あの体験から2週間近くが過ぎ去り、自分でも思っていた以上にショックだったらしい。
未だ記憶は生々しくあの日以来、お気に入りだったワンピースやスカートを身に着けられなくなっていた。
黒のシャツブラウスのボタンを止めて、グレーの上下パンツスーツを身に纏う。
革製の細いベルトをワンポイントとして、か細いウエストをさらに強調させる。
玄関に向かう飼い主を追い越して前に躍り出ていく愛猫が、構ってほしいとばかりにコテンッと倒れ込む。
野良猫だった頃の野生をすっかり忘れ、四足歩行の動物が弱点であるはずのお腹を晒し、頭をもたげて飼い主を見上げる。
最近あまり構ってあげられていない申し訳無さを感じて、今日は早く返ってくるからねと愛くるしい毛玉を撫でて、後ろ髪を引かれながらドアを開けた。
今日はあの子の好物のお刺身を買って帰ると心に決めて、駅までの道のりが自然と早足になった。
駅の地下にあるスーパーでお刺身とビールを購入し、部屋で待ちわびているであろう愛猫を思い浮かべ、トートバックに保冷剤と一緒に収める。
ホームまでの短い距離を歩いただけで、湿気が身体に纏わりついて汗ばむ肌が気持ち悪い。
早く帰宅してシャワーを浴びたい……。
ホームに滑り込んでくる電車が引き連れた湿気を含んだ風が、頬を不快に撫で上げる。
開いたドアから人があらかた吐き出されると、入れ替わるように乗り込む人に続き、ニコール理子車両の中へと足を進める。
ドアの横に落ち着きたかったけれど、すでに女性が占領してしまっている。
仕方なく彼女の後ろに着いて、彼女が下車すればその位置に行けるようにした。
慣れているつもりでもラッシュ時の電車は、いつまで経っても好きにはなれない。
知っているはずなのに動き出しだ車両の中で、指折り下車駅までを数えてしまう癖が抜けない。
一駅が過ぎて二駅目に到着すると目の前の女性が下車して、その空いたスペースに一歩足を踏み出そうとする。
目はドアの横に設置されている手摺に向けられ、何の疑いもなくそこを掴めると手を伸ばすところだった。
不意に視界が男性の背中に遮られ、陣取る大人気なさになんて奴だと忸怩たる気持ちが湧き上がった。
きっと性格が悪くてパートナーもいない独身だろうと、自分を棚に上げてその背中を睨んだ。
ただでさえ気持ちが穏やかではないのに、まるで足腰の弱い老人のようにお尻にと背中に身体を密着しては離すことを繰り返す人物に不快感を覚える。
その感じから男性に違いはなく、エスカレートしつつあるその行為に憤りを感じ始めていた。
そしてお尻に下半身を密着させたままになり、その存在感を知らしめるように押し付けてきた。
思い切り足を踏んづけてしまおうか、そんなふうに思い始めていた時だった。
目の前の男性が迷惑も顧みず身体を反転させて、至近距離で向き合う形になる異常さに恐怖を覚え、ニコール理子は身を固くした。
横に視線を向けても男性しかおらず、座席側を見ても男性しかいない。
ちょうど考えれば助けを求められるはずなのに、男性というだけで声を上げられない……。
そんなニコール理子を見透かしたように、後の男が露骨にお尻に触れてきた。
恐怖と嫌悪感に引き攣らせた顔でお尻に触れる手を繰り返し払い除け、奮闘しながらも焦りを見せるニコール理子のブラウスの胸の部分を、前に立つ男が触れてくる………。
いよいよ異常な事態に真っ白になる頭で、手だけが孤軍奮闘するように抵抗を続ける……。
胸を掴む手を払い除ければ、お尻を触る別の手を急いではたき落とす。
執拗に胸に触れてくる男の手を払おうとして逆に手首を捕まれ、反対側の手も拘束されてしまった。
身の危険を感じて、心臓が早打ちする。
どうなってしまうのか、後からウエストに回してきた手が細いベルトを外しにかかる。
ファスナーも下げられてあっさりパンツが緩むと、お尻が半分ほど露出していた。
ブラウスに合わせて上下を黒色の下着を身に着けていたニコール理子は、やや面積の少ない生地が白い肌をしたお尻を際立たせる。
サイドが紐のように細く、さらに面積が少ない前側は恥毛を透けさせるスケルトン生地……。
男の手は躊躇なくサイドの紐状の部分と肌との間に指を滑り込ませ、そのまま汗ばんだ白い肌を這わせて前側へと手の平を滑らせていく。
指先にふさぁ〜っとした恥毛が触れて、その形状から整えられているのが伝わってくる。
少し下に這わせると秘裂に辿り着き、一際汗ばんでいるのが分かる。
そこを人差し指と薬指とで左右に広げ、中指の腹に触れる柔らかい包皮を上下左右へと繊細に動かしていく。
前側の男に拘束された両手に力が入り、反応する身体とは対象的に無表情な顔が自分のショーツの中で蠢く手を、まるで他人事のように見下ろしていた。
ショックのあまりニコール理子の身体と精神は切り離され、自分事ではないかのように受け止めるしかなかったのだ……。
自分の本体は離れた位置にいて、身体は別……。
その身体の一部を覆う包皮が男の指によって本体の表面をうねうねと動かされ、そこに血流が集まっていく……。
閉じようとする太腿を触れていない片方の手が力強く固定し、忙しなく動かす指が溢れ出る愛液を掬い上げながら、そこに塗りたくる。
もう抵抗する気持ちが萎えたニコール理子の両手は開放され、怪しく蠢くショーツの膨らみの上から自分の手を重ねる。
その彼女の黒色のブラウスのボタンを上から順番に外され、白い肌に映える黒いブラジャーが男の目に触れた。
ショーツとお揃いらしいそのブラはカップの下側の半分以外、カップの上部と身体に巻きつける背中までのパーツもスケルトン素材で出来ている。
辛うじて乳首はカップの中に収まる造りになっているらしく、男心をそそらせる。
ボタンを外していく最中に抗おうとでもしたのか、指を絡ませてきたけれど力が入らない彼女の指は形ばかり抵抗で終わった。
どうにか手の平に収まらない程度のサイズらしいその乳房を包むそのブラは、補正機能が皆無らしい下着であることを触れる男の手に伝えてくる。
機能よりも見た目の美しさ重視のブラジャーは、彼女のサイズにフィットしていてホックを外しても、その大きさは変わらない……。
ピンク色を期待した乳首は日本人の特性をそこに表し、残念ながら茶色をしている。
でもそれは彼女の白い肌と顔立ち、丁度よい大きさの乳輪と突き出た乳首が男の目に魅力的にしか見せない…。
両端を曲げて腰を落とし、乳首に吸い付く男の顔を力なく押し退けようとするニコール理子の表情が歪む。
背後の男によってお尻の下までショーツを下げられ、壊れた機械仕掛けのように動き続ける男の指が、彼女の防衛心を削ぎ落とす……。
乳首に舌を転がす男の顔の下で、くちゅくちゅとその場にそぐわぬ音が車両の走行音に溶けてなくなる。
男たちの手がそれぞれ配置換えしたのか背後の男が乳房を揉みしだき、ニコール理子の前にいる男が中指と人差し指を同時に挿入する。
抜き差しを開始すると彼女の口が開いて呼吸を乱し、切なそうに眉毛を下げる………。
均整の取れた美貌が歪み、彼女の感度の良さをそのまま見せるように指の動きに合わせて息を吐く……。
この日本でこんな鬼畜の所業がこの人混みの中で自分の身に行われるなんて、前回と同様に想像出来たというのか……。
もはや理論的な思考など働かないニコール理子の頭に、次から次へと魅力的な感覚が注がれる。
彼女を挟んで顔を見合わせた2人の男の片方がもう一人に目配せをすると、泥濘の中からそっとその指を抜く。
その男が彼女を引き寄せ、彼女の背後にいる男が彼女の腰を自分に引き寄せた。
喉の奥に何かを詰まらせたような声を出した彼女が頭を跳ね上げ、前後に揺らし始める。
引き寄せられた男の胸にしがみつき、しばらく顔を埋めていたニコール理子が熱い吐息で男の胸を温め始めた。
皿の上に乗せたプリンを揺らせば波打つように、男が深くまで入れる度に密着した彼女のお尻のお肉が波打つように歪む。
ただでさえ感じやすい身体なのに生理が近づく時期に入り、前後の男に身体を支えられていなければ崩れ落ちてしまいそうで、堪らない………。
その悍ましいくらいの快感に身を委ね、寄せては返す波のように奥まで来ては後退する硬いペニスに、何も考えられない………。
男のYシャツを噛む彼女の口が唾液を染み渡らせ、顎を上げて男に官能に染まった彼女の顔を見せつける………。
飲み込まれては現れて沈み込んでは姿を見せる艶々としたペニス、それを見下ろす男が鷲掴みにした彼女のお尻に爪を立てる。
振り払っても振り払っても追いすがる射精感に追い詰められて、その時が迫る……。
優しく強かに絡みつく肉壁が平常心を奪い、躍動する腰のペースが自然と上がっていく。
壁に爪を立てて足掻くように腰を動かし続けて、突いて、突いて、突いて……………。
不意に動きを止めた男が身体を震わせ、ゆっくりと長い吐息を漏らした。
ペニスを抜くのと同時にハンカチで漏れ出る精液をあらかた拭い取り、今度は彼女の背中を背後の男が受け止める。
前にいる男が彼女の両膝を持って持ち上げ、準備していたペニスを難なく挿入する。
背後の男に背中を支えられながら自分を持ち上げる男の首に縋りつき、奥を突かれて目を閉じて感じる美しきニコール理子が小さな声を漏らす……。
すぐに身体を痙攣させ、はふはふっ…と、乱した呼吸が終着点に到達したことを男に告げた。
彼女の右脚を下ろし、左膝を抱えて腰を打ち付けていく。
じゅぶじゅぶ……と卑猥な水音を結合部から響かせ、公衆の面前では見せてはいけない恍惚とした表情を男に見せつける……。
床に着けた足の膝がかくかくと折れても崩れ落ちることを許さない男が、尚もペニスを突き入れていく。
ニコール理子の首筋に口と鼻を付けて、その甘い体臭を吸い込みながら迫りくる射精感に、男は逆らわなかった。
息を吸うよりも吐き出すことに忙しくなっていたニコール理子は、また狂おしい快感に包まれゆく感覚に我を忘れ、女の特権を享受していく………。
その足元には愛猫の為に購入したお刺身の入ったトートバックが、存在を忘れ去られ眠っていた。
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