったほうが懸命なのかもしれない。
彼の言葉を信じるなら痛みが出れば考えてくれるし、感じるだけなら自分に恥をかかせる前に中断してくれるはず……。
静香は恥を忍んで、彼の提案を承諾した。
後で考えてみれば男性器を可能な状態にしてからじゃないと駄目なはずなのに、彼はすでに勃起していたことになる。
だって承諾してから間もなく、挿入されていたのだから………。
彼はゆっくり丁寧に、静香を気遣うように入ってきた。
入口から押し広げられながら中程まで進み、何度か後退をして見せながら優しく奥に到達する。
自分本位な歳下の彼とは雲泥の差があり、ペニスの感覚を味わう余裕がある。
安心感とその逞しさ、擦りあげられる甘〜い感覚が次第に静香の体温を上げていく……。
時々かけられる彼の気遣う言葉も嬉しくて、それなのに恥ずかしくて短い返答を返すだけ。
いつ痛みを覚えるのかと身構える恐怖心が、いつしか快感を追い求めるだけの気持ちに入れ替わっていく。
両腕で自らを抱き締め、委ねた身体が揺れる恥ずかしさは陶酔へと変化する。
まだ求められるだけの魅力のある女だと、目隠しの為に引かれたカーテンの向こう側から、這い上がる快感に身を捩る。
羞恥心は背徳感へと入れ替わり、卑しい貪欲さが突き上げるペニスを純粋に欲しがった。
医師の彼はカーテンの向こう側から聞こえる静香の吐息に興奮し、粗い息使いに腰の動きを止められずにいた。
ペニスに絡みつかれる快感に顔をしかめ、強情に声を出さない静香の奥を攻め始めた。
静香はカーテンの向こう側から聞こえる医師の彼が時々漏らす喘ぎに、身体の奥がキュンとなった。
やめてよ、そんな声を出さないで………。
そんな想いが自分を興奮させ、我が乳房を鷲掴みにする。
もっとして、もっと突いて………。
はしたない気持ちが淫らにさせて、奥を突かれる心地良さが堪らなくさせる。
診察台で脚を開き、激しく身体を揺らす………。
下半身で腰を打ち付けられて、肌と肌が接触する音が鳴り響く……。
いつの間にか目隠しの為のカーテンを潜り抜け、医師の彼が姿を表していた。
キャスター次のカーテンを背後に押し退けた彼は、驚愕する静香が抵抗し切れないのをいい事に、衣類と下着を押し上げて乳首を口に含む。
恥ずかしさと女の悦びが同時に押し寄せて、下から這い上がる快感に考える余裕がない。
唸り声を上げる彼に危、静香は機感を覚えた。
この場合の男性は、女ならその経験から射精が近いと知っている。
彼を制さなければ、なんとかしなければ……。
気持ちが焦るばかりで自分も快感で身体が言うことを聞いてくれず、そればかりかオーガズムがすぐ目前まで迫っていた。
嫌っやめて…………。
内心でそう叫んだのが、最後だった。
やや起こされた状態の上半身が、医師の彼に乳房を揺らしながら突き出すように背中を浮かせ、弓なりに反らせた……。
枕を横に飛ばして顎を上げ、頭頂部が接地する。
顔の筋肉を弛緩させた静香が目を閉じたまま、開いた口を力なくパクパクと決して閉じることなく動かし続ける。
不意に医師の彼が奥に突き入た途端に動きを止めて、その腰を震わせる……。
静香はその間の記憶が、飛んでいた。
ただ身体を大きく弾ませて、強大なその甘さの中に浸りながら痙攣を止められない自分の身体を、持て余すだけだった……。
数分も経過すると次第に意識が鮮明に戻り始め、中に射精されたショックで暗い気持ちになった。
心配しないで、緊急避妊ピルを処方しますから。
そういう問題ではないと、彼に抗議を仕掛けたその時………。
今まではいなかった若い医師の姿がそこにあり、彼と入れ替わりに静香の中に入ってきた。
何のつもりですか…………?
どういうつもりでこんなことを………?
やっと言葉に出した静香だったけれど、その声は弱々しく尻切れとなって………。
気付けば熱くて硬い、元気な若いペニスの躍動に酔いしれる静香がいた。
こんなの、こんなの許さない…………。
もっとしてくれないと、訴えるんだから……。
静香の悩みはもう、存在しなかった………。
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