スーツ姿の集団の後に並び、定刻通りにやって来た電車に乗り込む。
やっぱり今日はいつもより混んでいる印象がありながら、計算通りにドアの付近に立つことが出来た。
上京した頃は東京のマンションに住むことを夢見ていた遥香だったけれど、田舎との家賃のあまりの違いに絶句したことを覚えている。
ワンルームで安くても提示された家賃ならば田舎では駐車場付きの3LDkに住むことができ、それを考えたら東京に住むことは諦めた。
不動産屋の勧めで県を越えただけで、人間らしい間取りのアパートに住むことが出来た。
通勤時間が増えてでも遥香には譲れない条件だったから仕方はないけれど、最近になって高層マンションが多く建ち並ぶようになって人口が増えた影響は如実に感じる。
それでも今日みたいな混雑は、祭日でもないのにどうしたことかと遥香は困惑していた。
それにしても、この不快感はどうにかならないものかと思う。
首筋に後ろに立つ人の息がかかって、気持ちが悪い。
お尻にも何かが当たるではないか……。
それが何かなんて、考えたくもない。
それなのにそれが自己主張をするようにはっきりと形を成してきて、電車の揺れに乗じて当たるなんて許し難い……。
不意にそれが自分のお尻の溝に押し付けられるようになって、いよいよ不快感は限度を越えた。
遥香は腰をよじって相手に意思表示を伝えたつもりだったけれど、どういうわけか相手はずらしたお尻に合わせて当ててくる気がする。
ずらしてもずらしてもお尻の溝に押し付けてくるのは、どう考えてもある種の意思を感じる。
遥香は扉のガラス窓に映る相手の顔を睨みつけ、その相手も遥香の視線に気付くと目を逸らした。
やっぱり………と、遥香は相手の意図的な所業だと確信を抱く。
どうしてくれようか、こちとら痴漢に涙していた頃の、もう若い女の子ではないのだ。
次の駅でホームに引き摺り降ろそうかと考えていると、遥香の横に並ぶ男の手が腰に伸びてくるではないか。
気持ち悪くて、その手を邪険に振り払う。
それでも懲りずに何度も伸びてくるその手を払い、顔を前に向けたままの横に立つ男を睨みつける遥香。
いきなりスカートの裾を掴まれて、急いでそれを阻止していると今度は後の男が両脇に滑り込ませてきた手に、胸を鷲掴みにされる。
こんな乱暴な痴漢は初めてだった。
遥香は脇を閉めて抗い、捲りあげられそうになるスカートも必死に抑えようと躍起になる。
いやらしく揉みほぐしてくる胸に気を取られていると、スカートが持ち上がる。
下半身に気を取られると、ブラウスのボタンが外されようとしてくる……。
これまでは数多くの痴漢の被害に遭ってきたけれど、これ以上のないパニックに陥る。
片膝を曲げてスカートの裾を抑える隙にブラウスのボタンがひとつずつ外され、その手を引き剥がす隙にスカートが持ち上げられていく……。
必死にもがく遥香だったが、周囲にいる人達は誰もが無関心だった。
それがいかにも不自然で、遥香は気付いた。
彼等は分かっていて無視を決め込んでいると……。
即ちそれは周囲にいる人間はみんな協力者であることを意味していて、遥香は孤立無援であることを嫌でも悟らされる。
痴漢集団………絶望的な言葉が頭に浮かぶ。
現実にいるなんて、そんな………。
電車が駅に着き、扉が開く。
逃げ出そうにも腰や腕を抑えられて、恐怖で声も出ない……。
発車を告げるメロディーが流れると、遥香の目の間の扉が空気圧のプシューっという音と共に閉まった。
逃げられない………。
かつて無い絶望的な気持ちを味わいながら、動き出す電車。
しばらくこちら側の扉が開くことはなく、周囲に同類しかいない彼等は大胆だった。
左側の扉の横の手摺を掴む遥香の手は、座席にいる人目を遮る為に後から割り込んできた男によって引き剥がされる。
遥香の右側に立つ男が体を反転させて遥香の前に体を滑り込ませると、その男が抜けたスペースに新たな男が立ち、遥香の右足を持ち上げた。
バランスを崩した遥香を左側の男が受け止めて、遥香の前にいる男が器用にしゃがみ込む。
あまりの緊張状態に体がいうことを聞かず、自分の股間に顔を埋める男をまるで他人事のように見る、不思議な気分だった。
認めたくない自尊心が、そうさせるのだろう。
切り裂かれるストッキングが耳障りな音を立てながら、無惨な姿になった。
ボタンを外されたブラウスが開けられ、ページュ色のブラジャーが押し上げられる。
後の男によって露出した乳房が揉みしだかれ、形を変える白い乳房の乳首が指の間から覗いく。
信じられない、受け入れられない事実にショック状態になる遥香が不意に固く目を閉じた。
下半身に取り掛かる男がショーツをずらして、口を付けていたのだ。
綺麗に除毛されたIラインの厚みのある大陰唇に男の開いた唇が押し付けられ、蠢く舌によって唾液に濡れて光り輝いていく。
柔らかい遥香の肉が男の柔らかい唇が上下に閉じて、肌の表面を愛撫する。
上から下まで唇の粘膜を這わせ、ぷっくりとした柔らかい肉が心なしか厚みを増したようになると、閉じていた割れ目が少しずつ開いていく……。
遥香は気持ち悪くて必死に目を閉じていたが、体は着実に反応を見せている。
後から揉まれる乳房の乳首はあくまで優しく指で摘まれ転がされて、すでに元の形を成していない。
下の男は割れ目を舌で左右に開き、小陰唇を唇と舌で執拗に愛撫していく。
もう口を離しても閉じなくなった割れ目の中に唇を押し付け、口を開いて舌全体を付着させる。
女性器の柔らかい粘膜を舌に感じ、舌をうねらせて優しく舐めて動かす。
痛みを感じさせないように吸っては舐めて、粘膜をしつこく舐め続けているうちに、とろみのある粘液が舌に絡みつくようになった。
目だけで遥香を伺うと固く閉じていた瞼から力が抜け、唇が薄く開けている。
温もりを感じているのは男だけではなく、遥香も男の舌と唇の温もりを当然感じている。
いたずらに無理やり感じさせるのではなく、心地良さから性感に繋げなければならない。
予想外の心地良さを与えられ続けて濡るまでになった遥香の敏感な所に、ついに口を付ける。
包皮の周りに舌を這わせ、下から横に動かし、上から舌の裏側を使って撫で下ろす。
それを続けるうちに、どこをどんなふうにすれば感じるのかが見えてくる。
遥香は横からも上からも触れられるのが良いらしく、顕著な反応を見せる。
無意識に腰をゆらゆらと動かし、その先を促すようにする。
包皮ごと優しく吸って舌全体で覆ってさわさわと舐めて、上下左右に動かすとこれまでにないような官能的な荒い呼吸に変化していく。
そんなにいいのかと、その作業を継続する。
決してペースを乱さず、早めたりはしない。
感じているときのペースを好む女は、少なくないからだ。
乳房を揉みしだかれながら声を殺して悩ましげに喘ぎ、口を抑えて嫌々をするように、時おり首を激しく左右に振る仕草が増えてきた。
下の男が包皮から顔を覗かせはじめたそこを、指で剥いて舌で覆った。
微振動させたり本当に細かく付けたり離したりと動かし、吸うことも忘れなかった。
敏感すぎるところをダイレクトに丁寧に愛撫され続け、遥香は正気を保てず後の男に体重をすっかり預けていた。
片足を男のひとりに持たれ、後の男に支えられ、下の男に腰を固定されて逃れようもなく絶え間のない快感を注がれていく………。
ここが公共の場、電車内であることなど意識する余地は遥香には残っていなかった。
ブライドも女の尊厳もなく、その流れに抵抗する術もなくあまりに気持ち良くて堪らない……。
遥香は後の男に抱き留められたまま、激しく体を震えさせていた……。
これまでになく、完璧なオーラルセックスだった。
これまでに知ったクンニリングスは、一体なんだったのかと思うほど、感じさせられていた。
ぴくぴくと肛門を伸縮させ、その反応そのままに壮絶なオーガズムを物語る遥香。
下の男は直ぐにはクリトリスに触れず、粘膜といい小陰唇、大陰唇の愛撫していく。
溢れる粘液を吸って舐め取り、官能的な温もりを遥香に伝える。
遥香の右側に立つ男が遠慮なく乳房に口を付け、乳首を恭しく転がす。
同時に下にいる男が指を挿入し、中で関節を曲げてお腹側の壁を優しく擦っていく。
ずいずいと指を出し入れされるその快感は遥香を酔わせるには十分で、整いはじめた遥香の呼吸が再び乱れはじめた。
ちゅぱちゅぱと吸われる乳首、出し入れされる指の刺激に加え、包皮から半分以上も露出してしまっているクリトリスに男の唇が再び覆いかぶさる。
決して男側の欲ではなく、女を感じさせるための鬼畜の所業は遥香の上場企業の管理職の仮面を剥ぎ取った。
出し入れされる男の指には粘度の強い愛液が絡みつき、その指先には遥香を狂わせる膣壁の感触が繰り返し触れ続ける。
頭を後の男に預け、美しいその顔を淫靡な色に染めてひたすら感じている。
男の2本の指が絶え間なく出入りを続け、膣壁を擦りながら子宮の入口に軽く触れて撫で上げる。
唇がクリトリスを吸って、舌が細かな振動を送り続ける。
遥香の腹部がぴくぴくと動き、お尻の筋肉が引き締まり、そして弛緩する。
乳首を可愛がる男が背中をそらし始めた遥香によって、持ち上がる。
やがて限界を迎えた遥香の体が硬直し、その時を迎えていた………。
オーガズムを迎えた美女の顔は、なんと美しいことか………。
満たされた美しい表情をして、唇を震わせている……。
持ち上げられていた片足を降ろされ、しゃがみ込みそうになるところを支えられる遥香。
物事を考える余裕を取り戻す前に、自分の前にいる男に体を押し付けられる遥香。
腰を掴まれて後ろにお尻を突き出す格好になる。
これまで乳房を揉むだけで何もさせてもらえず、遥香を後で支えているだけの男が満を持して、いきり立つ男根をその手に掴んでいた。
ショーツを横にずらしてあてがうと、ゆっくりと中へ沈めると遥香の頭が弾かれたように持ち上がった。
熱く硬い男性器が奥まで届き、人工物にはない温もりが満足感を呼ぶ。
とはいえこんな場所でペニスを挿入されて、さすがに冷静でいられなかった。
焦る遥香が右手で後の男を押し退けようとしたけれど、危険で耐え難い感覚が押し寄せてくる。
早く何とかしないと……と、焦るばかりで有効的なことを何も出来ないまま押し流されていく……。
遥香が求めていた快感が危機感を鈍らせ、薄めていく……。
規則正しく打ち付けられ続け、動かされる男の腰の動きに屈しまいとしたけれどいつしか前にいる男にしがみつき、その胸に顔を埋めて酔いしれていた。
何も考えられない、考えたくもない……。
逃れられず、決して逃したくもない快感に飲み込まれ頭と体が追求し受け止めていく………。
生々しい快感に支配され、もはや常識人としての罪悪感の欠片もなかった。
何度も息を詰まらせて干からびた心の大地を潤し、抱きついた男のシャツを唾液で湿らせる。
両手で腰を掴まれて強かに注がれる深い官能を体が享受し、もっともっと……と、その先を体が促していく……。
男の腰のペースが上がり、速度が早くなった。
嫌……駄目……もう駄目………。
狂おしい快感が体の中を駆け巡り膝が折れそうになったその時、遥香の体の中に男の分身の詰まった精液が放たれた……。
中に射精されたショックを上回るオーガズムに襲われて、例え難い束ね間の幸せに包まれる。
今はまだ後のことなど、考えたくはない。
その重厚な快楽の中で、遥香は溺れていた。
でも、遥香の悪夢は終わらなかった。
車内アナウンスが降りるべき駅の名を告げているのに、男は再び腰を動かし始めたのだ。
やめて、お願い、もう止めて………。
それでも続く腰の躍動は遥香の子宮口を、とても優しくノックをし続けていく。
お願い、もう止めて、お願い、もう抜いて………。
お願いだから、もう……………抜かないで……………
そのまま、そのままで…………もっと…………
男の息継ぎのないピストンが遥香のお尻の肉をたわませ、濃密な快感を発生させる。
電車の速度が落ちる、尚も腰の躍動が続く。
同じペースを保ちながら、中で動くペニス。
抱き締められる男のシャツを掴み、顔を埋めて喘ぐ遥香の奥を絶え間なく突き上げられる。
電車がホームに滑り込み、建ち並ぶ人の群れが窓の外に見える。
もう、もう………駄目………。
男はホームに立つ乗客の顔を見ながら、遥香の中に放った。
素早くペニスを引き抜き、遥香を抱きとめていた男が器用にブラウスのボタンをハメていく。
電車が停止する寸前に遥香のスカートを下ろし、ホームの外に解放していた……。
もつれそうになる足を前に何とか交互に出し、ほつれた髪の毛を耳にかける。
ややふらついて見える遥香は貧血を起こした女性にしか見えないのか、誰も駆け寄る者はいない。
その足でトイレに向かい、個室の中で履いていたショーツを脱ぎ捨てた。
電車を降りる間際に手に握らされた物を見ると、それは薬らしかった。
その薬品名を調べてみると、緊急避妊薬とある。
かつて一度だけ服用したことを思い出して、同じ薬品名だと知れた。
本物かどうかも怪しいけれど、もうどうなってもいいとそれを遥香は飲んだ。
数日後に生理が来たときは複雑な気持ちだったけれど、自分を抱き留めていた男は知的な人間に見えたからその方面の人なのかもしれない。
夢だと思いたかったけれど、皮肉なことに今でも遥香の体に刻み込まれている。
それほど、気持ちの良いセックスだったのだ。
もうあんな目には遭いたくはないけれど、忘れられそうもない。
それはタンスの引き出しを開けるたび、上下が揃っているはずのショーツがひとつだけ欠けているのを見て、現実なのだと突きつけられる。
下着の横に鎮座する疑似男性器を見て、遥香は虚しくなった。
もう一度だけ、そう思いかけて打ち消す。
窓の外の月を見上げ、遥香は溜息をついた…。
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