電車が減速する衝撃が伝わり、両足に力が入る。
それは次の駅が近づいていることを綾香に知らせ、夢の世界から綾香を引き戻してくれた。
ゴトンッ……プシュ〜ッ………
電車の反対側のドアが開き人の入れ替えが始まる前に、車内の容積が減ることにより束の間ゆとりが生まれる。
綾香はその瞬間を見逃さず痴漢の不意をついて体を反転させると、痴漢を押し退けて反対側へ逃れた。
そのつもりだったのだ………。
なのにドアの前まで辿り着く前に、乗り込んできた人の波に押し返されてあと一歩の所で立ち往生してしまった。
でも自分との間に違う人が入って、壁になっているはず………。
そんな希望的観測は、脆くも崩れたことを知るには時間はかからなかった。
電車が動き出すと、後でスカートの裾が捲りあげられはじめたからである。
そんな………。
綾香の経験からこの手の痴漢は節操がなく、執拗なタイプであることを知っている。
何をされるか分かったものじゃないから、出来ることなら避けたい相手だったのだ。
でも、綾香の目論みは失敗した。
ショーツが降ろされたままお尻が露出する、そんな中途半端な状態が再び外気に晒されていた。
後から閉じた内腿を抉じ開けて、指が敏感なところに触れられる。
さすがに自由に指を動かせないとあってどうにか指先を蠢かす程度だけれど、散々弄ばれていた蕾はすぐに反応をする。
まるで正座をして痺れた足に触れられたように、鋭く切れ味のいい快感が体を駆け上がる。
どんなに脚を閉じようと贅肉のないスタイルの良さが仇となり、股の辺りに出来る隙間はどうにもならない……。
今度は俯いて必死に堪えなければならなくなった理由、それは………。
必死になって逃げたけれど体が止まった時、綾香の正面にいる男性が体ごとこちらに向いていることに気付いていなかったのだ。
その男性の目には、ブラウスのボタンが不自然なほど外されている綾香の胸元が魅力的に映る。
第3ボタンまで外す女性は珍しいが、いないこともない。けれど第4ボタンまで外すだろうか………?
その意味するところは、すぐに分かった。
彼の目の前にいる女性……綾香は俯いているけれど様子がどこかおかしいのだ。
そして、気付いた。
タイトスカートが不自然なほど短いことに……。
いや違う、捲りあげられている……?
それはつまり、彼女の後にいる誰かに痴漢されていることに気付いたのだ。
自分がこの電車に乗り込んでくる前から痴漢されていた?
彼にはその事実が衝撃だった。
まるで官能小説のような世界が繰り広げられ、今まさにそれが目の前にあるのだ。
不意に女性……綾香が見を閉じた顔を弾かれたように上げ、それはハッとするくらい美人だった。
急激に血流が集まる下半身が、下着の中で窮屈さを訴えだした。
どうする………どうする!?
黒いブラウスが出来る女性だと白い胸元を誇示させて、欲情が頂点に達した。
考えるより先に手が動き、ブラウスの中に震える手を入れていたのだ。
無意識に入れた手に頭が官能に支配するのに十分な柔らかさを覚え、インナーを指で上に手繰り寄せて柔肌の感触を堪能する。
指の間から屹立した乳首が飛び出る。
その硬い頂きを指先で擦ると、美女の口から短い吐息を漏らす音が耳に届く。
もう、駄目だった……。
男は欲望に従ってさらに下のボタンを外し、膝を折って胸に口をつけていた。
まるでギリシャ彫刻像のように魅力的な白い乳房に、程良い大きさの濃い茶色の乳輪を土台に同色のやや大きい乳首、それが立ち上がるように勃起していた。
唇で柔肌を確かめるように這わせ、舌で土台から攻めるようにくるくると回す。
そして乳首を口に含む……。
至福だった。
硬い乳首が舌で弾く度に素早く跳ね返り、捏ねくり回して何度も吸った。
もう片方も空いている手に包んでその柔らかさ、乳首の硬さを堪能する。
感じやすいのか女性……綾香はこちらの愛撫に合わせるように、悩ましい吐息を漏らす。
欲望は留まることを知らず、右手を下の短くなっているスカートの中へ進入させた……。
男はハッ……っとなった。
恐らくは女性……綾香の後の痴漢の手、その指に触れたのだ。
後の男は綾香の首の横から顔を出し、こちらと目が合うとニヤリと笑って見せた。
その男は譲るように手を引くと、女性……綾香の体の横から伸ばしてきた両手で乳房を揉み始める。
目の前で他人が胸を揉む光景は圧巻である。
下から持ち上げるように揉み、指の間に挟んだいやらしい乳首を弄ぶ。
授乳期の女性なら母乳が飛び出してきそうだけれど、うなだれる女性……綾香からは乱れた息しか聞こえてこない。
堪らなくて下に手を伸ばす。
凄い毛量に目を見開き、激しく濡れたそこに触れて感動した。
なんてことだ、半分以上露出するクリトリスが出迎えてくれるとは……。
そこを指でパイブレーションさせる。
途端に女性……綾香の顔が持ち上がり、いやらしい表情を見せるではないか。
けれど感じさせ過ぎて周りに気付かれては元も子もない、慎重に触れていく。
指の腹を滑らせて、小さく上下に動かしていく。
女性……綾香は体をがくがくと震わせて、頭を小さく左右に振る仕草を見せる。
ああ……そこを舐めたい……。
それは叶わないから代わりに手をさらに下へと伸ばし、指2本を慎重に挿入していった。
手の平に濃い密林のごわつきを感じながら、関節をくの字に曲げて前後に動かす。
細かく手の平を打ち付けるように指の出し入れを続け、女性……綾香の反応を見る。
すると腰を後に逃がすように体が前傾をはじめ、こちらに上半身を倒しながら持ち上がった頭……。
その表情は眉毛を下げて、だらしなく半開きになった口を見せてくれる。
間近で官能に飲まれた美女の顔を見る機会なんて、早々あることではない。
両胸を揉みしだかれながら堪らなそうな顔を見ていたら、思わず指の出し入れを早めていた。
くちゃくちゃと卑猥な音が電車の走行による騒音に溶けて、非現実的ないやらしさを増幅させる。
不意に女性……綾香の上半身が起こされ、彼女の後の男がまた顔を見せる。
握り拳を作って人差し指と中指の間から親指を覗かせて見せ、こちらに向かって顎をしゃくってきた。
それは、つまり………。
よほど物分りが悪くなければ、その意味することが分からないわけがない。
出来るのか、この状況で……。
不意に女性……綾香の体が人ひとり分、後に下がった。
どうやら男の背後に僅かなスペースがあったのか、有り難く作業に取り掛かる。
男と協力して苦労しながらショーツを片足づつ抜いて、右膝を抱える。
その男は女性……綾香の背中を支え、取り出した自らの男根をあてがって前に力を込める。
頭がゆっくり沈み込むと後は中へと一気に吸い込まれ、美女の頭が弾かれたように跳ね上がった。
膝を持つ右腕が疲れるけれど、女性……綾香の体重を支える男のおかげで腰を動かせる。
温かい……。
吸い付くように肉壁が絡みつき、腰を動かすごとに魅力的な乳房が淫らに揺れる。
クリトリスを弄っていたときにはあんなに表情を変えていたけれど、今は穏やかで眠りに入る時のように静かな顔になっている。
ひとつ違うのは声を殺した喘ぎを吐息と共に出す口が頻繁に開き、一見穏やかに見える表情は恍惚を表していることである。
その証拠にこちらの腰の動きに合わせ、美女の腰もまた動いていることで分かる。
男根を奥へと進めれば、出迎えるように美女の腰が前に出る。
なんていやらしい女性なんだ……そんなに気持ちいいというのか………。
刻一刻と変化する女性……綾香の表情を見ながら、腰を使っていく。
甘〜い表情をしていたかと思えば、眉間にしわを作り悩ましげに顔を歪ませる。
そして口を開け「あぁ~」っと声なき声を上げる仕草を見せる。
速度をそのままにペースを落とさず、断続的に動かし続け攻め立てていく。
いつまでも快感に喘ぐ女性の顔を見ていたかったけれど、近づく射精感にあとどのくらい抗らえるのか怪しくなってきた。
ぬっちゃっぬっちゃっぬっちゃっぬっちゃっ………
ぬっちゃっぬっちゃっぬっちゃっぬっちゃっ………
女性……綾香の首が頻繁に動き、その表情に快感を堪能する余裕が消えていく。
短く勢いの強い息が吐き出され、何かの危機が迫っているとでも言うように見える。
歯を食いしばり、男根を揺らし続ける。
慌てふためくように、歪めた顔を左右に振る。
頭が何度も跳ね上がり、何かを懇願するように口を動かす……。
声のない言葉が、繰り返される……。
だめ……だめ…………もうだめ…………
確かに彼女の口は、そう言っていた。
間もなく体を硬直させると、彼女は力拳を握った両手を震わせた。
口を大きく開けながら体を2度3度と大きく弾ませて、荒い呼吸をして見せて静かになった。
その顔をもう一度、見たい……。
その一心で再び腰を躍動させる。
うなだれて疲れ果てたような表情が再び快感に染まり、ついに声を漏らしはじめた綾香のその口を後の男が急いで手で塞ぐ。
ぬっちゃっぬっちゃっぬっちゃっぬっちゃっ……
ぬっちゃっぬっちゃっぬっちゃっぬっちゃっ……
オーガズム直後の敏感になった体が早くも悲鳴を上げ、女性……綾香が激しく喘ぐ。
醜く表情を歪めても美女の顔は色気でしかなく、その兆しを告げるように膣が締まってきた。
もう保たない……いや、まだだ……。
その葛藤も、終わりを告げようとしていた。
形振り構わず腰を動かし、その時を迎えた。
ズボンの腹に挟めたショーツを引き抜き、男根に被せてその中に放出する………。
本当は中に出したかったけれど、協力してくれた男に対するせめてもの流儀だった。
もういいのか………?
そんな表情をして顔を覗かせる男が、女性……綾香をこちらに預けるように押し出す。
その彼女を抱きかかえ、しばらくすると目を見開いて体が揺れ始める。
はふはふっ……と荒い呼吸をはじめた彼女の目が、とろけそうな目元に変わるまでに時間は必要なかかった。
女性……綾香の肩越しに見える光景は、あまりにいやらしいものでしかない。
後にお尻を突き出すような格好で男に腰を振られ、目を閉じた彼が短いピストンを繰り広げている。
激しくなった呼吸の端々に喘ぎ声が混ざるようになると、口で塞ぎ舌を絡めて封殺する。
快感を享受するだけで精一杯の彼女の舌は沈黙を続け、満足に動かせずにいる。
その舌を吸って、絡め、唾液を飲み込む。
その彼女が体を硬直させたかと思うと、自分のときと同じように体を弾ませる。
また、達したのだ………。
男もすぐには終わらることはなく、間髪入れずに腰を躍動させる。
いくらなんでも数十秒の時間を置けないものかと懸念したけれど、彼には関係ないようだった。
女性の様子がおかしいと気付いたときにはもう、その目には焦点を合わせる機能が失われていた。
こちらのシャツに顔を埋め、唾液と口紅をべったりとつけながら熱い息を淡々と吹きかける。
その体を常に揺らしながら小さく呻き、愛撫のつもりなのか舌を動かしはじめている。
それも長くは続かず、女性……綾香が掴む手に力が込められると、また体を弾ませていた……。
いつ終わるとも分からない無限地獄に陥る、そんな錯覚に襲われていた。
激しい快感も度が過ぎれば苦痛でしかない。
でも山を越えてしまうと、堪らなく気持ちいい。
それを繰り返して、また受け入れてしまう……。
また奥を突かれる……。
鈍痛すらも濃密な快感に塗り替えられ、酔わされる。
際限のない快感が思考を停止させ、拒絶を示していた心がもっともっととその先を催促する。
息が苦しい、これ以上はどうにかなっちゃう……。
その限界の果にオーガズムで区切られ、また地獄のような快感がまた始まる………。
不意に綾香は自分を見下ろしていることに、気付いた。
前にいる男性にしがみつき、後の男性に快感を注がれる自分………。
いたずらに打ち込むようなものではなくて、絶えずい一定のペースで丁寧に腰を使われている。
あんなことを続けられたら、堪らない………。
綾香は思い出したように、今の自分の状況が怖くなった。
自分は一体、どうしてしまったのか……。
このまま本当にどうにかなってしまうのか……。
戻りたい…自分の体に……。
あの狂いそうな快感でもいい、戻りたい……。
正体をなくして喘ぐ自分の姿を見詰め、綾香は強くそう願った。
不意に耐え難い快感という苦しみの中で喘ぐ、そんな自分に気付く。
考えるための思考は働かず、苦痛と喜びを同時に味わう地獄の最中にいた。
薄れゆく意識を皮肉にも快感が引き戻す。
咀嚼して一旦は飲み込んだ草を吐き戻し、何度でも咀嚼を繰り返す牛のように、またも濃密な快感に体を浸らせて喘ぐ。
前にいる男性に口を塞がれて、条件反射のように舌を絡ませる。
お尻にほとんど密着させて打ち込まれる快感に酔い、前の男性に乳首を吸われる心地よさに体が溶けそうになる。
苦しいのに、堪らなくいい……。
終わってほしいのに、続けても欲しい……。
またあの大きな波が、押し寄せてきた。
もう、どうなってもいい……。
綾香という人格が快感の中に溶けて、形がなくなっていく。
いく…いく………またいく……!!
男が終止符を打つように、強く腰を打ち付ける。
前に立つ男性がブラウスのボタンをとめて、後の男性が漏れ出る精液をハンカチで拭う。
そんな作業が淡々と進み、ぼ〜っとする頭で綾香はただそこに立っていた。
不意に電車の中にいるのだと思い出す。
電車に揺れる体が不思議で、長い時間ここにいたような気持ちだった。
後の男性がスカートの中のお尻を擦り、前の男性がブラウスの上から胸を揉まれる。
その手を綾香は下ろさせ、身なりを整える。
車内アナウンスが下車する駅を告げていたから。
ドアが開くと何事もなかったかのようにホームに降り立ち、綾香は改札へと向かった。
またコンビニに寄らなくてはならない、そう思いながら歩く。
まだ膣の中に入っているような、そんな違和感を感じながら………。
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