綾香 あれからどうしてるかなって、そう思っ
てたのよ……?
綾香は電車に揺られながら、屈託のない笑顔を男に向けた。
ドアの脇に立つ彼女の美しい横顔がガラスに反射して、その見詰める眼差しが自分に向けられていることに照れ臭さを覚える。
会話の細かい内容は覚えていない。
顔には出さなかったけれど、舞い上がっていたのだ。
あまりに楽しくて、時間を忘れて10代の学生のように心躍っていたようなのだ。
綾香 ご飯をご馳走するって言っても遠慮する
でしょ?……連絡先を聞いてなかったから
ずっと気になってたの……
男 いや別に、大したことしてないから……
いつもそんなに大袈裟に考えるの……?
綾香 あっ、失礼ね………じゃあこれならどう?
あたしね、ハープを習ってるの………
ヨガの他に、ハープかぁ………。
多趣味な彼女に根暗な自分との差を感じ、尚さら眩しく見える。
そんな時、仕事終わりの大人に混じって、高校生達の群れが雪崩込んできた。
綾香はドア脇の手摺にしがみつこうとしたけれど、押し寄せる体の大きい彼らに押され、彼女の体がピッタリと密着することになってしまった。
見るからに運動部、ラグビー部か柔道部だと思われる彼らは気付く素振りもない。
彼女を押し返すわけにはいかず、そうかといって抱き止めるほどに親しくもない。
綾香の肩を掴もうとした手は、迫りくる学生のひとりの背中を止めようと前に突き出され、綾香のお尻に下半身を圧迫されて反射的に彼女の腰を掴んでしまった。
奇しくもそのまま動けなくなり、ぷしゅ〜っと音がしてドアが閉まる。
動き出す電車の振動が2人の体を揺らし、ニットワンピースに包まれた彼女の柔らかいお尻が心地よくて、図らずも緊張が高まる……。
その兆しを、覚えたからだ。
一旦流れ出した血流は自分の意思でコントロール出来るものではなく、一晩で地上に姿を現そうとする筍のように、男根が膨張をはじめていく……。
その変化をお尻で自覚した綾香は、すっかり俯いてしまった。
無理もない、お尻の谷間にすっぽりと埋まってしまったのだから……。
こんな状況では会話もままならず、言い訳も出来ない。
そもそも顔を見合わせていたとしても、何を言えばいいというのか……。
男は成す術がなく変化を遂げた物を温もりに挟んだまま、ただ時間が流れるに任せる他はなかった……。
経験上こういうときは、覚悟しなければならないことを綾香は知っていた。
いつ来るか、いつ来るのかと身構えていたのに、彼は行動に移さないのだ。
こんなになってるのに、どうして……?
散々痴漢されてきた綾香に、焦れったい気持ちが湧き上がる。
えっ……あたし、期待してる!?
まさか、そんな………。
否定したい理性が自分を正当化することを、決して許そうとはしない。
疼く体に背を向けて、綾香は唇を噛んでひたすら滲み出る欲情を堪えるしかなかった………。
気不味かったけれど自分で誘ってしまった以上、彼を追い返すわけにはいかない。
週に1度の頻度で借りているスタジオに、綾香は彼を連れてきた。
何の謝礼も受け取ろうとしない彼に、せめて細やかなお礼をするのが目的なのだから毅然としていればいいのだと、綾香は自分に言い聞かせる。
あれは男性の生理現象なのだから、気にするな必要はない。
子供じゃないんだから……不可抗力じゃない……。
彼に申しわけなくて、自分に腹が立った。
綾香 ちょっと着替えてくるから、待ってて……
スタジオの控室にある演奏用のドレスに素早く着替えて、彼の待つ場所へと戻る。
大きく開いた胸元を見せるドレス姿を見て、彼は照れ臭さそうな顔を綾香に見せる。
綾香もまたその彼を見ていつも着ているドレスなのに、急に恥ずかしくなった。
綾香 あっ…ただの安物のドレスだから、そん
なに見ないでください……
男 いや……似合ってますよ、凄く綺麗だ……
綾香 あっ…やだ、もう……照れるからやめて……
あっこれよ、テレビとかで見たことある
でしょ………?
そういうと大きな楽器、ハープを手に椅子に座って股を開く。
ドレスを着る理由はここにある。
この楽器は大抵は女性が演奏し、両手を伸ばして指を弦に引っ掛ける演奏方法をとる。
そのため大きなハープを開いた股の間に置かなければならず、ハープ演奏者は丈の長いドレスを着る。
いつも綾香はここに来る際はわざわざ着替えなくても済むように、パンツ姿の事が多い。
でもスカートも履きたいし、ワンピースだって着たい。
そんなときの為に、スタジオにドレスを置いておくのだ。
綾香が弦に掛けた、指を動かす。
ポロ〜ン………♪
清らかな音色が流れ出し、男は汚れた心が洗い流される気がした。
綾香の長くて白い指が滑らかに動き、白い肌を露出した首から胸元が艶かしく美しく見える……。
綾香の腕が先の方に伸び、指を弦に引っ掛ける際に少し前屈みになった。
普通は演奏者を近くで見ることはなく、そこに気付く者はほぼいないのだろう。
男は綾香の側に立ち、その位置だから見えてしまったと言える……。
ドレスの胸元に隙間が生まれ、豊かな乳房が見えるのだ。
ブラジャーを必要としない造りだからかブラジャーは見えず、もう少しで乳首が見えそうで見えないのがそそらせる……。
目を閉じてよく演奏が出来るものだと尊敬の念を抱くけれど、今はそれがありがたい。
彼はそっと、綾香の背後に回った。
今度ははっきりとそれが、見えた……。
白いお餅のように白い乳房の先に小豆色の乳輪、1センチ以上はありそうな大きく魅力的な乳首…。
再び男の股間が疼き出し、隆起をはじめる……。
彼の中で何かが弾けた……。
演奏を続ける綾香の肩にそっと手を添える。
綾香は肩をピクっとさせただけで、演奏を続けるだけだった。
男はその手を肩甲骨に滑らせて脇の下から体の前に回し、胸元からドレスの中へとゆっくりと侵入させた………。
綾香はそれでも、演奏を止めようとはせずに弦を弾き続けていた…。
彼に見詰められていることは、目を閉じていても気付いていた。
女の自分のそういう感覚は、敏感に働く……。
見られている、彼に……。
心の準備は出来ていた。
肩に触れられて身体が反応してしまったけれど、演奏に集中して無視することにする。
その手が脇の下を這ってきて、ゾクゾクする体の肌に鳥肌が立つ。
そして、胸元から中に………。
綾香は乳房が手の平に包まれる興奮に、再び肌に鳥肌を浮かせた。
綾香の指先が次に弾く弦を探して、軽やかにメロディーを奏でていく………。
※元投稿はこちら >>