暖かそうなコートを着て、髪の毛を風に揺らしながらモデルの女性が歩く……。
そんな体の写真を見ながら文章読む目が、途中でふと止まった。
左隣りに座る男性との間にあるかどうかの隙間、綾香の左太腿の側面に違和感を覚えたのだ。
ムズムズとしたその感覚が人の指だと確信するのに時間はかからず、綾香は身動ぎさせて不快だと自己主張をしたつもりだ。
その手は側面から駆け上がるように脚の上に移動しようとするので、綾香は邪険に振り払った。
誰の手かといえば左隣りの男以外にはなく度胸があるのか、それとも頭がおかしいのだろうか。
こんな状況でこんな真似をするくらいである、彼に止める意思は感じられず執拗に触れてこようとする。
彼の膝には畳まれたコートが乗せられていた。
それが綾香にもはみ出して、綾香の膝に乗せられたバックに接触している。
表面上はその下で攻防が行われているなんて、そこを気にして見ていなければ誰も気付くことはない。
彼は恐らく利き手であろうその右手が力強くて、綾香は利き手ではない左手で必死に振り落とすことを続けた。
男の異常なまでの執着心に綾香の嫌悪感は恐怖心に変わり、それでも拭えない羞恥心が抵抗はやめななかった。
こんな若くもない女の自分が痴漢にあっているなんて、周りに知られたくはない……。
それも横続きのベンチシートに皆が座り、目の前には吊り革に掴まりながら立ち並ぶ人がズラリといるいるのだから……。
男との脚の隙間で行われていた攻防は勢いに押されて綾香の脚の上に舞台を移して、バックの下のスカートのスリットから指先が進入しようとしていた。
綾香は男の指を握って追い払い、負けじと躍起になる男の指を繰り返し押し退ける。
やがて勢いの衰えを見せない指が一瞬の隙を掻い潜り、綾香の手の下に滑り込む……。
奥へと進もうとする気色悪い指が内腿に食い込もうとするのを、男の手首を掴んで阻止する綾香。
悔しいけれど男の力には敵わず、脚の付け根へと辿り着くことを許してしまった……。
それでも簡単に目的を果たさせるわけにはいかない……。
綾香は固く脚を閉じて男の思うようにはさせず、相手が疲弊するのを待っていた。
大人の女の余裕というのか、綾香のプライドが男を困惑させていた………。
もっと簡単にいくかと思ったのに、思わぬ抵抗を見せる女に予想外の苦戦を強いられていた。
涼しい顔をして雑誌に目を落とすふりをしながらも、こんなに頑張るとは………。
抵抗をされればされるほど触りたくなるというもの、ここで引くわけにはいかないのだ。
それに何だよ、ストッキングが途中までしかないやつじゃないか……。
指先が素肌に触れて、嬉しい誤算だった。
手首を掴まれてはいたが、少しづつ内腿の肉を手繰り寄せるように奥へと進める。
そしてついに指先がすべすべした高級感のある触り心地の良い、そんな生地に触れる。
ショーツに辿り着いた喜びに小躍りしたくなりながら、ごわごわした陰毛の感触の下を目指す。
手首を掴む女の手に一際力が込められたが、構わず強引に手を差し込んでいく。
男は…あっ!っと思った。指先が柔らかい肉に食い込んだのだ。
それは割れ目の始まりであり、誤差1センチ以内の指先の下には女が敏感に感じる場所があるはずなのだ。
男はウネウネと動かす指先に集中し、探りを入れていく。
ぎゅっと挟まれて動かし辛いけれど、何とか指先だけは動かせる。
どう言えばいいのか、瞼の下に出来た物もらいみたいな塊を覚えるような気がする。
気のせいだろうか………。
不意に手を挟む内腿がぎゅっ……ぎゅ……っと間隔を開けて力を込める仕草をはじめるではないか。
当たりだ………。
男は内心で、ニヤリと微笑む。
ぐりぐり……ぐりぐり……男は包皮と思われる柔らかい肉を、やり辛い指先で揉みほぐす……。
女の手が不自然な震えを見せ、手に持った雑誌をプルプルとさせている。
周囲にバレたくないという女の見栄か羞恥心なのか、もう文章など読んでもいない雑誌に目を落とし続けている。
それでも彼女は平静さを保とうと、必死に表情を作る……。
力を込める仕草が手から伝わり彼女が穏やかで、そのギャップが堪らなく興奮させる。
本当は感じて我慢しているのに、強情な女だ……。
男は攻めの手を緩めようとはしなかった。
男の手首を掴んでいても意味を成さず、添えるだけの形になると、何だか手助けしてるような気になって綾香は男から手を離した。
男の指は節くれだって太くて、厚い皮膚をしていたから技術職に生きる人間なのかもしれない。
普通であれば疲れて嫌になりそうなものなのに、飽きもせず指を動かし続ける。
立ち上がって男に罵声を浴びせ、その顔を引っ叩ければどんなにいいか。
悔しいけれど綾香は自分でもそれが出来るタイプではないと、その自覚がある。
もう周囲を欺くために平静さを演じることが、今の自分に出来る唯一のこと。
綾香が力強く挟んで、縦になっていた男の手。
その手で股をこじ開けるように水平に起こし、中指だろうか、指先で敏感な所を上下に弾いてくる。
クロッチの一部がこん盛りと膨らみを見せ、そこを執拗に指先に刺激されていく……。
目にしている雑誌の文字が歪んで見えて、甘くとろけそうな快感が脳を麻痺させていく……。
タタンッ…タタンッタタンッ…………
車輪がレールの繋ぎ目を通過する衝撃音を耳にしていながら、認識できていない。
それくらい魅力的な快感が、体を支配する。
我慢しなければ、耐えなければと思えば思うほど気持ちよくて、負けそうになる。
シュッ…シュッ……っと、男の太い指先がショーツのぷっくりした盛り上がりを下から持ち上げるように引っ掻いていく。
繰り返し引っ掻いては小さな丸を描くように触れられて、思わず声が漏れそうになった。
完全に前屈みになるわけにもいかず、綾香は持っていた雑誌と顔を互いに近づけて、気がついたら顔を埋めていた……。
男の指にショーツの生地を浸潤した愛液が付着して、思わず指先を擦り合わせて確認をする。
ヌルリとした感触を覚え、ショーツの横から指を滑り込ませる。
秘列の両脇にも生い茂っているらしい固い陰毛が、指の関節をチリチリと刺激する。
それを感じながら指先が柔らかい包皮と硬くなったクリトリスに到達すると、上下にスライドさせる。
隣に座る綾香が肩をぴくぴくと震わせる。
あんまら感じさせてもマズイと感じた男は、無理かもしれないと思いつつ指先を下へと滑らせた。
綾香の性器を手の平で覆う形になり、本当に突然だった。
いきなり指先が沈み込むように、中へと吸い込まれたのだ。
無理をして第二関節まで入れると、複雑に絡み合う肉壁に包みこまれてザラザラした感触まで伝わってくる。
可能なかぎり指を回すように動かし、入口が占めてくるのできつくて諦める。
ならばと手首のスナップを気を利かせ、抜き差しを開始する。
綾香の開いた脚がロング丈のタイトスカートに支えられ、いい仕事をする。
脱力して開こうとする脚を、サポートしながらも安定させてくれるのだ。
綾香はもう雑誌を持ち上げてはいられずに膝の上に置いて、顔を俯かせて表情を隠している。
だけど男には視界の隅に綾香の横顔が見えて、目を閉じて口呼吸をしているのが分かる。
こんな形で凌辱されて、どんな気持ちだろう……。
男は挿入した人差し指と中指で綾香のお腹側を繰り返し撫で続け、綾香の残る理性を無力化していく。
不意に男が指を抜いて狭い谷間に音がした。
ヌチャッ……っと透明な糸を伸ばして。
興奮を抑えてコートのポケットの中を探り、中から買ったばかりのローターを取り出す。
本体とコントロールスイッチを繋ぐコードを握り締め、静かに綾香の太腿の上を滑らせる。
今度は抵抗されるかと思ったけれど、拍子抜けするほど簡単にスリットの奥に入る。
濡れて張り付くショーツを向こう側に押しやり、繭の形をした本体を摘んで中へと押し込む。
ちゅるんっ……と戻ってきては、中に押し込む。
今度は出てこないよう、指先で中ほどまで……。
コードで繋がった四角いコントロールスイッチ。
それをショーツのウエスト部に挟もうかと思ったけれど、それは無理……。
だから男はストッキングの太腿部分に挟むことにして、綾香の左太もも側に設置した。
スイッチを入れる………。
綾香の狭い股間の空間にコントロールスイッチの小さなランプの明かりが灯り、淫靡な赤い色が広がる。
途端に綾香の内腿が閉じられた……。
ブルブルとさせる脚を開かせ、男はクリトリスを弄りはじめた。
ヌルヌルとした愛液を纏わせた指の腹で、つるりとしたクリトリスに微振動を加える。
ちらりと横顔を盗み見る綾香は相変わらず俯いたままで、薄く開いた唇を震わせていた。
その唇が時折り少し開いて、ボイスレスの喘ぎ声を出しているように男の目にはそう映る。
残念ながら下車する駅が近づいてきた。
非常に名残惜しいけれど、降りなければ……。
電車が減速をはじめ、やがてホームへと滑り込む。
電車が停止する寸前に綾香の中から指を引き抜いて、男は立ち上がった。
男が買ったばかりのローターは綾香の中に残し、男はホームに降り立って階段へと消えていく。
後に残された綾香の中で、ローターはまるで誇示するように振動の継続をやめようとはしなかった。
それを止めるには股の間に綾香が自分の手を入れなければならず、今は出来るはずはない。
席の開いた綾香の隣にはこれ幸いと言わんばかりに、初老のサラリーマンが腰を下ろした。
彼は自分の隣に座る美女が、不完全燃焼を抱えていることなど知る由もない。
自分がなぜこれほどまでに痴漢に狙われるのか、この期に及んで綾香はまだ分からなかった。
灯台下暗し………。
電車は次の駅を目指して、発射した……。
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